安倍晋三の北朝鮮脅威「国難」をウソにし、トランプに気に入られることを優先の首脳会談前のゴルフと会食

2017-11-06 11:45:49 | 政治

 安倍晋三は2017年9月25日の解散告知の記者会見で国民の信を問う主な二つの問題点を挙げた。  

 安倍晋三「少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、正に国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する。自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく。これがトップである私の責任であり、総理大臣としての私の使命であります。苦しい選挙戦になろうとも、国民の皆様と共にこの国難を乗り越えるため、どうしても今、国民の声を聞かなければならない。そう判断いたしました。

 この解散は、国難突破解散であります。急速に進む少子高齢化を克服し、我が国の未来を開く。北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この国難とも呼ぶべき問題を、私は全身全霊を傾け、国民の皆様と共に突破していく決意であります」――

 「緊迫する北朝鮮情勢」と言っている「緊迫」という言葉の意味は「goo辞書」に「状況などが、非常に差し迫っていること。緊張して、今にも事が起こりそうなこと」と説明づけられている

 安倍晋三は北朝鮮情勢が“緊迫している”と見て、「国難」と位置づけた。差し迫っていない事態を「国難」と呼んだら、安倍晋三はたちまち誇大妄想人間に陥ることになる。

 安倍晋三は自身の「国難」である北朝鮮に対する圧力一辺倒の政策について少子高齢化政策と共に「国民の声を聞かなければならない」、国民の信を問うとして、衆議院を解散、総選挙で圧勝した。

 と言うことは、多くの国民が少子高齢化問題だけではなく、北朝鮮の脅威が差し迫っているという認識を同じくして、安倍晋三と「国難」意識を共有したことになる。

 当然、「国難」と位置づけた差し迫っている北朝鮮の脅威と少子化問題に真正面から取り組まなければならない。但し少子高齢化問題はそれが進行していった場合は将来的には国家の命運に関係してくるが、北朝鮮の脅威のように時と場合に応じて直ちに「国民の命と平和な暮らし」に関係してくるというわけではない。

 だから、安倍晋三は「北朝鮮の脅威に対して、国民の命と平和な暮らしを守り抜く」と断固とした決意を宣言したのだろう。いわば安倍晋三は少子高齢化問題よりも「北朝鮮の脅威」をより差し迫った「国難」と見ていたし、安倍自民党に1票を投じた多くの国民もそう見ていた。

 トランプも北朝鮮金正恩独裁体制によるミサイル開発・核開発を米国の国家安全保障上の重大脅威と見ている。その阻止のために「テーブル上にあらゆる選択肢がある」と軍事行動も辞さない構えでいる。

 11月2日(2017年)付「NHK NEWS WEB」がアメリカ議会調査局が政権の方針とは関係なく議員の参考資料として考えられる、北朝鮮への経済的・外交的な圧力強化の一方でアメリカが今後取り得る7つの選択肢を挙げた報告書を纏めたと伝えている。  

 軍の活動や配置は大きく変えない「現状維持」
 韓国への部隊増派と核兵器再配備による「抑止力強化」
 北朝鮮発射弾道ミサイル迎撃を手段としたミサイル性能の向上阻止
 アメリカ本土に届くICBM=大陸間弾道ミサイルの施設を狙った限定攻撃
 核関連施設なども対象にした大規模な攻撃
 北朝鮮の政権転覆
 北朝鮮の非核化とひき換えに「韓国からのアメリカ軍の撤退」

 記事は北朝鮮の政権転覆はトランプ政権は否定していると解説している。この7つの選択肢が政権の方針に関係なくても、トランプが軍事行動を辞さないとしている以上、参考にしない保証はないだけではなく、議員の参考資料を目的にしていることから、トランプ政権だけではなく、議会も北朝鮮の動向がアメリカの国家安全保障上の重大な脅威と見ている点で足並みを揃えていることを示す。

 このように北朝鮮のミサイル開発・核開発を米国の安全保障上の重大な脅威と見るトランプが来日し、同じく最近の北朝鮮の動向を日本の安全保障上の差し迫った「国難」と見る安倍晋三と首脳会談を行う。

