孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イコール・ペイ・デイ 男女間の賃金格差問題への注意を喚起するための取り組み

2019-03-14 22:45:27 | 女性問題

(米国でのイコール・ペイ・デイのイベントで販売されるレモネード。男女間で値段に差があるのが分かる(2016年4月16日撮影)【2017年11月19日 The Telegraph】

【ドイツ イコール・ペイ・デイに女性の運賃割引 でも、女性であることの確認は?】
男女間の賃金格差問題への注意を喚起するための「イコール・ペイ・デイ」という日があるそうです。

いつに設定されるかは、その国の格差状況によるとのことで、例えば女性が77日間多く働いてようやく男性と同じ賃金になるといった格差がある場合、1月1日から77日目の3月18日が「イコール・ペイ・デイ」ということになります。

上記の77日というのはドイツの事例ですが、欧州にあっては男女格差が大きいドイツでは率にすると21%の差があるとか。そこで・・・・

****ベルリン:男女の賃金格差は21%、だから女性の運賃を21%割引に****
<ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つ。この格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、ベルリン公共交通BVGが施策を発表した>

来る3月18日月曜日はドイツのイコール・ペイ・デイ「同一賃金の日」だ。男女間の賃金格差問題への注意を喚起するのが目的だ。欧州委員会の統計局ユーロスタットの2017年のデータによると、ドイツはヨーロッパで男女間の賃金格差が最も大きい国の一つで、21%の差がある。ドイツより格差が大きいのは、エストニアとチェコのみだ。

格差解消を訴えるキャンペーンの一環として、首都ベルリンではベルリン公共交通BVGが、女性のために通常の1日券より21%安い「女性チケット」を3月18日限定で販売することを公表した。

男女賃金格差を示すイコール・ペイ・デイの日付
イコール・ペイ・デイは世界的に見られるが、その日付は国、そして年によって異なる。これは、その国の男女間の賃金格差によって算出されるもので、差が21%であるドイツでは女性が男性より77日多く働いてやっと同一賃金が達成されるということになり、それが2019年では3月18日というわけだ(2018年1月1日を基準にした時)。

したがって、イコール・ペイ・デイの日付はその国の格差状況を如実に表しているといえる。

BVGはこの象徴的な数字を使用し、この日、通常7ユーロする1日乗車券より約21%安い「女性チケット」を5.5ユーロで販売する。

ベルリンは今年始め、ドイツで初めて3月8日の「国際女性デー」を祝日にすることを決定し、先日さっそく実施したばかりだ。(中略)

首都が一丸となって女性を支援、巷の反応は?
市が有する公共の交通機関であるBVGの今回のキャンペーンにより、ベルリンは市としての女性への支援を連続して前面に押し出す形となった。ポリティコEU版によると、BVGは「ベルリンのほとんどの男性は、今回のアクションを理解しているだけでなく、サポートもしている」と考えている。

だがSNSなどの反応を見ると、巷での評判はいまいちのようだ。「イコール・ペイ」とは本来「同一の仕事に対する同一賃金」を目指すものなので、平均的な21という数字を利用して、職業の区別なく女性にだけ一律にディスカウントを提供するのはおかしいと言う男性もいる。

さらに、BVG は今週14日にストライキを予定していること、バス全線でWi-Fiの使用可能を目指すなど「無駄なコスト」をかけすぎていること、そして時間に正確でないことなどから、今回のキャンペーンを諸問題から市民の目をそらせるためのポーズだと見る向きもある。

また、ドイツ人はこのような形の割引に慣れていないのかもしれない。以前日本に来たドイツ人男性は、日本の居酒屋や旅館などでよくある「女性割引」について、「女性を(子供のように)格下に見ているようで、おかしい」と苦言を呈した。

国ごとの男女賃金格差を如実に表す
しかしながら、大半は「たった1日、イコール・ペイへの注意を喚起するためのアクションに目くじらをたてることもなかろう」という意見のようだ。賛成する者も多い。

「女性チケット」は女性の使用に限られ、男性が使用した場合は、子供やシニアなど通常の割引チケット使用適用外のときと同じように罰金を課される。

つまり、女性であることを身分証明書などで証明する必要があるわけだが、性の定義が複雑になってきた昨今、どのように対処するのか興味深いところだ。

肝心のBVG自体ではイコール・ペイが実現されているようだ。また、現在1万5千人いる従業員のうち約20%が女性だが、これを2022年までに27%に増やすことを目標としているという。

