「魔法のカクテル」
ミヒャエル・エンデ 川西芙沙訳 岩波書店
「モモ」や「はてしない物語」あたりはよく集めて読んでいた。あとがきを読むと、この作品は「モモ」や「はてしない物語」から10年後の作品だそうだ。二階へ行ったら、娘の本箱にこれがあったので、エンデにこんな作品があったの?と持ってきて読んだのだった。 おもしろかった。
筋書きはいたってシンプル。大晦日の夜、悪魔と契約をした魔法師と魔女が、契約中に行うべき悪を履行していなかったことで、総決算を迫られる。こんなところはファウストみたいだ。そこで地獄行きを逃れるために、二人で魔法のカクテルをつくって、世の中を悪でいっぱいにしようと計画する。上手くいけば、地獄の使者に逮捕されずにすむ。カクテルの名前はジゴクアクニンジャネンリキュール。
大晦日の晩、新年を迎える前に、このカクテルを飲みながら韻をふんで願い事を唱える。すると願い事と逆のことが現実にはなる。それには証人が必要。証人には魔術師達が、世の中をよくする願い事を唱えているように聞こえるし、と偽善者そのもの、しかし実際にはその反対の悪が世の中に満ち満ちることになる。
証人になる二人は猫とカラス。魔術師と魔女の話を盗み聞きした2匹がこのたくらみを阻止しようと動く。魔女と魔術師がカクテルを作る作業を描く一方、二匹が聖堂の鐘を何とか早く鳴らして、魔術師達のたくらみをつぶそうとする。話はこれだけ。
計画を阻止するために二匹は新年の鐘を少しでも早く鳴らそうと、聖堂の鐘つき堂へ上っていく。二匹を助けたのは聖ジルベスター(大晦日)、話を聞いた聖ジルベスターは鐘のかけらをカラスにくれる。結局カラスが隙を見て、そのカクテルに入れることに成功する。
二匹の証人を前に、魔術師と魔女は交互にカクテルを空け、願い事をする。「公害なんかなくなっちまえ」とか「戦争なんかこの世からなくせ」・・とかそんな奇麗事を並べる。もちろん本心は逆のことを願っている。魔術師と魔女はカクテルでへべれけになっているので、その願いが外の世界で実現したかどうかはわからない。酔っ払っらった魔術師達には身近なものに願いをかける。二匹の証人、年寄りのリュウウマチもちのカラスがきれいに丈夫になるように、でぶっちょ猫にはスマートで美しい声になるように、すると二匹は願いどおり素敵な二匹になる。あれれれ。次に魔術師達はお互いに魔法を掛ける。すると二人とも若々しく、しかも優しい人間になってしまう。まずい!逆魔法が効いていない。最後の一杯で元の自分達に戻るが、二人とも酔いつぶれて寝てしまう。そして新年の鐘。
時間切れで地獄の執行人が現れ、酔いつぶれた二人を地獄へ連行していく手はずをとる。
素敵な声になった猫がうたう「終わりよければ全てよし」
◇教えてもらった:
Der Wunschpunsch が原題で、ヴンシュプンシュ、希望のかなうフルーツポンチというくらいの意味,だけどこれも掛言葉、おもしろい。
Der satanarchaeoluegenialkohoellische Wunschpunsch が「ジゴクアクニンジャネンリキュール」かな、ザターンアルヒェオリューゲニアルコーリッシェ、ヴンシュプンシュ って読むんだろうなぁ、
satan, archaeologie, luegen, alkohol ae , ue , oe, はそれぞれ a,u,o, の上に点々が付く。
サタン、考古学、嘘、アルコールを繋げた掛言葉的造語だけど、
よく聞くわけの分からないラテン語の病名みたいでおもしろいよね。。
サタン的インチキ考古学のアルコールフルーツポンチ、ってなとこかしら、、
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