明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



久しぶりに旧知の女性と会う。クリスマスにダメおやじのツラは見たくない。5時に待ち合わせ、たまたま昨日、録画で見たばかりの『孤独のグルメ』に出てきた焼き鳥屋に行ってみた。彼女は下戸なのだが、こちらはかまわず飲みながら一通り食す。次に中華の店へ。 彼女には、三島由紀夫へのオマージュ展『男の死』は止めた方が良いと説得されたことがある。こんなテーマでは誰も観に来ないだろうという理由であった。三島は死の直前、様々な死に方を演じ、篠山紀信に撮らせている。魚をぶちまけて死んでいる魚屋、体操選手が片手で吊り輪にぶらさがったまま射殺されていたり、やくざのリンチ死等々。それぞれ三島の考えたシチュエーションで撮影は行われ、死の一週間前に出版契約を交わし、衝撃的な死の直後、出版される予定であった。それを目にした大衆の驚きを想像して三島はさぞかし愉快であったろう。結局諸々の事情で出版されることはなかった。 私はそのことを知らず、三島が様々な状態で死んでいる所を作ったら三島にウケるだろう、と考えた。それはずっと暖めていたが、“本物”が発表されてしまったら元も子もない。4年続いた『中央公論Adagio』の終刊が決まった時点で個展の準備を始めた。 仮に三島に対し失礼なテーマだ、といわれたとしても、発表されていないとはいえ、本人が腹に包丁刺さった魚屋までやっている事実、という強力な後ろ盾?が私にはあった。 当時止めるよういった彼女は、「あの個展は良かった」という。反対したじゃないか。というと、作品が良いこととやるべきことは別だ、という。(おっしゃる通りで御座います。)しかしそういうことを考えずにやってしまうのが私の持ち味じゃないの?彼女にいわせるとそこが私の欠点だそうである。紹興酒のボトルを飲み干したところでお開き。  良い気分で帰るつもりで覗いた店が悪かった。酎ハイをちょっと飲んで帰るつもりが、話したいことが溜まってる店主に話を訊かされ注がれ、午前3時半。5、6杯飲まされたが、飲みながら酒が醒めていく。アルコール度数と状況とのバランスで、私にはたまに起こる現象である。入った時にはホロ酔いだったのに出た時にはすっかり頭は醒めていた。二日酔いをしたことがない私の肝臓は時折余計なことをする。

過去の雑記

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