子ども達がラッキーを迎えに来て、教室に連れて行く。でもすぐ帰って来てしまう。動作がすばやいのだ。
昨日も女の子が迎えに来た。この子はラッキーの最初の里親である。そしてこの子のおばあちゃんが飼い主になる予定だった。だから一週間以上、この子の家で育てられていた。それを覚えているのか分からないが、その子にはおとなしくだかさって行く。「○ちゃんの匂いを覚えているみたいよ」というとうれしそうだ。和美さんによると、この子はネコが苦手だったが、ラッキーの面倒見たことで、すっかり好きになったという。ラッキーも役にたっている。
連れて行かれて間もなく、台所の椅子に黒いネコが寝そべっているのに気がついた。ジョイスかな、と思ったが、よく見るとラッキー。あらやだ、もう帰ってきちゃったんだ。ラッキーは勉強が嫌いなんだ。
リモージュというジョイスやマルメのママネコがいた。このネコは子ども達が好きで、教室に入り浸っていた。で、教室の主ということで、アルジーという別名が付いた。だから子ども達もリモージュを可愛がっていた。可愛がられるから、リモージュも居心地がよかったんだろう。
「リモージュは風邪気味なので今日はは欠席します」なんて欠席届けを出しても、いつの間にかリモージュが教室に来ている。「リモージュは勉強が好きなんだね」
ある朝、通り近くの人から「ネコが車にはねられた。お宅のではないか」と電話がかかった。急いで行ってみると、リモージュだった。もう死んでいたが、まだ温かかった。連れてきて、埋葬すると、6年生の男の子がやってきた。「リモージュ、はねられたって本当ですか?」と、涙をいっぱい浮かべていたが「うん、今埋めたところ」とうと、我慢しきれなくなって泣き出した。
この子は父子家庭だったが、その父親が死んでしまって、伯母さんの家に引き取られていた。そんなこともあって、さびしかったのだろう、リモージュをことのほか可愛がっていたのだ。
この子も、もう大学生だ。