明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



二人目の禅師は頂相を元に制作することに決めたが、その迫真性は、宋代に描かれ、来日時に携えて来た、という説が頷ける物である。当時の日本の実力は及ばない。しかし何しろ陰影がない。そのディテールは想像するしかない訳だが、その辺りは、頬がこうなっていたら、ここのラインはこうなっているだろう、などと、散々やってきた(誰も知らないし)。 しかし肖像画と人相が違う木像はかなり厚い補修がなされており、レントゲン写真で、その下には肖像画に近いタレ目とおちょぼ口の正面が確認出来た。さらに、京都の江戸時代に作られた像の中に、何かの事情で破損している面に当たる部分が封じ込められているのが最近発見され、取り出せはしないものの、およそ七百年前のものと確認されている。その細面は、やはり肖像画に似てる。 アバタや鷲鼻を写真師に修正させ、未だに日本国民を騙し続けている夏目漱石のように、本人でさえ嘘をつく場合がある。しかし胃弱の小説家と違って禅師の頂相は、時に耳毛さえ正確に描かせている。



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )