安倍政権の日米同盟緊密化至上命題を前にトランプエルサレム米大使館移設に旗幟鮮明ができない対米従属性

2017-12-09 11:58:21 | 政治

 米大統領、歴代最単細胞のトランプが2017年12月〈6日、ホワイトハウスで演説し、「エルサレムをイスラエルの首都と公式に認める時だと判断した」と述べ、商都テルアビブにある米大使館を移転させることを正式に発表した。〉と12月7日付「中日新聞」が報じている。   

 この決定に欧州各国やアジアのイスラム国家はパレスチナを含むイスラム国家とイスラエルとの一段の関係悪化、紛争やテロ誘発の危険性の出来を理由に反対や懸念を示した。

 「コトバンク」から、「エルサレム問題」を纏めてみる。 

 1.パレスチナの中心都市エルサレムはユダヤ教,キリスト教,イスラム教の聖地となっていて、その帰属を巡る問題。
 2.第1次世界大戦後イギリスの委任統治下に入る。
 3.1947年の国連パレスチナ分割決議により国連管理下の国際都市とするよう定められる。
 4.1948年5月14日、イスラエル建国
 5.これにアラブ諸国が反発、軍を動員し、5月15日にパレスチナに侵攻、第1次中東戦争が勃発
 6.戦争の結果、エルサレム市の西半分はイスラエル、旧市を含む東半分はヨルダン領に組入れらることになった。
 7.1950年、イスラエルは西エルサレムを首都と定める。
 8.1967年6月5日勃発の6日戦争 (第3次中東戦争) でイスラエルは東エルサレムを含むパレスチナ全土を占領、統合エルサレム全体を首都と定める。
 9.対してアラブ側は6日戦争の全占領地からのイスラエル軍の撤退要求と東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立を要求。(以上)

 以後、パレスチナ側からの何度かの民衆蜂起(インティファーダ)や衝突が発生、パレスチナとイスラエル間で険悪な硬直状態が続いている。

 米国はイスラエルに於ける大使館設置場所について米議会は1995年に1999年5月31日までに在イスラエル米大使館をテルアビブからエルサレムに移すこととする「エルサレム大使館法」を成立。猶予条件として大統領に対して法律執行を6カ月ごとに延期できると認めている。

 以後、クリントン、ブッシュ、オバマの各政権は米大使館をパレスチナに移設した場合の中東の混乱を恐れて6カ月毎に延期の大統領令に署名、トランプも2016年6月に移転を半年間先送りする文書に署名しているが、昨年の大統領選挙で公約していた移転推進を実行に移すことにしたようだ。

 トランプの決定に対する日本の態度を見てみる。

 「河野太郎記者会見」外務省/2017年12月7日)     

 冒頭発言

 河野太郎「日本時間の7日の午前3時,エルサレムについてトランプ大統領が発表を行いました。我が国はイスラエル・パレスチナの間の紛争の二国家解決を支持しており,エルサレムの最終的地位の問題も含め,これまで累次採択されてきた国連安保理諸決議や,これまでの当事者間の合意などに基づき,当事者間の交渉により解決されるべきとの立場を取っております。

 我が国としては,トランプ大統領が恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントや,二国家解決への支持を表明したことは,評価をしております。又,エルサレム市内の主権の境界線を含む,最終的地位は当事者間の交渉に従わなければならないと明確に認めたことの重要性に深く留意しております。

 しかしながらこの発表を契機として今後の中東和平を巡る状況が厳しさを増したり,また中東全体の情勢が悪化し得ることについて懸念しており,本件の動向については大きな関心を持って,これから注意して参りたいと思っております」

 質疑応答

 記者「アメリカが今回,こういった宣言,トランプ大統領が宣言しましたが,賛成反対というか,どういった態度を日本政府として示されるお考えですか」

 河野太郎「日本は大使館を移動するつもりはございません」
 記者「この問題に関して,関係各国等々と電話会談などで意見を交わしたということはございますでしょうか」

 河野太郎「昨日,サウジアラビアの外務大臣とは電話会談を致しました」(以下略)

 発言に河野太郎の人間性が反映されているのだろう、非常に不誠実、誤魔化しがある。トランプがエルサレムについて発表した内容について一言も触れていない。いくら記者たち全員が理解していたことであったとしても、記者のみを相手にしているわけではない。記者以外の人間が記者会見の模様を目にしたり、耳にするケースもある。