 首脳会談では日米貿易問題、経済問題も話し合われるが、優先すべきテーマは何しろ日米の国家安全保障上の重大な脅威となっている北朝鮮問題ということになる。

 北朝鮮の金正恩も日米首脳会談で何が話し合われるのか、日米の今後の行動を占う材料にするために注目していたはずだ。

 ところが首脳会談で北朝鮮問題を話し合うよりもプロゴルファーの松山英樹を交えたトランプと安倍晋三の日米首脳ゴルフを優先させた。「時事ドットコム」の「首相動静」によると開始が10月5日午後12時49分、終了が午後2時43分、約2時間プレーを愉しんでいる。

 夜は7時42分から9時5分までの約2時間、東京・銀座の鉄板焼き店で会食をしている。

 トランプのことは措いておこう。多くの国民と北朝鮮の脅威を共有し、「国難」意識を共有することで選挙に圧勝していながら、あるいは「国難」とした朝鮮の脅威を訴えることで国民の信を圧倒的に得ていながら、先ずは首脳会談をいの一番に開いて、その脅威「国難」を如何に取り除くか、「国民の命と平和な暮らしを守り抜く」ことができるか話し合うべきを、いの一番にゴルフを愉しんだ。

 一般的には重要な話し合いを無事にこなして肩の荷を降ろしてから、打ち上げの意味でゴルフや会食をするのが通例となっているが、国家安全保障上の重要な課題についての議論を後回しとした。

 信頼関係を結ぶのも重要なことだという言い訳は許されない。安倍晋三にしてもトランプにしても「国民の命と平和な暮らし」背負っているのである。そのことを忘れずにいたなら、先ずは首脳会談から入って、国家の安全保障上の重大な脅威となっていると見做している以上、最初に北朝鮮問題を話し合ったはずだ。

 安倍晋三のゴルフ終了後の午後3時半頃にヘリコプターで総理大臣官邸に戻った際の対記者団発言を11月5日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。     

 安倍晋三「お天気も本当によくて、クラブの皆さんにも温かい歓迎をしていただき、トランプ大統領にも大変楽しんでいただいたのではないか。私も本当に楽しいひとときを過ごすことができた。

 ゴルフ場では、ゴルフのプレー中ならではの会話も弾んだ。ゴルフ場であればお互いにリラックスして本音の話ができるということもあるので、様々な難しい話題も時々、織り交ぜながら、ゆっくりと突っ込んだ話ができた」

 「ゴルフ場であればお互いにリラックスして本音の話ができる」と言っていることはあくまでもプライベートな話題であるはずである。なぜなら、北朝鮮問題は「リラックスして本音」をぶっつけ合っていい類いの脅威ではないし、「国難」でもないはずだからだ。

 その程度の脅威、「国難」であるなら、衆議院を解散して国民に信を問う必要はない。

 その一方で、「様々な難しい話題も時々、織り交ぜながら、ゆっくりと突っ込んだ話ができた」と単にゴルフを愉しんだだけではない、政治関係の話題を交わしたと打ち明けている。

 ゴルフのプレーをしながら、「時々、織り交ぜ」た程度の「様々な難しい話題」について「ゆっくりと突っ込んだ話ができた」と、それが政治向きの話であったとしても、その話題の中に北朝鮮問題含まれていないはずだ。

 「時々、織り交ぜ」た程度で「ゆっくりと突っ込んだ話」ができる脅威、「国難」と位置づけているわけではないだろうからである。

 要するに安倍晋三とトランプがコルフを愉しみながら交わした話題が各国首脳のゴシップ、その他であったり、その中に時折り政治向きの話題を混ぜていたとしても、北朝鮮問題を取り上げていたとしたら、非常に不謹慎極まりないことになる。

 北朝鮮の動向を国家安全保障上の脅威、「国難」と位置づけ、その認識を多くの国民と共有しながら、日米共通の難題として首脳会談で話し合う前にゴルフを愉しむことを優先させたこと自体、それが不謹慎なことではないとするなら、北朝鮮の脅威を「国難」としたことをウソにして、単に選挙用の戦術に過ぎなかったことを暴露することになるばかりか、そうである以上、ゴルフ好きのトランプの気に入られることを優先させた首脳会談に先んじたゴルフということであるはずだ。

 いや、ウソではない、正真正銘の事実だとするなら、逆に首脳会談よりもゴルフを先に行ったことは不謹慎極まりないとしなければならない。
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安倍晋三の4年間の「今世紀最高水準の賃上げ」続行から“特に”介護職置き去りの経済界賃上げ要請

