安倍晋三は消費税増税延期を2014年総選挙で利用し、今度は2017年参議院選挙勝利に利用としている

2016-06-02 12:26:50 | Weblog

 ――安倍晋三が消費税増税の再延期に掲げた理由はアベノミクスが自律性を欠いた経済政策であることの暴露に他ならない――

 安倍晋三が昨日、2016年6月1日、通常国会閉会に合わせて「記者会見」を開き、そこで2017年4月1日に予定していた消費税の8%から10%への増税の延期を宣言した。  

 ご存知のように2014年11月21日の衆議院解散の際も記者会見を開き、2015年10月1日実施予定の消費税8%から10%への再増税の1年半、2017年4月1日への先送りを宣言していて、今回が再延期となる。

 安倍晋三「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました」

 そして各経済指標を挙げてアベノミクスの順調な成功ぶりを謳い上げた。

 だが、有効求人倍率が高い水準となろうと、正規雇用が8年ぶりに増加に転じようと、パート賃金が過去最高となろうと、実質賃金が上がらず、そのために個人消費が低調な推移を見せていたのでは、その成果を相殺して意味を失わせている。

 言い換えると、一般的な国民の経済活動は不活発な状況に抑えられていることになる。
 
 安倍晋三は消費税増税再延期の理由に世界経済の不透明感を挙げている。

 それが事実だとしても、現在のところ、その影響を大きく受けているわけではないから、受けていたとしたら、安倍晋三がアベノミクスの成果として挙げた各経済指標の好調ぶりは矛盾することになるから、つまるところ、「消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げる」だけの成果を上げることができなかった事実は覆い隠すことはできない。

 要するにアベノミクスに日本の経済を本質のところで回復させるだけの力がなかった。

 このことは世界経済の不透明感という同じ条件下にありながら、米経済の個人消費支出や輸出統計、鉱工業生産、住宅着工や販売の堅調さが逆に証明することになる。4月の米個人消費支出は前月比1.0%増と6年8カ月ぶりの大きな伸びとなったと「ロイター」記事が伝えている。  
 
 アベノミクスに景気を回復させるだけの力が本質的にはなかったために世界経済の不透明感が不透明感で終わらずに世界の経済に打撃を与える経済危機というリスクとなって表面化した場合の危険性に前以て備えなければならない必要性に迫られて、消費税増税の再延期を図ったといったところが実態であったはずだ。

 このことは次の発言に現れている。

 安倍晋三「世界経済は、この1年余りの間に想像を超えるスピードで変化し、不透明感を増しています。

 最大の懸念は、中国など新興国経済に『陰り』が見えることです。リーマンショックの時に匹敵するレベルで原油などの商品価格が下落し、さらに、投資が落ち込んだことで、新興国や途上国の経済が大きく傷ついています。

 これは、世界経済が『成長のエンジン』を失いかねないということであり、世界的な需要の低迷、成長の減速が懸念されます。

 世界の経済の専門家が今、警鐘を鳴らしているのは、正にこの点であります。

   ・・・・・・・・・・・・・・

 私たちが現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なります。しかし、私たちは、あの経験から学ばなければなりません。

 2009年、世界経済はマイナス成長となりましたが、その前年の2008年時点では、IMFも4%近いプラス成長を予測するなど、そのリスクは十分には認識されていませんでした。直前まで認識することが難しい、プラス4%の成長予測が一気にマイナス成長になってしまう。これが、『リスク』が現実のものとなった時の「危機」の恐ろしさです。

 私は、世界経済の将来を決して『悲観』しているわけではありません。

 しかし、『リスク』には備えなければならない。今そこにある『リスク』を正しく認識し、『危機』に陥ることを回避するため、しっかりと手を打つべきだと考えます」――

 実際に姿を現わした経済危機ではないし、「世界経済の将来に『悲観』しているわけではないが、『リスク』に備えて『危機』に陥ることを回避する」・・・・・

 このことを以てして消費税増税の再延期を理由としているが、このことに果たして正当性があるか否かである。

 安倍晋三は「私たちが現在直面しているリスクは、リーマンショックのような金融不安とは全く異なります」と言っているが、5月27日の「G7伊勢志摩サミット議長国記者会見」では6回も「リーマンショック」という言葉を使っている。  

 安倍晋三「原油を始め、鉄などの素材、農産品も含めた商品価格が、1年余りで、5割以上、下落しました。これは、リーマンショック時の下落幅に匹敵し、資源国を始め、農業や素材産業に依存している新興国の経済に、大きな打撃を与えています」

