安倍晋三の口程にもない中国公船領海侵犯野放しの結末が今回の中国海軍艦艇尖閣沖接続水域航行

2016-06-10 09:18:17 | 政治

 6月8日午後9時50分頃、ロシア海軍の駆逐艦等3隻が尖閣諸島周辺の日本領海外側の接続水域を航行、2時間15分程航行を続けて6月9日午前3時5分頃、接続水域から出たという。

 ところが6月9日午前0時50分頃、中国海軍のフリゲート艦が同じ接続水域の別の場所に入り、2時間20分に亘って航行、午前3時10分頃、接続水域外に出たという。

 中国海警局の船が尖閣諸島周辺海域の日本の領海に侵入もしくは接続水域を航行することは過去何度もあるが、中国海軍の艦艇が接続水域に入ったことが確認されたのは、これが初めてだという。

 ロシア軍艦が接続水域を航行するのは初めてではないが、中国海軍艦艇の接続水域航行と一時的に時間が重なった重複行動は偶然なのだろうか、示し合わせた行動なのだろうか。

 ロシアの中国が主張する尖閣諸島領有権への支持の見返りに対する中国のロシアの北方四島領有権への支持という相互要請が合意に達したことの一つの具体的デモンストレーションということもあり得る。

 安倍晋三はプーチンとの首脳会談を第1次安倍内閣から数えて13回、第2次安倍内閣だけで10回も繰返し行い、プーチンとの信頼関係を誇示しているが、プーチンの方は何とも思っていないようだ。

 口先だけが取り柄の安倍晋三といったところだが。

 斎木外務省事務次官が9日午前2時頃、中国の程永華駐日大使を外務省に呼び、「尖閣諸島は日本固有の領土であり、海軍の艦艇が接続水域に入ったことは極めて遺憾だ」として抗議するとともに、速やかに接続水域の外に出るよう求めたのに対して程大使は尖閣諸島は中国の領土で抗議は受け入れられないという考えを伝えたうえで、「中国としても、緊張が高まることは避けるべきだと考えており、抗議があったことは本国に伝える」と述べたと「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 中国が南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島に造成した人工島問題を巡って日本とアメリカは航行の自由と力による現状変更反対の姿勢を掲げて中国を牽制、中国との間に緊張が高まっている。

 そういった状況下での中露艦船の接続水域への堂々の入場行進である。接続水域が、〈領海の基線からその外側24海里(約44km)の線までの海域(領海を除く)で、沿岸国が領土・領海の通関上、財政上、出入国管理上(密輸入や密入国)、衛生上(伝染病等)の法令違反の防止及び違反処罰のために必要な規制をすることが認められた(公海上の)水域〉(海上保安庁)であったとしても、放っておくわけにはいかなったのだろう。
 
 公海の一部だからロシアには抗議しなかったマスコミは伝えているが、安倍晋三は6月9日夜、中国艦船の接続水域航行に関しては国家安全保障会議(NSC)の関係閣僚会合を開いて、中国への対応を協議したほか、東シナ海で米国と連携して対応する方針を確認。首相は「警戒監視に万全を期してほしい」と指示した(「日経電子版」)という。

 だが、公海の一部でありながら、中国海軍艦船の航行を重大視したのは次の事態を想定したからなのは誰の目にも明らかである。

 次の事態とは断るまでもなく中国海軍艦船の尖閣沖周辺の日本領海への侵犯である。

 上記「日経電子版」は国家安全保障会議席上での自衛隊制服組トップの発言を伝えている。

 河野克俊統合幕僚長(中国艦船が今後、領海に入った場合の対応について)「そういう事態にならないようにしたい。万が一そうなった場合は、それ相応の対応はする」

 次の事態として中国海軍艦船の日本領海への侵犯を想定しているからこその発言である。

 だが、中国海軍艦船の接続水域航行を次の事態として日本領海への侵犯を想定しなければならないということは、侵犯を過去の事例としていなければならない。

 中国海軍艦船の尖閣沖周辺の日本領海の侵犯の例は存在しないが、中国海警局(海上保安機関)の船が頻繁に日本の領海侵犯を繰返している。5月30日も中国海警局の船が今年14日目となる領海侵犯を侵したと思ったなら、9日後に続いて今年15日目となる領海侵犯を6月8日に侵している。

 回数を日数で数えるのは、同じ船が領海を出たり入ったりするからで、述べ回数で言うともっと多くなる。

 尖閣諸島が民主党政権によって国有化された2012年9月11日以降、それまで述べ回数で数回だった領海侵犯が一挙に跳ね上がって、多い月で30回近くにも上ったが、最近は述べ回数10回以下に落ち着いてた。

