明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
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リアル感について
人形制作
/
2008-04-30
アダージョ8号の志ん生
は、いつもよりリアルに作った。それは宮沢賢治、手塚治虫と、高所のSF調が続いたので、次はリアルにつくってみよう、という単に思いつきだったのだが、人の感覚というものは面白いもので、常になにかを基準として物事をとらえているものなのであろう。人形がリアルだと、それに対して背景の店内が作り物めいて見えてくるものらしい。背景は作ったのか?という質問を電話やメールで、すでに5人の方から同様のご意見をいただいている。私は考えもしなかった反応なので非常に興味深い。こういった話は、荒俣宏氏の著書の中でも、もっとも面白く読んだ『帯をとくフクスケ』(中央公論新社)の中に数々のエピソードが書かれている。中でも好きな話が、帆船時代。白人の船がある島に到着するが、原住民からすると、白人や大きな船など、頭の中にないので、原住民にはそれらが知覚できないというような話であった。私はかつて廃れてしまった技法、
オイルプリント
を神田の古書街に通いつめて習得し、個展を催した。私の場合、花や風景など、観る側にあらかじめ“成分”を知られたものを手がけることは少ない。これは一体なんだ、という来廊者の横顔をみていて感じたことは、“伝わらないものは、無いと同じ”ということであった。あれから時間も経った。この志ん生を、オイルプリント化したら、どんなことになるだろうか。なんてことを考えている今日この頃である。 一方興味や違和感を感じない人にとっては、志ん生が実物だと思って終わりであろう。中には年寄りに大きな太鼓を持たせて、無茶をしゃがる。なんて人もいるかもしれない。それもまた良しである。ここがこうなっていると、これは人間であって作り物では無いと、人が感じるポイントがある。私はそこをイタズラしているに過ぎない。見る人が未開地の原住民ではない、というのが前提であり、都営地下鉄線は、そういう人は、あまり利用しないと聞いている。
01/07~06/10の雑記
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