2017-11-05 11:32:46 | 政治

 議長が安倍晋三の政府経済財政諮問会議が10月26日(2017年)開かれて、3%の賃上げを経済界に要請した。この賃上げ要請は5年連続となっている。

 安倍晋三の要請によって賃上げが実現していると言うことは裏を返すと、アベノミクスが賃上げに自律的な実効性を持ち得ていない証明としかならないことを示していることになる。当然、安倍晋三が盛んに宣伝していたアベノミクスの好循環は賃上げがその重要な一機能に位置づけられいた関係から、強制という力学によってどうにか動いていたことになり、要請がなくなればたちまち回転にブレーキがかかる好循環を正体としていることになる。

 「経済財政諮問会議」での安倍晋三の発言から、社会保障費と賃上げに触れている箇所を取り上げてみる。      

 安倍晋三安倍内閣では、これまでアベノミクスを進めることで財政健全化に大きな道筋をつけてきました。税収が伸びたことで新規国債発行額を10兆円減らし、また、社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制するなど歳出削減努力を積み重ねてまいりました。

        ・・・・・・・・・・

 次に賃上げについて議論しました。

 この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています。また、安倍内閣では、最低賃金をこの4年間で100円引き上げました。パートで働く方々の時給も過去最高となっています。こうした流れを更に力強く持続的なものとしていかなければなりません。

 民間議員からも指摘がありましたが、賃上げはもはや企業に対する社会的要請だといえます。来春の労使交渉においては、生産性革命をしっかり進める中で3%の賃上げが実現するよう期待したい。経済界におかれては前向きな取組を是非ともお願いしたいと思います」――

 「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」と「今世紀」という形容詞をつけて、かつてない特段の事実であることを誇っているが、いくら「今世紀最高水準の賃上げ」だとしても、「今世紀最高水準」どころか、遥か低水準の個人消費を最終結果としているようでは「今世紀最高水準の賃上げ」は何ら意味を持たないことになるにも関わらず、安倍晋三は相変わらず不都合な事実には触れない。

 個人消費が活発な動きを見せないから、5年も連続の賃上げ要請となっていると言うことでもあるはずだ。

 4年間連続の「今世紀最高水準の賃上げ」を誇ると同時に「社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制」したと自らの3年連続の歳出削減努力を素晴らしいこととして誇示している。

 10月26日の政府経済財政諮問会議から8日後の2017年11月3日付のマスコミが介護職員の組合「日本介護クラフトユニオン」の「2017年度就業意識実態調査」待遇調査を紹介していたので、直接アクセスして見た。   

 調査実施期間は3~4月。調査対象は介護施設などで働く組合員計4277人。月給制職員1854人と時給制職員1002人が回答(三つまで回答可)。上位順に見てみる。

                月給制職員     時給制職員
 「働く上での不満」
 
 「ある」             79.7%      60.0%
 「ない」             16.8%      34.1%

 「不満の理由」

 「賃金が安い」           56.3%      50.1%
 「仕事量が多い」          34.9%      21.0%
 「何年経っても賃金が上がらない」30.6%      27.8%
 「昇給システムが明確ではない」 18.2%      14.1%
 「連休が取りにくい」         22.3%       15.3%
 「有給休暇が取れない」       13.8%       8.2%
 
 介護職員の待遇意識には安倍晋三が誇りを持って口にしている「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」という状況は些かも届いていない。

 介護職員の常勤と非常勤(時給)を合わせた平均月収は全産業の平均月収と比較して10万円前後低い21万円前後だと言われている。但し常勤と非常勤(時給)との格差もあるから、常勤の給与はかなり上となる。

 「平成28年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」厚労省)を見てみる。    

 非常勤(時給)の平成28年9月の平均月収96,080円(前年同月比2,400円)
 常勤の平成28年9月の平均月収179,680円(前年同月比2,790円)

 非常勤(時給)の場合、主婦で家計の足しにしているというケースが多いと見られるが、常勤で男子の場合、例え共働きであったとしても、男子個人の平均月収が179,680円は低過ぎる。