 だが、中国の人工島問題を巡って最近緊張が高まっているせいか、5月だけで述べ回数11回も領海侵犯を受け、国有化以降、述べ回数総合計で500回以上を記録している。

 これ程までにも領海侵犯を自由に野放しにする主権国家は世界に存在するだろうか。

 野放しにしてきた結果、公海の一部で自由に航行できる接続水域を中国海軍艦船が航行しただけで、エスカレートしていく事態――日本領海への侵犯を想定しなければならない。

 野放しにせず、主権国家にふさわしい厳しい対応のもと、領海侵犯をゼロにしていたなら、領海侵犯を想定せずとも済んだはずだ。

 その責任が安倍晋三にはあったはずだ。

 2013年3月7日の衆議院予算委員会。文飾は当方

 萩生田光一「私は、新聞ですとか週刊誌の記事をもとに質疑をすることは本意ではないんですが、また、今さら民主党政権下の非をあげつらうつもりは全くございませんけれども、事安全保障の問題ですので、あえて触れておきたいと思います。

 一昨日、産経新聞の一面に驚くべき記事が載りました。
 
 昨年9月の尖閣諸島の国有化後、挑発を繰り返す中国海軍の艦船に、一つ目、海自は15海里、約28キロの距離を置いて近づかないようにというふうに求められた。

 二つ目、他国軍の艦船の領海侵犯に備えるためには先回りして領海内で待ち構えるのが常套手段なんですが、それも自制をせよ、こう言われた。

 そして三つ目、海洋監視船はヘリを搭載可能で、ヘリが飛び立てば即領空侵犯になるので空自のスクランブルの必要性がある、こういう議論をしていたんだけれども、当時の岡田副総理は、軽微な領海侵犯だから中国を刺激するな、海上保安庁に任せればいいと準備を認めなかったという記述であります。

 先日、レーダー照射の事案で、民主党の委員は、政府の対応を遅いと断じ、中国海軍の解説までしていただき、問題意識をもっと高く持つようにと促しておりましたけれども、もしこの記事が事実とすれば、民主党政権時代の間違ったメッセージがもたらした当然の結果と言えます。

 政府は、本件について事実を確認しているのでしょうか。また、安倍内閣にかわり、これらの対応は具体的にどのように変わったのか。お尋ねいたします」

 安倍晋三「尖閣諸島周辺海域において中国公船による領海侵入が繰り返されている等、我が国を取り巻く情勢は厳しさを増しています。

 このため、海上保安庁において、大型巡視船の新規建造や海上保安官の大幅な増員などにより専従の警備体制を確立し、その体制を強化するとともに、自衛隊の艦艇、航空機等を用いた警戒監視と適切に連携するなどして、その警戒警備に、現在、万全を期しているところであります。

 そして、今委員が御指摘になられたこの警戒警備の状況については、前政権のこととはいえ、我が方の手のうちにかかわることでございますので、詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、あえて一言申し上げさせていただければ、前政権下においては、過度に軋轢を恐れる余り、我が国の領土、領海、領空を侵す行為に対し当然行うべき警戒警備についても、その手法に極度の縛りがかけられていたというふうに私は承知をしております。

 このことは、相手方に対して誤ったメッセージを送ることにもなり、かえって不測の事態を招く結果になることすらある、私はそう判断をしたわけでございまして、安倍内閣を発足させた直後から、この危機的な状況を突破するために、前政権の方針を根本から見直しを行いました。そして、冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示したところでございます。


 今後とも、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという決意のもとに、引き続きしっかりと警備、警戒を行っていく考えであります」――

 萩生田光一は安倍晋三の腰巾着だから、民主党政権を批判するために示し合わせて質問と答弁を前以て用意し、田舎芝居を打った一幕といったところなのだろう。

 だが、安倍晋三は一国のリーダーとして「相手方に対して誤ったメッセージを送ることに」なる民主党政権の「極度の縛りがかけられていた」尖閣諸島周辺海域の対中国対応を「根本から見直し」「冷静かつ毅然とした対応を行う方針を示した」と力強く宣言した。

 このように4年前に民主党政権の対応を貶(けな)して、民主党政権の二の舞いは演じないと反面教師とすることを約束した。

 だが、一向に領海侵犯はなくならない。この継続性は侵犯に対して野放し状態にしていることと無縁ではないはずだ。

 その結果、中国海軍の艦船が公海の一部である接続水域を一度航行しただけで、次の事態として日本領海への侵犯にエスカレートしていくことを想定しなければならなくなり、国家安全保障会議まで開くことになった。

 だとすると、遠因は安倍晋三が2013年3月7日の衆議院予算委員会で約束した「冷静かつ毅然とした対応」を行ってこなかったことにあることになる。

 もっとも野放しにすることが安倍晋三にとっては「冷静かつ毅然とした対応」だと言うなら、その続きとして中国海軍の艦船が万が一にも領海侵犯を侵したとしても、野放しにして、それを以て「冷静かつ毅然とした対応」をしたとすればいい。

 中国海軍艦船の接続水域航行がどのような結果からだろうと、この先どのような結果が待ち構えていようと、安倍晋三としては国民や野党の手前、あるいは世界各国に対して国家安全保障会議を開かねければ体裁は取れないから、開いたという側面もあるはずだ。

 中国海軍の艦船の領海侵犯が生じたとしても、中国海警の船の領海侵犯に対するのと同様に何もできないだろうからである。

 何かできるとしたら、既に何かしていたはずだ。

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