ちなみに今年、スイスのイコール・ペイ・デイは2月22日だった。アメリカでは4月2日が予定されている。日本では昨年、4月6日がイコール・ペイ・デイとされ、各種の催し物が行われたようだが、今年の情報はまだ見当たらない。

男女間の賃金格差ワースト常連国の日本。格差が縮まれば縮まるほどイコール・ペイ・デイの日程は早くなる。いつかイコール・ペイ・デイそのものがなくなることを願う。【3月14日 モーゲンスタン陽子氏 Newsweek】
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イコール・ペイ・デイの設定の仕方はいろいろあるようです。

****女性は年末までタダ働き****
EU内での男女間の賃金格差は16%にもなり、丸一年男性と同様に働いても女性は昨日の11月3日分までしかお給料をもらえない計算なるとEU委員会が発表している。

委員会は認知を高めるため、11月3日をイコールペイ・デーとした。

EU委員会の計算では12%の差異があるとなっているスウェーデンでも同様の「16時02分」の指標がある。こちらは毎日8時から17時まで働いても、女性は16時2分まで分しか給与を払ってもらっていないことを表している。【2018年11月4日 https://swelog.miraioffice.com/entry/equal-pay-day
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イコール・ペイ・デイという企画も面白いですが、割引対象となる女性であることを“性の定義が複雑になってきた昨今、どのように対処するのか”という問題が生じるあたりは、更に面白いところです。

“性の定義が複雑になってきた昨今”を如実に示す問題にアメリカ・米軍の対応も揺れています。

****米軍のトランスジェンダー制限、国防総省が新方針発表****
米国防総省は13日、性別適合手術を受けた人やこれから受ける意向の人の軍新規入隊を禁止とし、ほとんどの兵士に出生時に決められた性に基づいて勤務するよう求める新方針を明らかにした。
 
米連邦最高裁判所は今年1月、心と体の性別が一致しないトランスジェンダー(性別越境者)の軍入隊を制限するとしたドナルド・トランプ大統領の措置について、訴訟が結審するまで発効を認めると判断。
 
この措置が発効となる4月12日以降、トランスジェンダーの兵士は出生時に決められた性に基づいて勤務している人のみ、軍にとどまることが認められ、ホルモンの服用や性別適合手術を受けることは禁止される。
 
この動きは自らが認識する性に基づいて軍に勤務することを認めたバラク・オバマ前大統領の方針に逆行するもので、トランプ政権の措置に対しては直ちに民主党や人権団体などから非難の声が上がった。
 
訴訟合戦を経て、現在の国防総省の方針はトランスジェンダーの人々が軍務に就くことを完全に禁止するものではなくなっている。

また、トランスジェンダーの兵士は4月12日の発効期限までホルモンの服用や性別適合手術を受けることができる。
 
しかし発効以降、性別適合手術を受けた人や性別違和と診断された人は入隊できず、すでに出生時に決められた性で入隊している兵士はそのままの性で勤務を続けることが求められ、性別適合治療は断念しなければならなくなる。
 
匿名を条件に取材に応じた国防総省当局者によると、米軍の現役兵130万人のうちトランスジェンダーだと自認する兵士は約9000人おり、すでに性別適合手術を受けた、またこれから受ける意向の兵士は約1000人に上るという。 【3月14日 AFP】
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130万人中の9千人・・・多いのか少ないのか?

【アメリカ 大統領を目指す女性の政治塾】
話を男女格差に戻すと、格差は賃金だけでなく、ヒラリー・クリントンが涙した「ガラスの天井」といった、女性の進出を阻む有形無形の壁の問題があります。

しかし、ヒラリーの挑戦も影響したようで、アメリカでは「大統領を目指す女性の政治塾」が大盛況とか。

****私が大統領になる! 若手女性向け政治塾、米国で大盛況****
米国で政治家をめざす女性が増えている。昨年11月の米中間選挙では、過去最多の女性が連邦議員に当選し、ネバダ州議会は米史上初めて女性議員が男性議員の数を上回った。

米国は日本と同様に女性の政治参加は遅れていたが、今では女性対象の「政治塾」は各地で大にぎわいだ。女性躍進を支える現場を歩いた。

「みんなで気合を入れましょう!」。司会者が呼びかけると、大学講堂を埋めた若い女性たちが「頑張るぞ!」「出馬準備完了!」と元気よく応じた。2月9日、南東部ジョージア州アトランタ郊外で、政治家をめざす若い女性を対象にした研修会が開かれていた。