 その上、事実は事実としてその事実を詳細に話す責任がある。その責任を果たさないのだから、不誠実なまでの責任の誤魔化しであろう。

 日本にとって歓迎すべきことだったなら、得々として詳しく喋ったに違いない。裏を返すと、歓迎できないことだから、触れなかった。

 河野太郎は「我が国はイスラエル・パレスチナの間の紛争の二国家解決を支持」しているとし、「当事者間の交渉により解決されるべきとの立場を取っております」と言いながら、このような立場に反するトランプの一方的なエルサレムへの米国大使館移設に関しては賛成も反対も明らかにしない。いわば賛成か反対か、いずれも隠したまま旗幟を鮮明にしないままでいる。

 この誤魔化しは如何ともし難い。

 河野太郎は「発表を契機として今後の中東和平を巡る状況が厳しさを増したり,また中東全体の情勢が悪化し得ることについて懸念」を持ちながら、トランプが「恒久的な和平合意の促進への強固なコミットメントや二国家解決への支持を表明したこと」を「評価」するとし、その「評価」を以ってして手順が逆であることを無視しているばかりか、トランプの大使館移設の決定に賛成なのか、反対なのかも明確に明らかにしない誤魔化しまで働いている。

 いわばパレスチナ国家樹立・二国家共存を言うなら、あるいは「イスラエル・パレスチナ間の紛争の二国家解決の支持」を言うなら、エルサレム市の西半分はイスラエル領、東半分はパレスチナ領とする恒久的な和平合意促進へのコミット以外に方法はないはずだが(パレスチナ、イスラエル双方共にこのことを納得しなければ、紛争や反目、険悪な関係は永遠に続くことになる)、そのような手順を取るべきを、トランプがエルサレム全体をイスラエル領と認めることになる米国大使館の設置を先の手順としていることには何ら態度を明らかにせずに目をつぶっている。

 要するにトランプの決定に賛成した場合は欧州各国やイスラム各国の反発を招くことになって賛成はできない、かと言って反対した場合、トランプのご機嫌を損なう恐れが出てきて、反対もできない。

 そのために河野太郎は自身の不誠実な人間性も相まって誤魔化す内容の、賛成も反対も明確には意思表示しない事勿れ主義の記者会見発言となったということなのだろう。

 この事勿れ主義は12月8日午前の自民党役員連絡会での副総裁高村正彦の発言に如実に象徴されている。

 「産経ニュース」  

 高村正彦「日米同盟は死活的に重要。こういう問題については、和して同ぜずという君子の外交姿勢を貫いていくのがいいのではないか」

 「和して同ぜず」という言葉の実際の意味は「君子は人と協調するが、安易に同調したり雷同したりすることはない」ことの姿勢を指すが、トランプの米大使館移設をこの言葉に当てはめると、死活的に重要な日米同盟への悪影響を慮(おもんばか)って、いわば日米同盟緊密化を至上命題とする余り、「トランプとは協調するが、米大使館エルサレム移設には安易に同調したり雷同したりすることはない」との意味を取ることになる。

 移設に反対や懸念を示している欧州各国やイスラム各国にこの言葉を当てはめると、「このような国々とも協調するが、協調の手前、米大使館エルサレム移設には安易に同調したり雷同したりはしてはいけない」と言っていることになる。

 但しこの両勢力と可能な限り公平に「和す」協調を可能にしようとすると、大使館移設に対する同調・雷同の拒絶は賛成か反対かの態度を限りなく不鮮明にする事勿れな態度を迫られることになる。

 同調・雷同の姿勢を少しでも見せた場合、トランプとはなお一層「和す」ことになるが、欧州各国やイスラム各国との「和」に悪影響を及ぼすことになるからだ。

 トランプの米大使館エルサレム移設に対して賛成か反対か何も言わないとする高村正彦のこの「和して同ぜず」の事勿れ主義が河野太郎の記者会見での同じく旗幟を鮮明にすることができない事勿れ主義と奇しくも一致を見たということなのだろう。同じ安倍政権の人間である。一致は当然と見なければならない。

 安部政権が至上命題としている日米同盟緊密化を前にしてハッキリと賛成か反対かを言うことができない事勿れ主義であるなら、そのまま対米従属の関係にあることを表す。


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