孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・テキサス州の中絶禁止法へ「決めるのは女性次第」との批判 隣接メキシコでは合法化へ

2021-09-08 22:26:50 | アメリカ
(「なぜ中絶の権利を支持するのか」男性記者の質問に米報道官がピシャリと回答。「決めるのは女性」【9月3日 HUFFPOST】)

【米テキサス州と国境を接するメキシコ北部コアウイラ州の中絶の犯罪扱いを最高裁が違憲と判断】
カトリック教徒が多い中南米では、人工中絶を認めない国が大半ですが、昨年12月にアルゼンチンの上院が中絶を合法化する法案を可決したことが話題になりました。

その中南米メキシコでは32州のうち、首都メキシコ市や南東部オアハカなど4州だけが中絶を合法化していますが、今般、最高裁が妊娠中絶を罰する北部コアウイラ州の法律を違憲と判断したことで、合法化に向けた取り組みが進むと思われます。

****メキシコ最高裁、中絶の犯罪扱いは違憲と判決****
メキシコの最高裁判所は7日、北部コアウイラ州が人工妊娠中絶に刑事罰を科すのは違憲との判断を全員一致で下した。

メキシコ最高裁は同州に対し、州刑法から中絶に関する制裁を撤廃するよう命令。これにより同州では、中絶を受けた女性を起訴できなくなった。
ルイス・マリア・アグイラル判事は判決について、「女性の権利における歴史的な一歩」だと述べた。

メキシコでは現在、4州を除いて中絶が厳しく制限されている。ただし、強姦による妊娠や、母体に命の危険がある時は例外的に認められている。

米テキサス州の受け皿にも
今回の判決により、メキシコ全土で中絶の非犯罪化が進む可能性がある。

BBCメキシコ・中南米特派員のウィル・グラント記者によると、メキシコでは州法をめぐる最高裁の判決は他州にも適用される。そのため、今回の判決は事実上、各州に中絶をめぐる新方針の行程表を示した形になる。
また、これまで中絶術を受けて禁錮刑となった女性も即時釈放されるという。

さらにコアウイラ州は、先に妊娠6週目以降の中絶を禁じた米テキサス州と国境を接しているため、同州の女性に合法的な中絶を行う受け皿になるとの指摘もある。

中絶の権利擁護団体「生殖の選択をめぐる情報グループ(GIRE)」は、今回の決定は「歴史的」だと声明を発表。
「メキシコ全土で、女性や妊娠可能な人たちが、妊娠出産の行方を決められる自由を持てるよう期待する」と述べた。【9月8日 BBC】
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今回のメキシコ最高裁判断は、女性の権利の観点から、それ自体大きな動きですが、世界的に注目されたのは、上記記事にもあるように、コアウイラ州hが先に妊娠6週目以降の中絶を禁じた米テキサス州と国境を接しているという点です。

今後、アメリカ・テキサス州の中絶を希望する女性が国境を越えてメキシコに向かう可能性も指摘されています。

【「決めるのは女性次第」サキ報道官 答えをはぐらかすアボット州知事】
妊娠6週目以降の中絶を禁じたアメリカ・テキサス州については、9月2日ブログ“アメリカ 「分断」社会のマスク着用義務化禁止・人口中絶禁止をめぐる問題”でも簡単に取り上げましたが、改めて。

****妊娠6週目以降の中絶が禁止に。レイプも例外なし…全米で物議を醸すテキサス州の法律、その問題点は?****
アメリカ最高裁判所は9月1日、テキサス州で施行された中絶を規制する法律を差し止めないとする判決を言い渡した。
法律が差し止められなかったことで、テキサス州の女性たちは憲法で保障されてきた中絶の権利が奪われることになった。
どんな問題が生じるのだろうか。

どんな法律なのか?
テキサス州の中絶規制法は、妊娠6週目以降の中絶を禁じる。しかし多くの女性が6週目では妊娠に気づかないため、実質ほとんどの人たちが中絶を受けられなくなる。

さらに、同州で妊娠6週目以降の中絶を施した医療関係者や、中絶を「手助け」や「ほう助」した人を一般市民が訴えることができ、民事訴訟で勝訴すれば、最大1万ドル(約110万円)の報奨金とかかった裁判費用が得られる。

