未だにMさんからの連絡を待っている状態だが、件の車体が撮れない場合のことも考えておくことにする。排ガス規制で使えなくなった車体など、とっくにスクラップになっている可能性が高い。その間Kの顔を仕上げているのだが、いい加減にしておきたい。あまり細部を追ってリアルにしてしまうのは本意ではない。ただこのKは、今までアダージョで手がけた人物で、もっとも亡くなってから年月が経っておらず、力道山がリキさん、と呼ばれたようにKさん、と愛称で呼ばれることもあった人物で、つまりちょっと違っていると、誰にでもすぐ判ってしまうタイプの有名人である。 Kにはトレードマークといっていいような持ち物がある。撮影用だしわざわざ買わずに済めば、とK本の次に寄ったT屋でHさんに訊いてみると「あるよ」。考えてみるとT屋では、森鴎外の軍服の飾緒をカミさんに三つ編みにしてもらったし(編む間、たまたまカウンターにいた酔っ払いが片方を持たされていた)ついでにサーベル用に菜箸を貰ったし、三島の時は、いつも半袖のHさんに腕の筋肉を見せてもらった。さらに志ん生ではK本で撮影したし、同じマンションのYさんには円谷英二で後姿で登場してもらった。なるべくわざわざ電車にも乗らず、近所で済ませたい私である。 T屋のカミさんには、たとえば小泉八雲あたりで幽霊をやってもらったらさぞかし、と思っているのだが、私の説得の仕方が悪いのか今のところ実現していない。“お化けじゃなくて幽霊だよ?”といっているのだが。
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