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ローレライ

2011-01-07 22:57:11 | アート・文化

チャンネルをまわしていると、ハイネという文字に目が止まった。「いまどきハイネなんてめずらしい」ちょうどハイネが従姉妹の何がしに失恋した話だった。はじめハイネは商業をめざしたが商才に恵まれず、次いで法律家を目指したが、そちらにも才がなく、師事したヘーゲルの影響で詩作や評論を書き始めたのだそうだ。そして詩集「歌の本」を発刊。抒情詩人として有名になる。

高校生のときだったろうか、この「歌の本」を買って、さかんに暗記したものだが、だれの訳だったかは覚えていない。「歌の本」のローレライの詩にはタイトルがなかったそうだが、私もローレライを目当てに詩を読んだわけではなかったので、そんなことはまったく知らなかった。ハイネを愛読した世代は私よりずっと前の世代である。

番組は「歌の旅」というもので、今回のテーマが「ローレライ」だったので、その詩の作者でハインリヒ ハイネが取り上げられていたのだった。

                                              

私にとって「ローレライ」は、ハイネの詩というより、ジルヘル(ジルヒャー)作曲、近藤朔風訳詩の愛唱歌としてなじみ深い。私の世代の人たちは、「なじかは知らねどこころわびて・・」という歌い出しのこの歌を知らない人は少ないだろう。だが、この歌の詩の作者がハイネであったと知ったのは、ずっと後のことであった。ローレライの歌詞をドイツ語で覚えたとき、その作者がハイネであると改めて知ったのだった。ハイネのこの詩にはリストをはじめ、多くの作曲家たちが曲をつけているということだ。

                                              

以前、ライン川を遡ったことがある。船がローレライの岩山の前にさしかかると、船内に大きくローレライの女声合唱が流された。でも乗船客はまったく無反応だった。ただ二人乗っていた日本人、私たちだけが反応して、いっしょになって歌ったのだった。ローレライの伝説は有名でも歌は愛唱されていないのかと不思議に思ったものだ。もっとも今ではローレライはヨーロッパの三大がっかりの一つに上げられているが。

                                              

かつてローレライの岩山のあたりは川幅が狭く、急流で、しかも水中には岩も多く、流れの近くに顔を出していて、とても危険で、航行の難所といわれ、実際あまたの遭難があったそうだ。現在は河川改修で川幅も広く、岩も爆破してとりのぞかれ、ラインはゆったりと流れ、航行も安全である。航行の難所、魔の淵ともなれば、人は想像をたくましくする。ハイネにはセイレーンの故事も頭にあったのではなかろうか。同様、プレンターノの創造的伝説もある。

                                              

番組の解説だと、ローレライのこの詩は、ローレライ伝説にのっとったように書かれているが、実はハイネの想像の産物で、ローレライ伝説はなかった。しかもハイネの失恋が大きく影響しているという。もとより、伝説の多くは、だれかの想像に尾ひれがついて、伝えられてきたものだ。その伝説の出自がハイネであっただけのことと考えればおかしくもない。ハイネは後年、彼の詩が伝説として取り上げられていると聞いて、喜んだという。

                                              

ハイネはその後、ドイツを去って、パリに居を移している。ナチスドイツの時代、ハイネの本は焚書処分にされた。しかし、ローレライの歌だけは、作者不明として残されたのだそうだ。それがなおのこと、伝説となったのだろう。                                              

         

                      ローレライ
                                              

  なじかは知らねど 心わびて
  昔の伝説(つたえ)は そぞろ身にしむ
  寥(さび)しく暮れゆく ラインの流(ながれ)
  入日に山々 あかく映ゆる

  

  美し少女(おとめ)の 巖頭(いわお)に立ちて
  黄金(こがね)の櫛とり 髪のみだれを
  梳(す)きつつ口吟(くちずさ)む 歌の声の
  神怪(くすし)き魔力(ちから)に 魂(たま)もまよう

  

  漕ぎゆく舟びと 歌に憧れ
  岩根も見やらず 仰げばやがて
  浪間に沈むる ひとも舟も
  神怪(くすし)き魔歌(まがうた) 謡(うた)うローレライ

                                             

         Die Loreley

  Ich weis nicht was soll es bedeuten,
   Das ich so traurig bin;
   Ein Marchen aus alten Zeiten,
   Das kommt mir nicht aus dem Sinn.

 Die Luft ist kuhl und es dunkelt,
   Und ruhig fliest der Rhein;
   Der Gipfel des Berges funkelt
   Im Abendsonnenschein.

 

 Die schonste Jungfrau sitzet
   Dort oben wunderbar;
   Ihr goldnes Geschmeide blitzet,
   Sie kammt ihr goldenes Haar.

  Sie kammt es mit goldenem Kamme,
   Und singt ein Lied dabei;
   Das hat eine wundersame,
   Gewaltige Melodei.

 

 Den Schiffer im kleinen Schiffe
   Ergreift es mit wildem Weh;
   Er schaut nicht die Felsenriffe,
   Er schaut nur hinauf in die Hoh.

  Ich glaube, die Wellen verschlingen
   Am Ende Schiffer und Kahn;
   Und das hat mit ihrem Singen,
   Die Lore-Ley getan

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