「ほう助」には、中絶にかかるお金を援助した人や、車で病院に連れていった人も含まれる可能性がある。
また、レイプや近親相姦による例外は認められていない。

「見て見ぬ振りをしている」痛烈に批判
法律は、共和党が主導するテキサス州議会で5月に可決され、共和党のアボット知事が署名した。

アメリカでは1973年のロー対ウェイド裁判で、胎児が子宮外で生きていけるようになるまで(妊娠22〜24週)女性が中絶手術を受ける権利が保障され、中絶を不当に規制する州の法律が違憲とされた。

差し止めを求めていた中絶の権利擁護者たちは、テキサス州の法律が違憲だと訴えていたが、最高裁は5対4で請求を退けた。今回差し止めに反対したのは、トランプ前大統領が指名した3人の判事を含む5人の保守派判事だ。

彼らは差し止め請求の主張が「合憲性についての重大な問題を提起している」としたものの「立証責任を果たしていない」という見解を示した。

その一方で、最高裁の決定は「テキサスの法律の合憲性についてのいかなる結論にも基づいたものではない」と説明し、テキサス州内を含む裁判所で、法律を巡る法廷闘争をすることは可能だとした。

差し止めを支持したのは、リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事と、スティーブン・ブライヤー判事、エレナ・ケイガン判事の3人と、保守派のジョン・ロバーツ首席判事だ。

ソトマイヨール判事は、ブライヤー判事とケイガン判事と共同で発表した反対意見書の中で「最高裁の決定に呆然とさせられる」と判決を痛烈に批判。
「多数派の判事たちは、女性が憲法上の権利を行使することを禁じる著しく違憲な法律を提示し、さらに巧妙な方法で司法審査を回避したことで、問題を見て見ぬ振りをしている」と指摘した。

今後、どんな影響が出てくるか
ニューヨークタイムズによると、テキサス州では85〜90%が妊娠6週目以降で中絶を受ける。
新しい中絶規制法が施行されたことで、同州の中絶を望む女性の多くが州外で中絶を受けなければならず、金銭的・精神的負担が増える。

また、女性の権利や中絶の権利の支持者たちは、テキサス州の法律が差し止められなかったことで、共和党が優勢の他の州でも、類似の法律が施行されるのではないかと危惧している。

その一方で、中絶の権利支持派は、権利をめぐる闘いを諦めていない。NPRによると、テキサス州内などいくつかの裁判所で、新法の合憲性を問う裁判の準備が進められている。 【9月3日 安田 聡子氏 HUFFPOST】
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“6週間”というのは胎児の心拍が確認される時期であり、そのことから「ハートビート法」とも呼ばれています。
また妊娠6週目は、多くの女性が妊娠を自覚していないとされています。

“女性の権利団体などによると、人口妊娠中絶の85─95%が妊娠6週目以降に行われており、テキサス州では中絶手術のほとんどが禁止されることになる。多くのクリニックは閉鎖に追い込まれる可能性があるという。”【9月2日 ロイター】

以前から人工中絶をめぐる扱いは、アメリカを“分断”する大きな問題でしたが、テキサス州の法律の差し止めを最高裁が認めなかったことで、改めて大きな争点として浮上しています。

当然ながらバイデン大統領は、今回最高裁判断を「女性への攻撃」と批判しています。

****米の中絶禁止州法、反発広がる バイデン大統領「女性への攻撃」****
米南部テキサス州で発効した人工妊娠中絶をほぼ禁じる州法を巡り、差し止め請求を退けた連邦最高裁への反発が広がっている。

バイデン大統領は2日の声明で「憲法が認めた女性の権利に対する前例なき攻撃だ」と最高裁を非難。連邦議会では同様の州法制定を阻止する法案の準備が始まった。来年の中間選挙をにらんで論争が激化しそうだ。
 
テキサス州法で特に問題視されたのは、無関係の人が医療関係者や中絶協力者を訴えられる点だ。バイデン氏は「女性が直面する最も私的な決断に赤の他人が割り込む余地を与えた」と訴えた。【9月3日 共同】
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“無関係の人が医療関係者や中絶協力者を訴えられる”ということに関して、現代アメリカでもなお存在する職業である「賞金稼ぎ」という言葉が話題にもなっています。

