明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 

祝杯  


大谷翔平はWBCのアメリカとの決勝戦を前に「今日は憧れるのは辞めましょう」といった。律儀で勤勉な日本人の弱点を見事に表現していた。 私はたまたま憧れた作家といえば、工芸学校時代の河井寛次郎と、写真家の野島康三くらいである。独学我流の私は身につけた物が出て行かないことを常に恐れて来た。だんだん美術館にも行かなくなり他人の作品に関心してるヒマがあったら自分のイメージを取り出すことに集中するべきだと思った。東京の下町気質は、一度憧れてしまうと、一生頭が上がらない可能性もある。そもそも私は素晴らしい作品を作るのが目的では長く、己の頭に浮かんだイメージを正確に取り出し〝やっぱり在った”と確認することである。私しか知らないのだから人に教わり様がない。これで良かった、と今では思う。 先日作り始めた禅師の頭部だが、『展示出来ない可能性を考えると、ズルズルと創作の快感に浸っている訳には行かない。』という私の声が届いたのか、肝心の頭部が仕上げを残してほぼ出来てしまった。中井英夫の四日を超える記録である。築地の癌センターで肺ガンの手術を受けた知人が手術から二日で退院し電車で帰宅したという。テーブルに味の素が置いてある近所の定食屋で二つのことに祝杯を上げた。



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