■2040年の大統領選に照準
連邦下院議員を含む現職の女性議員が、なぜ政治家をめざし、どんな活動をしているかを講演。どうやって地域のニーズをくみ取り、立法や政策に反映させるかを具体的に教える講義もあった。

企業幹部など多彩な女性講師陣は、リーダーの心構えを説いた。
「自分が選挙で勝てるはずはないという先入観は捨てて、自信を持って」「男性から『今晩一杯飲みながら打ち合わせよう』と言われたら、『朝8時にコーヒーを飲みながら話しましょう』と返して」といったアドバイスも相次いだ。
 
参加した約200人の多くは大学生だが、高校生もいた。高校生のクレアさん(16)は「教師をめざしているけれど、政治家になって教育問題に取り組もうかな」と目を輝かせた。
 
主催したNPO「イグナイト」によると、こうした研修会を2012年から開いており、ヒラリー・クリントン氏が大統領選に出た16年ごろから申し込みが5倍以上に増えたという。【3月14日 朝日】
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アメリカは人種の問題、経済格差の問題、銃社会の現状等々、いろんな問題を抱えていますが、上記のような動きを聞くと、健全さを回復しようとする力も感じます。

ちなみに、“昨年11月の米中間選挙で改選された第116回連邦議会が(1月)3日、初招集され、下院(定数435)で8年ぶりに多数党となった民主党からナンシー・ペロシ下院議員(78)が下院議長となった。女性議員が初めて100人を超えたほか、初のイスラム教徒(ムスリム)女性議員や初のアメリカ先住民女性議員が初登院し、過去にないほど多様な顔ぶれの議員構成を印象付けた。”【1月4日 BBC】とのこと。

【日本のお寒い状況 韓国の女性蔑視 似た者同士か】
その点、日本は・・・。昨年のイコール・ペイ・デイが非常に遅い4月6日という賃金格差も問題ですが、それ以上に、上記のような意気込みを示す女性が少ないというところがもっと大きな問題のように感じます。

日本において女性の政治進出が遅れていることは毎度国際的に指摘されるところです。
最近は改善ではなく、後退の様相も。

****女性閣僚、188カ国中171位 日本、2年で65位下げる****
世界の国会議員が参加する列国議会同盟(IPU、本部ジュネーブ)と国連のUNウィメンは12日、各国の女性閣僚比率(年初時点)に関する報告書を発表した。日本は188カ国中171位で、2年前より65位下げた。
 
女性活躍を掲げる安倍政権は閣僚19人のうち、女性は片山さつき地方創生・女性活躍担当相のみで、比率は約5.3%。2年前より2人減り、中国やイラン(いずれも164位)を下回った。女性議員比率に関するIPU報告でも日本は193カ国中165位だった。
 
女性閣僚比率の1位はスペインで17閣僚中11人。韓国は83位、米国は88位だった。【3月13日 共同】
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政治世界だけでなく、企業においても。
ILO報告によれば、“2018年の時点で管理職に占める女性の割合は世界全体では27.1%と推計され、およそ30年にわたって緩やかな増加傾向が続いていますが、依然として低い水準にとどまっています。
国別に見ますと、G7=先進7か国ではアメリカが39.7%と最も高く、イギリスが35.9%、カナダが35.3%と続き、日本は大きく離され12%で最下位でした。”【3月8日 NHK】

制度的な問題のほかに、男女双方の意識の問題もありそうです。

そのあたりは隣国・韓国も問題を抱えています。

****Kポップ界に広がるセックススキャンダル、まん延する女性差別 韓国****
韓国のKポップ界は、究極に清廉潔白なイメージでスターを売り出してきた。スターたちはその健康的なルックスで世界中にファンを増やしてきたが、このところセックススキャンダルが相次いでいる。

活動家らは、これらのスキャンダルは、韓国社会にまん延する女性への差別と虐待を浮き彫りにしていると指摘する。
 
わずか2日のうちに、男性人気アイドルグループ「BIGBANG(ビッグバン)」のメンバーV.I(本名イ・スンヒョン)さんと、男性人気歌手チョン・ジュニョンさんの2人が、相次いで芸能界からの引退を表明した。(後略)【3月14日 AFP】
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日韓両国に共通する要因としては、儒教社会の残滓でしょうか?
いずれにしても、政治問題では犬猿の仲の両国ですが、男女格差における意識の低さでは似た者同士のようです。

コメント
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