安倍晋三のアベノミクスの果実で二つ両方は実現不可能の約束を可能と国民に思わせた言葉のゴマカシ

2016-06-06 09:24:00 | 政治

 ――一つはプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化であり、一つは社会保障政策の財源の捻出に関してであって、安倍晋三はアベノミクスの果実でその両方を共に達成可能であるかのように言葉を操った――

 安倍晋三は消費税増税再延期を宣言した6月1日の「記者会見」で再延期と社会保障政策との関連について次のように発言している。   

 安倍晋三「社会保障については給付と負担のバランスを考えれば、10%への引上げをする以上、その間、引き上げた場合と同じことを全て行うことはできないということは御理解をいただきたいと思います。

  民進党のように、赤字国債を発行してその給付を全て賄う、社会保障費を全て賄うということは、私は無責任だと思います。赤字国債を財源に社会保障の充実を行うような無責任なことは、私たちは行いません。自民党と公明党の連立与党はそういうことは絶対にしない、ということをまず明確に申し上げておきたいと思います。

 しかし、安倍政権の下で子育て世帯を支援していく、この決意は揺らぎません。保育の受け皿50万人分の確保、来年度までの達成に向け、約束どおり実施いたします。

 また、『介護離職ゼロ』に向けた介護の受け皿50万人分の整備も、スケジュールどおり確実に進めていきます。

 さらに、保育士、介護職員等の処遇改善など、一億総活躍プランに関する施策については、アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して、優先して実施していく考えであります」――

 8%から10%へ引き上げない以上、国がその分の財源を確保できないのに対して国民はその分の負担が減るのだから、社会保障に関してもそれ相応の手当の不足は覚悟して欲しい、但しアベノミクスの果実等を活用して財源を確保、保育政策、介護政策等の一億総活躍プランに関する施策は滞りなく進めると約束している。

 つまり、それ以外の社会保障政策は最悪切り捨てられるか、最悪とまでいかないくても、縮小される可能性も出てくる。

 「アベノミクスの果実」とはアベノミクスの成功がもたらした税収のことを指す。安倍晋三は同じ記者会見で上記発言に先立って次のように述べている。

 安倍晋三「3年間のアベノミクスによって、国・地方を合わせて税収は21兆円増えました。その2年半の延期によって、その間にアベノミクスをもう一段加速する。そのことで更なる税収アップを確保し、2020年度のプライマリーバランスの黒字を目指す考えであります」

 この「21兆円」は小野寺五典のテレビ番組での発言によると、消費税増税分の税収8兆円を含めた「21兆円」で、アベノミクスの成果は実質「13兆円」である。

 いずれにしても21兆円の税収があった。消費税増税の2年半の延期期間にアベノミクスをもう一段加速して更なる税収アップを確保する。

 だが、2年半の税収アップ――アベノミクスの果実はプライマリーバランスの黒字化に当てると言っている。

 アベノミクスの果実はプライマリーバランスの黒字化に当てて、その実現を目指すと言ったあとに「アベノミクスの果実の活用も含め、財源を確保して」社会保障政策を進めていくと宣言した。

 安倍政権はプライマリーバランス(国と地方の基礎的財政収支)の2020年度黒字化目標と2018年度GDP(国内総生産)比1%程度の中間目標を掲げているが、消費税増税の再延期で中間目標の達成は極めて困難な状況にあるとマスコミは伝えている。

 後者が達成困難なら、前者も黒字化達成困難となる。にも関わらず、アベノミクスの果実(=税収)を社会保障政策の財源にも回すと言っている。

 プライマリーバランスの2020年度黒字化を実現、国民の消費税増税の負担が減る分に応じて給付にかかる支出が減るにしても、2019年10月までの2年半の社会保障政策の財源も賄う。

 それ程にもアベノミクスの経済政策が強力で、消費税を8%に抑えた状況下でアベノミクスの果実の収穫量を自在に増やすことができのが事実なら、何も2年半後に8%から10%に消費税を上げる必要はなくなる。

 その強力さに恃んで、8%から5%へと元に戻すことも可能となる。

 だが、実際には冷え込んだままの個人消費が消費税を10%にすることでなお冷え込むことを恐れて増税を再延期した。いわば消費税8%の状況下では個人消費の低迷に打ち勝つことができる程にアベノミクスは強力ではなかった。

 消費税8%という状況は続くのである。新しい社会保障政策を打ち出さないなら財源は新たに必要としないだろうが、新しい政策を打ち出して新たな財源を必要としていながら、プライマリーバランスの2020年度黒字化も、2019年10月までの2年半の社会保障政策の財源の捻出も、両方共にアベノミクスの果実で実現することができるかのように国民に話しかけた。

 この矛盾した約束――と言うよりも、できない約束をさもできるかのように言葉を操って約束したゴマカシは許しがたい。

 大体がアベノミクスの果実、税収にしても、昨日のブログに書いたように個人消費の低迷と実質賃金の頭打ちが証明しているように、円安・株高の大恩恵を受けた大企業や高額所得層の、前者は法人税、後者は所得税や高額商品の購買がそれぞれに貢献し、その多くを占めるに至っている、このことをそのまま裏返すと、中小所得層の貢献度は低い、いわば格差が生み出している国の収入であって、格差を拡大していることで捻出できているアベノミクスの果実でプライマリーバランスの黒字化と社会保障政策の財源の捻出ができると、できもしない約束をしているのは滑稽な逆転した発想としか言いようがない。

 格差拡大を進めながら、「安倍政権の下で子育て世帯を支援していく」、「保育の受け皿50万人分をの確保」、「『介護離職ゼロ』に向けた介護の受け皿50万人分の整備を進める」、「保育士と介護職員等の処遇改善」等々を約束しているのである。

 当然、できない約束をさもできるかのようにゴマカシした後に残るのは現在もそうであるように格差拡大という現実のみのはずだ。

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