5月18日(金)
目を覚ますと窓から見える外は明るい。Papasanが「日の出は4時35分くらい」と言って外を眺めている。星空から晴天を予想していたのだが、明るいが雲がたれこみ、すっきりとしていない。この様子では山に登っても遠望はきかないだろう。
6時少し前、ロビーに出て迎えを待っている。程なくワゴン車が来た。たぶんあれだろう。そこでPapasanが挨拶に行くと、確かにバードウォッチング主催者の岩崎さん、テキパキとさわやかな感じの女性。もう一組、いっしょに行くという。6時ぎりぎりにもう一組若いカップルが現れた。東京と埼玉からのふたり。昨日は飛行機が最終便まで飛ばず、羽田で9時間も待ったという。
まずは双眼鏡の扱い方から教わる。この双眼鏡軽くて、しかもよく見える。私のお目当てはアカコッコだと伝える。最初のバスの運転手さんによると、三宅島の噴火のせいもあって、アカコッコは増えて鳴き声がうるさいくらい、と聞いた。次のタクシーの運転手さんによると、ねずみやマムシを駆除するために、イタチを導入して放した。そのせいで、アカコッコも犠牲になり数が減ってしまった、そんな話をした。
昨日私達がさまよった植物公園のキョンの檻近く。あたり一面いい香がする。スダジイの香だそうだ。家にもスダジイの古木はあるのだが、オスなので花が咲いたことがないから香はしらなかった。こんな甘い香がしたんだ。イイジマムシクイの鳴き声を教えてもらった。イイジマムシクイは天然記念物だ。アカコッコの声も教えてもらった。あちこちにいるようだが、姿は見えない。
シジュウカラ、キジバト、イソヒヨドリ、ヒヨドリ、ウグイス、スズメの声もよくひびく。空にはツバメとアマツバメが舞っている。チュウサギ、アマサギもいる。植物園からでて、街中でアカコッコが横切るのを見た。ちょっと遠かったけど、それから何回もアカコッコにお目にかかった。ほんとアカハラによく似ている。頭が黒いのが特徴だが、一瞬だとアカハラと間違えそうだ。道路にアカコッコがいる。二羽いる。おや、ケンカをしている。あっ、左側にメスがいる。恋の鞘当だったんだ。アカコッコって、よく見るとのんびりした顔をしているね。
岩崎さんによるとアカコッコは伊豆諸島とトカラ列島にだけいるそうだ。昔は伊豆諸島とトカラ諸島がつながっていたのかも、と言って岩崎さんが笑った。トカラ諸島、奄美大島までの列島ね、つながっていたとは考えにくいけど、アカコッコも黒潮に乗ってきたのかなぁ。
島ではアカコッコは「コッコメ」と呼んでいる。ツグミ科の鳥をコッコというのだそうだ。そういえば昨日バスの運転手さんが、島では下にメをつけて呼ぶと言っていた。牛メ、馬メ、イヌメというように。すかさず私が「じゃぁ、ワカメはなんて呼ぶの?ワカメメ」といったら、みんなが笑った。運転手さんも笑っていた。ただし私達が名詞の下につけるメが強い発音ではなく、やや上がり調子のやさしい音のメだ。
八丈島は離島なので、野鳥は固有種が見られる。そこで世界の鳥類学者たちが訪れているそうだ。今年はホトトギスの来るのが遅れているが、ホトトギスが来れば八丈島のオールスターが揃うそうだ。
ホタル水路、と言って水田を復元しているところへ行った。昔は島には水田がずいぶんあったそうだ。しかしいまはほとんどない。そこで子どもの教育もかねて、水田を復元しているそうだ。ここの奥は小高い森に包まれた場所。山にはスダジイの新緑が目に鮮やかだ。ここはまさに野鳥の声のシンフォニー。
「いまのがイジマムシクイですよ、あれがタネコマドリですよ」なんて立て続けにいわれても聞き分けられないくらい、たくさん鳴いている。カラスバトのウォーウォーとなく声も聞こえる。山の上を二羽のカラスバトが飛んでいく。カラスバトって飛び方もキジバトとは違うんだ。ここで温かい紅茶を頂いて、ホテルに戻った。念願のアカコッコにあえて満足。
ホテルに戻って朝食に行った。10時チェックアウト。みやげ物コーナーでPapasanはまた黄八丈のループタイを私は岩のりと明日葉の粉を買った。明日葉の加工食品がたくさんあった。島の野菜だからだろう。明日葉の効能書きは使えそうなので貰っておいた。