現代の「賞金稼ぎ」は、立て替えられた保釈金を踏み倒して逃亡した被告人を捕らえて生計を立てているそうです。

“リベラル派のソニア・ソトマイヨール最高裁判事は、差し止め請求をめぐる判断に際し「事実上、(テキサス州は)州民を賞金稼ぎの代行者に任命し、近隣住民が受ける医療措置に対して民事訴訟を起こすことに賞金を与えている」と痛烈な反対意見を述べた。”【9月5日 AFP】

バイデン大統領以上に断固とした姿勢を示したのが、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(女性)でした。

****「なぜ中絶の権利を支持するのか」男性記者の質問に米報道官がピシャリと回答。「決めるのは女性」****
「バイデン大統領は、なぜ中絶の権利を支持するのか?」
男性記者にそう問われたアメリカ・ホワイトハウスのジェン・サキ報道官の力強い回答が、話題を呼んでいる。
どんなやりとりだったのか

(中略)サキ氏は2日、連邦最高裁の判断についての見解を報道陣に問われた。
「バイデン大統領は、自身のカトリックの信仰で中絶は道徳的に間違っていると教えているのに、なぜ中絶を支持するのか」と質問した男性記者に対して、サキ氏はこう答えた。

「彼は、それが女性の権利だと信じています。それは女性の身体であり、その女性の選択なのです」

「決めるのは女性次第」
記者は続けて、「では彼は、誰が胎児に気を配るべきだと考えているのですか」と質問した。
これに対してサキ氏は、バイデン大統領が「決めるのは女性次第であり、その決断を医師とともに行うのも女性であると信じている」と強調した。

さらにサキ氏は、「あなたはそのような選択に迫られたことがないし、妊娠したこともないでしょうが、その選択に直面したことのある女性にとっては、これは信じられないほど難しいことです。大統領はその権利が尊重されるべきだと考えています」と反論した。(後略)【9月3日 HUFFPOST】
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今回「ハートビート法」ではレイプや近親相姦による妊娠も例外とがなりませんが、そのことに関し、テキサス州アボット知事は正面から答えていません。

****「レイプによる妊娠の継続、なぜ強要?」→知事「レイプ犯を根絶する」正面から答えず****
アメリカ・テキサス州で、妊娠6週目以降の中絶を禁じる法律が施行された。この法律は、レイプや近親相姦による妊娠も例外にしていない。

同州のグレッグ・アボット知事は9月7日、「なぜレイプや近親相姦の被害者に、妊娠を続けることを強要するのか?」と聞かれて、「少なくとも6週間は中絶を受けることができる」と答えた。

さらに「レイプは犯罪だ。テキサス州は通りから全てのレイプ犯を取り除くための努力を続ける。積極的に取り締まり、逮捕、訴追することで、レイプ犯を排除する」と述べた。

ほぼ全ての中絶が禁止
アボット知事は「少なくとも6週間は中絶を受けることができる」と主張しているが、これは妊娠の現実からかけ離れている。

妊娠した女性の多くは、6週間以内には気付かない。アメリカ産科婦人科学会サラ・ホヴァース博士は「積極的に妊娠しようとしていない限り、女性が6週間以内に気付く可能性は低い」と、ニューヨークタイムズに話している。

つまり「6週間目以降の中絶禁止」は、ほぼ全ての中絶を禁止していると言い換えることもできる。(中略)

アボット知事はレイプ犯を根絶すると約束しているが、そもそもレイプが起きている状況でこのような法律を作ったことが、女性たちをさらに苦しめることになっている。【9月8日 HUFFPOST】
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企業からの批判も。

****米テキサス州の中絶禁止法、企業から批判や対抗策の表明相次ぐ****
米テキサス州で1日に人工妊娠中絶をほぼ禁じる州法が発効したことに対し、米企業から厳しい批判や独自の対抗策の表明が相次いだ。一部企業の間では社会的責任への強い関与を示す努力が強まっていることの表れだ。