 安倍晋三「こうした事情を背景に、世界経済の成長率は昨年、リーマンショック以来、最低を記録しました。今年の見通しも、どんどん下方修正されています」

 安倍晋三「世界の貿易額は、2014年後半から下落に転じ、20%近く減少。リーマンショック以来の落ち込みです。中国の輸入額は、昨年14%減りましたが、今年に入っても、更に12%減少しており、世界的な需要の低迷が長期化するリスクをはらんでいます」

 等々、言っていることは世界経済がリーマンショックに匹敵する経済危機を孕んでいて、それが長期化・深刻化する恐れがあると把えている(「新興国の経済に、大きな打撃を与えています」、「今年の見通しも、どんどん下方修正されています」、「世界的な需要の低迷が長期化するリスクをはらんでいます」)と言うことであって、にも関わらず、5月30日開催の自民党役員会では異なることを発言している

 安倍晋三「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである。中国など新興国経済をめぐるいくつかの重要な指標で、リーマンショック以来の落ち込みをみせているとの事実を説明した」(ロイター) 

 「リーマンショック以来の落ち込みの事実」だけではなく、その長期化・深刻化を予想している以上、現在が「リーマンショック前の状況に似ているとの認識」になるはずだ。

 ウソつきもいいとこである。

 要するに世界経済が付き纏わせている不透明感の最大の懸念となっている「中国など新興国経済の『陰り』」が長期化・深刻化するリスクを予想しているからこそ、その予想に備えて消費税増税を再延期することにしたと言うことであるはずだ。

 だが、中国は2003年から続く「中国特需」によってデフレに喘ぐ日本の経済をどうにか支え、2008年のリーマンショックによって日本や欧米先進国の景気が一気に悪化した当時、2007年GDP14.0%から下がったものの、9.6%を維持、世界経済の下支えの役目を果たし、なおかつ2010年には日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国となっている。

 つまり中国は当時の世界経済の悪化にさしたる影響を受けない自律性を本質のところで確保していた。

 だが、安倍晋三は世界経済が不透明となっているという理由のみで、それが経済危機というリスクとなって表面化してもいないのに、表面化した場合の危険性に前以て備えて消費税増税を再延期しなければならない。

 世界経済が不透明であるにも関わらず米経済が堅調さを保っていることと併せて考えると、如何にアベノミクスが世界の経済状況に簡単に影響を受ける非自律的な経済政策であるかを証明して余りある。

 非自律的である以上、実質賃金が伸びず、個人消費が低迷している状況に反していくら各種経済指標が上向いていても、さしたる意味はない。世界経済の悪化に対して簡単に壊れるガラスの経済政策を元々の性格としていることからの実質賃金や個人消費の芳しくない実態ということでもあるはずだ。

 要するに「中国など新興国経済の『陰り』」や世界経済の不透明感を消費税増税再延期の理由とする正当性はどこにもないということであり、そのようなことは自己都合の口実でしかなく、ではどこに正当性を見るかというと、参議院選挙を除いて他にはない。

 このことは何年何月と消費税増税のスケジュールが決まっていたことに対して多額の国家予算を投じて景気回復策を打っていながら、実質賃金を上げることもできないし、個人消費を伸ばすこともできないでいることも証明する事実であろう。

 安倍晋三は2017年4月1日に予定していた消費税の8%から10%への増税の延期を宣言した2014年11月21日の記者会見では衆議院解散について次のように述べている。

 安倍晋三「本日、衆議院を解散いたしました。この解散は、『アベノミクス解散』であります。アベノミクスを前に進めるのか、それとも止めてしまうのか。それを問う選挙であります。連日、野党は、アベノミクスは失敗した、批判ばかりを繰り返しています。私は、今回の選挙戦を通じて、私たちの経済政策が間違っているのか、正しいのか、本当に他に選択肢はあるのか、国民の皆様に伺いたいと思います」

 そして今回の2019年10月までの増税再延期を伝えた記者会見。

 安倍晋三「アベノミクスをもっと加速するのか、それとも後戻りするのか。これが来る参議院選挙の最大の争点であります」

 衆議院選挙を前にした記者会見でも 今回の参議院選挙を前にした記者会見でも、自分に都合のいい口実をつけた消費税増税延期を釣り針の餌にしてアベノミクスを問う選挙だとすることで、あるいはそれが最大の争点の選挙だとすることで、如何にも消費税増税を延期すればアベノミクスの成果を上げることができると思わせている。

 この思わせは国民の消費税増税延期を歓迎する空気、裏返すと消費税増税に対する忌避感を利用した選挙対策でもあるはずだ。

 5月28、29両日実施の共同通信の世論調査。増税再延期に70%もつけ、内閣支持率も一挙に7ポイントも上げて55.3%にも達している。

 だが、2014年11月21日の衆議院選挙を前にした記者会見で、延期すればさもアベノミクスが成功すると思わせたものの、実質的には成功していないことを忘れてはならない。


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