昨日のタクシーの運転手が、海岸に下りるなら、この道の方がいいと教えてくれたので、散歩に出かける。緑にあふれるだれもいない道。ここでも海に落ちる溶岩が、おもしろい景色をつくっている。海辺近くに建設中の、たぶん、ホテルになるのではなかろうか、建物がある。八丈島の植物ガイドを持ってくればよかったな。せっかく買ったのだから。
チェックアウトのとき、フロントにお料理も美味しくて、居心地はよかったんだけど、交通の便が悪いのが難点ですね、というと、そこが頭の痛いところですと答えていた。送迎以外にホテルバスを動かすと、タクシー業界から苦情が出るとも。そうだろね、客にすればちょっと街中に出るだけで、タクシー代が1500円以上になる。これを何度も往復すれば、かなりの出費になる。一方、地元にすれば、タクシーを利用してくれれば共存共栄になる。
昨日の運転手さんに電話をしたが観光で出てしまったというので、ホテルでタクシーを呼んでもらい、大里の玉石垣に行ってもらって、空港へ行った。11:55分の大島行に乗るためである。フライトまで時間があったので、みやげ物をのぞいている。青ヶ島の塩があったので、八丈島の塩とわせて買った。
チェックでPapasanの荷物がひっかかった。右下の方に何か引っかかるものがあるという。来るとき何でもなかったから、おみやげ物かなぁ、と言いながら中の物を出す。液体の焼酎も入っていたけど、それはパス。そして再びチェックを通したが、結局なんだかわからなかった。
座席は左の窓側。だから八丈富士を見ることは出来なかった。飛行機は空いていた。「右側の方が島が見えるから移動してもいいですよ」と乗務員が言ってくれたので、右側に移動。八丈島から大島まで35分。大島まで20分ぐらいというところで、御蔵島と三宅島が見えてきた。往きよりずっと大きく見える。どこかの島の上を飛んだ。大島が見えてきたところで、右側の窓に利島のかたちがあった。
12:30大島空港着。大島は初めてではないが、空港に降り立つのは初めてだ。空港からタクシーで岡田港へ移動した。昨日は船は欠航だったと運転手さんが言った。一日ずれてよかったなぁ。
まずは予約してあった高速船の切符を買った。それから食事にでかけた。乗り場の近くにあるお店の二階がレストランになっていて、そこへ上がって行った。大島名物「べっこう寿司」というのがあった。そこでそれを二人前とった。Papasanは生ビール、とおつまみにトコブシ甘辛煮を頼んだ。初めて大島に来たとき、知り合いのオバサンがこのトコブシの煮つけをたくさん作ってくれた。なつかしさもあって、美味しかった。
べっこう寿しは白身の魚をヅケにしたものである。醤油の色でべっこう色になることから、こうよばれているとか。今日の白身魚はメダイ。小ぶりの握りだけど、一皿に10ケものっている。こんなに食べられるかなぁ。ヅケがピリカラ。「辛~い」と思わず声に出してしまった。「大丈夫ですか」とオバサン。「漬け汁に青唐が入っているんですよ」大島特産の青唐辛子を「あおとう」というらしい。ヅケは伊豆七島の食文化なんだ。しかも島それぞれに特産の唐辛子があるようだ。これには芥子もわさびも塗ってないし、シャリも甘いが、ヅケのピリカラがちょうどいい。美味しいと言って全部食べてしまった。しかし口の中がピリカラなので、と口直しに特性のプリンを食べた。
船だまりを写真に撮っていた。案内所に入ると、二階が待合室になっている。
岸壁でつりをしている人がいる。「何が釣れるの?」ときくと「アオリイカ」という。「へ~、見たい見たい、釣れないかなlぁ」と野次馬は覗き込む。海は澄んでいできれいだが、魚影は見えない。
そうこうしているうちに、乗船の案内が流れた。3時25分。ジェットホイルだ。席は指定で2階。熱海まで45分。熱海に着くとバスがあり、連絡よく電車もあった。で、5時前には家に着いた。「ただいま!」門にはイヌが玄関にはネコが待っていた。