米配車大手リフトは、同社サービスの運転手が新法で訴えられた場合、訴訟費用全額をリフトが負担すると表明。同社のグリーン最高経営責任者(CEO)はツイッターに「女性の健康医療へのアクセスや選択の権利への攻撃だ」と記し、女性の性と出産への医療サービスを提供する「プランド・ペアレントフッド(全米家族計画連盟)に同社が100万ドル寄付することも明らかにした。

これに呼応して同業大手ウーバーのコスロシャヒCEOもツイッターに投稿し、同社も同様に運転手への訴訟費用を持つと表明。音頭を取ったグリーン氏に謝意も示した。

新法では、妊娠6週以降とされる胎児の心拍確定後の中絶を「助けたり、そそのかしたりした」人だれをも、無関係の個人が訴えることができる。中絶処置のため医療機関に向かう女性を知らずに乗せる運転手も、訴えられる可能性がある。

一方でデートアプリ「ティンダー」運営大手マッチのCEOと、同業大手バンブルは1日、テキサス州を拠点とする従業員が州外で中絶処置を求める場合に支援する基金を設立すると発表した。

ドメイン名管理サービスのゴーダディは3日、中絶案件の通報に使われるテキサス州の反中絶ウェブサイトを閉鎖した。

同州議会はまた、ドライブスルー式の投票や24時間投票できる拠点を禁止し、選挙監視人の権限を強める投票制限法の最終案も可決した。これに対し、アメリカン航空の広報担当者は「この法案には違う結果を期待していた。われわれは結果に失望している」と表明した。

テキサス州本拠の企業向けハードウエア開発・生産のヒューレット・パッカード・エンタープライズの広報担当者も「従業員6万人の世界企業として」投票制限に立ち向かうことを従業員に奨励すると述べた。

同州では1日、許可なく銃を隠し持つことを認める法律も発効。同州オースティン本拠の半導体メーカー、シリコン・ラボラトリーズのタトルCEOは、同州が中絶禁止と銃所持、投票制限と続けざまに動いたことは「全米各地でこれから起こることの前振れだ」と警告を発した。【9月6日 ロイター】
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【テキサス州 投票制限法、許可なく銃を隠し持つことを認める法律も】
上記記事にもあるように、テキサス州では投票制限法、許可なく銃を隠し持つことを認める法律も。

****テキサス州、投票制限の州法が成立 中絶禁止法の施行も議論に****
米テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は7日、有権者に認める投票方法を大幅に制限する投票権法案に署名し、同州法が成立した。12月から施行される。同州では、妊娠6週目以降の中絶を禁止する州法が施行されたばかりで、全米の議論になっている。

投票権に関する新しい州法では、ドライブスルー投票や24時間利用できる投票所の設置が禁止され、郵便投票の際の身分証明書の提示が義務付けられるなど、投票方法が制限される。

テキサス州の共和党議員は、選挙の安全性確保のために必要不可欠な措置だと主張している。
アボット州知事は7日、法案の署名式で「選挙の完全性はいまや、テキサス州で法制化されている」と述べ、同法は選挙改革法案の成立を望む他の州の「模範」になるとした。

少数派や障害者に「不相応な負担」与えると
一方、民主党や公民権団体は、この法案が民族的少数派や高齢者、障害者などに対し、投票をする上で不相応な負担を与えたり、投票の意欲をそぐことになると指摘している。(後略)【9月8日 BBC】
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先の大統領選挙で「選挙が盗まれた」とする共和党知事州では、有権者の範囲を極力狭めたい意向のようです。

****免許も講習も不要、市民が公の場で銃の携帯可能に 米テキサス州****
 米テキサス州で1日から銃規制緩和の法律が施行され、免許を持たない一般住民が安全講習を受けなくても公共の場で銃を人目に見える状態で持ち歩くことが可能になった。専門家は、警察が銃暴力から市民を守ることが一層難しくなると警鐘を鳴らしている。

米全土で銃暴力事件が増える中、同様の法案は各州で相次いで可決されている。(後略)【9月2日 CNN】
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車椅子利用の身障者でもあるアボット州知事はトランプ前大統領の後釜にふさわしいかも。

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