麻生・稲田・谷垣の消費税増税再延期異論は安倍晋三の再延期の正当性と意志の強さを印象づける茶番劇?

2016-06-01 08:38:05 | 政治


 安倍晋三が5月28日、首相公邸で麻生太郎と谷垣と会談した。2017年4月に予定していた8%から10%への消費税増税の2年半再先送りと衆参同日選挙は行わないことを伝えたという。

 翌5月29日、麻生と谷垣はなぜか揃って自民党富山県連の大会に出席、増税再延期に異論を述べている。

 麻生太郎「(消費税率引き上げを)延ばすというのであれば、もう1回選挙をして信を問わないと筋が通らないということになるんじゃありませんか、というのが私やら谷垣さんやらの言い分であります」

 谷垣禎一「俺と谷垣が全く同じ意見だということがありましたので、もう麻生副総理のお話を引用いたします。進むにせよ退くにせよ、非常に重い決断でございます」(TBS/2016年5月30日00:01)  

 麻生太郎の発言は「Doshin Web」(北海道新聞)だと次のようになっている。 

 麻生太郎「(2014年衆院選で)必ず増税すると言って当選してきている。(増税を)延ばすのであれば、もう一回、衆院選を行い、信を問わないと筋が通らない。これが私と谷垣氏の言い分だ」

 記事は、〈各種経済指標は2014年衆院選前よりも改善傾向にあり、予定通りの増税は可能との認識も示した。〉と解説している。

 要するに麻生も谷垣も安倍晋三との会談で予定通りの増税は可能だとして再延期に反対、再延期するなら、解散して国民に信を問えと主張したことになる。

 だが、安倍晋三は応じなかった。

 安倍晋三は5月30日には首相官邸で国家主義お友達の自民党政調会長の稲田朋美と会談、消費税増税の2年半再延期に理解を求めたという。

 稲田朋美「再延期するなら国民に信を問うべきだ。来年4月から段階的に1%ずつ引き上げる考え方もある」(産経ニュース/2016.5.30 12:26)   

 5月30日午後5時近くに谷垣と再会談。会談後、午後5時過ぎに自民党役員会開催。増税再延期の説明を行ったところ、異論なく了承されたという。

 要するにこの場で谷垣も稲田もあっさりと了承したことになる。

 午後6時半過ぎ都内のホテル内のレストランで麻生太郎と会食。麻生にしてもここで再延期をあっさりと受け入れたのだろう。

 翌日5月31日午前、閣議後の記者会見。

 麻生太郎「(再延期は)政府・与党内で調整されており、安倍総理大臣が最終的に判断する。日本経済でいちばんの問題はGDP=国内総生産の6割を占める個人消費が伸びていないことだ。個人消費を堅調に伸ばすために消費税の再延期が1つの選択肢だということは反論しない。

 財政再建を諦めているわけではない。基礎的財政収支=プライマリーバランスについても最大限努力する姿勢に変わりはない」(NHK NEWS WEB2016年5月31日 12時13分)  

 要するに再延期に関して安倍晋三に白紙委任状を手渡した。財政再建について「諦めているわけではない」と言っていることは、達成が難しい状況にあることの自白に等しい。

 達成可能が計算できる状況にあるとき、「諦めているわけではない」とは言わない。計算できない逆の状況のときに使う言葉である。

 安倍晋三は強弁や詭弁を使ってまでして自身の主張や、特に選挙に勝つためには如何なる手段をも押し通す人間である。5月26日の伊勢志摩G7サミットの首脳会議を利用、会議後に記者たちに世界経済がリーマンショック前と似た危機的状況にあるとの認識で一致したかのように装い、そのような危機感を自作自演してまでして消費税増税再延期とその正当性匂わせ、参院選を有利に運ぼうと画策欲求を既に露わにしていたのである。

 麻生太郎はこのことを承知していなければならないはずで、その承知を前提とするなら、5月28日の安倍晋三との会談で国の財政を与る責任者として反対の姿勢を示したにも関わらず、説得し切れなかったという経緯を踏んだはずだから、反対はその場で収めるか、再度の会談を麻生太郎の方から求めて、改めて国家財政を維持する立場から増税再延期の翻意を強力に促すべきだが、そういったことはせず、なぜ翌日の5月29日の自民党富山県連の大会で増税再延期に異論を述べのだろう。

 その異論がマスコミの報道によって国民の耳目に拡散することを狙ったとしたら、事実多くの国民が知ることになったはずだが、翌日5月30日の安倍晋三との再度の話し合いで異論を早々に引っ込めたことと矛盾することになる。

 但し自民党富山県連の大会で異論を述べたことに利点がないわけではない。

 内閣の中でも自民党内でも誰もが再延期に反対せず、早々に賛成したなら、政府・与党の一致した姿勢、一枚岩を示すことはできるが、マスコミが拡散することになる世間の政治評論家や経済評論家、その他の再延期に賛成もあり、反対もある賛否両論の状況と著しく異なって、悪くすると異常に映ることになる。イエスマンばかりではないかと蔑みを込めた批判も受けかねない。

 反対があってこそ、世間と同じ正常な姿を国民に見せることができる利点を演出できる。

 さらに異論を示したのが内閣でも重要な地位を占める財務大臣の麻生であり、自民党を実務面で仕切る自民党幹事長の谷垣禎一であり、政調会長の稲田朋美である。その声は地位の重要さに応じて重く、影響力がある。

 その異論を安倍晋三が最終的に説得して翻させることによって、安倍晋三の増税再延期の正当性ばかりか、そのことにかける意志の強さ・決意の強さを逆に印象づけることができたはずだ。

 麻生・谷垣・稲田の異論は、どうも、そういった諸々を演出するためにそのための茶番劇に見えて仕方ない。

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