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【8月1日 AFP】
【緊急事態宣言から1年 “終わらぬ苦しみ”も】
2014年8月8日に世界保健機構(WHO)がエボラ出血熱について「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言してから約1年が経過。
リベリア、シエラレオネ、ギニアの西アフリカ「流行三カ国」では合計1万1000人以上の死者を出し、社会経済発展に深刻な影響を残しています。
リベリアでは5月9日にエボラ出血熱の終息宣言が出されましたが、その後6人がエボラを発症。
潜伏期間とされる21日間の倍の42日間を待っての終結宣言だっただけに、予想以上に長い期間人間の体内に隠れていられることがわかってきました。
WHOは、このリベリアでの再発の感染源は、回復後もウイルスを保持していた元患者だった可能性が高いと発表しています。
また、回復後も性交渉によって感染する可能性も指摘されています。
****回復後も性交渉で感染恐れ=エボラ熱、男性から女性に―WHO****
世界保健機関(WHO)は西アフリカで多くの犠牲者を出してきたエボラ出血熱について、男性患者が回復後、性交渉を通じて女性に感染させる「強い可能性がある」と8日付の暫定報告で警告した。
WHOは発症後82日たっても精液からエボラウイルスが分離されることがあるという研究結果を示し、199日後に高感度の検査でウイルスの遺伝物質が確認された事例にも言及。血液中からウイルスが見つからなくなった後も、性交渉で感染が広がる恐れがあると指摘した。
リスクの判断にはさらに研究が必要だと指摘した上で、WHOは回復後の男性に精液の検査やコンドームの利用を求めている。【5月10日 時事】
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身体には睾丸をはじめ免疫細胞が到達しにくい箇所があり、そうした部位には血中などに比べて長い期間ウィルスが生存する可能性があるとも指摘されていまし。
その後の調査・研究結果は知りませんが、エボラ生還者に対する差別も懸念される問題ですので、はっきりさせる必要があります。
また、エボラ生還者に対する社会的差別だけでなく、生還者に身体的後遺症が残ることも指摘されています。
****エボラ 終わらぬ苦しみ****
・・・・さらに今、大きな問題となっているのは、エボラウイルスに感染した人に対する、差別や偏見です。モンロビア郊外に住む、13歳と10歳の2人の姉妹も、地元の住民から差別や偏見にさらされています。
エボラ出血熱で両親を失ったこの姉妹。2人だけが回復して生き残りました。地元の子どもたちが遊んでいる広場に2人が近づこうとすると、子どもたちが一斉に逃げてしまいます。2人は「エボラに感染してから、以前は一緒に遊んでくれた友達が、誰も寄りつかなくなったの」と辛そうに話していました。
両親が亡くなったため、頼ろうとした親戚は、誰も、受け入れてくれず、2人は今、両親と知り合いだった女性に引き取られて、暮らしています。この女性は、「2人と暮らすようになってからは、私まで友人から避けられるようになりました。でも私が面倒を見ないと、彼女たちは生きていけない」と話していました。
リベリアでようやく終息したエボラ出血熱の流行ですが、感染に対する恐怖が、社会に深い傷痕を残しているのです。
ポスト・エボラ・シンドローム
差別や偏見にさらされる生存者たち。彼らをさらに苦しめている新たな問題も分かってきました。
エボラ出血熱から回復した人の多くが視力の低下や、全身の痛み、けん怠感など原因不明の症状を訴えているのです。エボラウイルスが血液の中からもなくなったはずなのに、生存者たちを苦しめる“謎の症状”。専門家は、これを「ポスト・エボラ・シンドローム」と呼んでいます。
40代のリベリア人の男性が取材に応じてくれました。男性はエボラウイルスに感染し、生き残ることができたものの、今、「ポスト・エボラ・シンドローム」とみられるさまざまな症状に苦しめられているのです。
「左目が見えなくなった。右目もだんだん暗くなってきている。将来、目が完全に見えなくなるのではないかと不安だ。膝も足首も全身経験がないくらいの痛みが続き、眠れない」。(中略)
ポスト・エボラ・シンドロームをはじめ、エボラ出血熱を巡っては分からないことが多く、それがまた住民の不安を募らせ、患者や家族に対する差別や偏見を助長しています。
リベリアはこれから復興に向けて歩んでいくことになりますが、エボラ出血熱が社会に残した断絶を乗り越え、「心の復興」も進めていかなければなりません。【5月12日 NHK】
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【国連の緊急対応ミッション「主要な目的を達成した」】
WHOは7月26日、7月第3週はギニアとシエラレオネで7人の感染が報告されたと発表。
未だ“完全終息”には至っていませんが、1週間の感染者数としては過去1年間で最少になりました。
こうした状況を受けて、国連の緊急対応ミッションが活動を終了しました。
****国連 エボラ緊急対応ミッションの終了発表****
西アフリカで患者が増え続けているエボラ出血熱に対応するため、現地で活動を続けていた国連の緊急対応ミッションが、国際社会の協力態勢を構築するなど、主要な目的を達成したとして先月31日をもって活動を終了することになりました。
エボラ出血熱に対応するため、去年9月に発足した国連の緊急対応ミッションは、西アフリカのガーナを拠点に医療用品や通信機器を感染地域に運んで医療を支援したほか、新たな感染を防ぐための住民の啓発などを行ってきました。
このミッションについて、パン・ギムン(潘基文)事務総長は、先月31日、声明を発表し、「地域住民の関心を促し、国際社会の協力態勢を構築するなど、主要な目的を達成した」として31日をもって活動を終了することを明らかにしました。そのうえで、今月からは活動をWHO=世界保健機関に引き継ぐとしています。(後略)【8月1日 NHK】
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【ワクチン:臨床試験では100%の予防効果】
エボラ関連の明るい話題としては、ワクチン開発が報じられています。
“臨床試験では100%の予防効果が出た”とも。
****新エボラ熱ワクチン「非常に効果的」、治験で確認 WHO****
世界保健機関(WHO)は31日、新たに開発され臨床試験が行われていたエボラ出血熱ワクチンについて「非常に効果的」との評価を発表し、今後の感染拡大の予防につながる可能性があるとの認識を示した。
WHOによると、ワクチン「VSV―EBOV」の臨床試験は最近のエボラ出血熱流行で多くの死者が出ている西アフリカ3カ国の1つ、ギニアで3月から実施。
有望な結果が出たことから今週、感染者と濃厚な接触をして発症の危険のある全ての人にワクチンの即時投与を拡大する決定がなされた。さらなる研究が必要とされるものの、これまでの臨床試験では100%の予防効果が出たとしている。
WHOのマーガレット・チャン事務局長は同ワクチンについて、「極めて有望な進展」と指摘。ギニア政府や当該地域に住む人々、プロジェクト提携者の功績だと称賛した。ただ、供給量を増やすには数週間~数カ月を要する見込みだという。
臨床試験は、感染者と濃厚な接触があった家族ら4000人以上を対象に行われ、参加者の半数は即座に、残りの半数は3週間後にワクチンの投与を受けた。その結果、リスクのある人全てに即座にワクチンを投与すべきとの結論に至ったという。試験の暫定結果は英医学誌ランセットで31日、発表された。
ワクチンの安全性に関する新たな証拠が得られたことから、今後は13~17歳の子どもを含めて試験が行われる。対象年齢を6歳まで引き下げる可能性もあるという。
ワクチンはカナダ公衆衛生機関が開発し、米製薬大手メルクとニューリンクにライセンスが付与された。(後略)【8月1日 CNN】
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間違いなく歓迎すべきニュースです。
ただ、“患者との接触後、早期にワクチンを接種された2014人では、効果が期待される10日後以降の発症者はいなかったが、21日後に接種された2380人では16人が発症した。”【8月1日 朝日】・・・・医薬品開発にはつきまとうことではありますが、効果が期待されているなかで、敢えて接種が21日後になった人々、その結果発症・犠牲になった人々の権利は?・・・・効果検証のためには避けて通れないプロセスなのでしょう・・・多分・・・・早急の対応が必要とされる事態でもありましたし・・・・。
治験がどのような情報開示のもとで行われたのかは知りません。そこが不十分だと“人体実験”との差が曖昧になります。
新薬開発に伴う治験の問題としては、2009年2月27日ブログ「ナイジェリア 新薬開発の実態 米ファイザー社、賠償金支払いで和解」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090227)も。
【「地域住民が知識を持つことが感染拡大を防ぐカギだ」】
ワクチンや治療薬開発と併せて、住民の意識・知識を高める取り組みも必要です。
今回の西アフリカでの大規模感染は、感染症の知識が不十分だったことが大きな原因となりました。
****エボラ終息のコンゴ「知識が感染防ぐ」 現地のユニセフ****
国連児童基金(UNICEF)コンゴ民主共和国事務所のビルヌーブ代表が、都内で朝日新聞の取材に応じた。西アフリカ各国で感染が広がったエボラ出血熱について、「地域住民が知識を持つことが感染拡大を防ぐカギだ」と話した。
エボラ出血熱は1976年にコンゴ(当時のザイール)で発見された。昨年、ギニア、シエラレオネ、リベリアで感染が拡大した。一方、世界保健機関(WHO)によると、コンゴ民主共和国では昨年、7度目の流行となったものの約3カ月で終息した。
ビルヌーブ氏によると、コンゴでは過去の経験から、家族らに高熱や内出血などの症状があるとエボラ出血熱の感染を疑い、隔離し、公的機関に連絡する習慣が根付いている。首都キンシャサの研究所で迅速に病名を特定するしくみも整っているという。
感染が拡大した各国では、こうしたしくみが不十分だった。UNICEFは住民らに感染症の知識を伝え、今後に備えている。ビルヌーブ氏は「人々が移動する時代、感染症は日本を含む世界共通の知識であるべきだ」と訴えた。【7月29日 朝日】
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【出生児の7万人以上が未登録状態】
今後終息ぬ向かうにしても、エボラ出血熱の残した影響は大きなものがあります。
****リベリアで出生登録激減=エボラ熱流行の影響****
国連児童基金(ユニセフ)は30日、西アフリカのリベリアで、エボラ出血熱が大流行した2014年以来、新生児の出生登録が激減していると発表した。
流行前の13年の約7万9000人が14年は約4万8000人に減り、今年は5月までの5カ月間で約700人にとどまっている。多くの保健施設が閉鎖されたり、業務を縮小したりしたのが原因で、7万人以上が未登録状態とみられる。
登録されないと市民権を取得できない。ユニセフのリベリア代表は「エボラ熱でひどい苦しみを経験した子供たちがさらに基本的な保健・社会サービスを受けられなくなる恐れがある」と指摘。人身売買や違法な養子縁組の犠牲になる危険もあるという。
ユニセフは出生登録システムの再構築でリベリア政府を支援しており、年内に未登録児全員の登録を目指し、全国規模のキャンペーンを行う。【7月31日 時事】
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“今年は5月までの5カ月間で約700人”・・・・殆ど全員が未登録状態ということになります。
保健衛生制度が崩壊状態だったことによるものですが、早急な、かつ、徹底したフォローが不可欠です。