 より問題なのは、「連休が取りにくい」、「有給休暇が取れない」という状況は「仕事量が多い」ことと関係していて、「賃金が安い」、「何年経っても賃金が上がらない」といった不十分な賃金状況が原因して人手が集まらない、あるいは勤めても、離職者が多いことの悪循環としてある悪条件の数々であって、これらの悪条件が人間としての扱いを満足に与えていない職場環境にある、あるいは生活環境にあるということであろう。

 “特に”介護職員のこのような賃金格差・待遇格差を見ると、安倍晋三が言っている「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いています」という状況から介護職を完璧に置き去りにしていることになる。

 “特に”と引用符を付けて強調したのは介護職にとどまらずに大企業従業員と中小企業職員の間、あるいは正規従業員と非正規従業員の間の賃金格差が厳然と存在していて、置き去りにされているのは介護職だけではないからだ。

 格差自体が、様々な政策で手を打っているように見えるが、それら政策が実効性を持たずに社会的弱者を置き去りにすることによって成り立つ。「この4年間、今世紀最高水準の賃上げが続いている」賃上げ状況に反して個人消費が活発にならない経済状況にあるということそれ自体が上に挙げたようにアベノミクスの格差を受けて置き去りにされている階級群が多く存在するということの証明でもあるはずだ。

 当然、「社会保障費の伸びを3年連続で5千億円以下に抑制」という歳出削減にしても社会的弱者置き去りの構造を持つことになる。2017年5月26日に成立・2018年4月施行の改正介護保険関連法は単身340万円以上、夫婦463万円以上の年収者の介護の自己負担3割引き上げを方針としていて、一見、高額所得者に対する負担増に見えるが、自己負担3割に耐えられる収入階層であって、人口比率の高い多くの中小所得層が介護や通院の機会を減らしている状況は本質的には社会的弱者置き去りであることに変わりはない。

 そして経済界が安倍晋三の賃上げ要請に応じたとしても、「4年間」そうであったように、今後共置き去りは続くだろう。格差の置き去りである。 
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安倍自民党質問時間議席数割り配分要求は逆に安倍晋三自身の森友・加計疑惑が事実であることを証明する

2017-11-04 11:59:07 | Weblog

 ここに来て安倍自民党が野党優遇の質問時間を見直して議席数割時間配分を要求し出したのは安倍晋三自身が自身に対する森友・加計疑惑の終わりを知らない度重なる散々の追及に懲りたことに対して同じような追及の再現回避が発端となっていたのかもしれない。

 もし第1次安部政権が複数の閣僚の不祥事で野党民主党の激しい追及を受けて内閣支持率は急落、持病の潰瘍性大腸炎を悪化させた原因にもなったのだろう、11カ月の短命となったことも安倍晋三が思い出していたとしたら、森友・加計疑惑以外に数多くの閣僚や自民党議員が女性スキャンダルや不祥事、不適切な問題発言の懲りることのない出来(しゅったい)で野党の追及を受け、内閣支持率に影響してきたことも要因となった野党質問時間の削減が狙いということかもしれない。

 と言うことは、臭い物に蓋が目的ということになる。

 ネットにこれまでの与野党質問時間に関して、〈麻生政権までは「与党4、野党6」、民主党政権で「与党1、野党9」、安倍政権で「与党2、野党8」が慣例〉との記述がある。

 民主党政権で「与党1、野党9」と与党側の質問時間が極端に少ないのは民主党政権で幹事長だった小沢一郎が政府・与党一体で政策決定から政権運営に責任を持つ「政府・与党一元化」論を掲げていた手前、既に与党自体が政府と対等に政策決定に関わっていて政策やその狙いに熟知していることから、小沢一郎の「国会は政府と野党の議論の場」という考えが導き出されたのだろう、そのことが影響していたのかもしれない。

 尤も与党の政府の政策決定への関与は自民党も同じである。党大会・両院議員総会に次ぐ党の意思決定機関であり、常設機関としては党内最高意思決定機関である自民党総務会は内閣が国会に提出する議案は閣議決定前に総務会で事前承認されることが原則となっていた。

 但し小泉政権と安部政権では政府と党の力関係が政高党低となり、自民党総務会が政府案の単なる承認機関化しているとも言われているが、最終的には政府案通りに承認するにしても、国会提出前に政府案の説明を受けて疑義に対しては質問して熟知する点は変わりはないはずだ。

 まさか中身を検証せずに無条件に承認するわけではあるまい。

 このことは与野党質問時間割変更に反対の石破茂の言葉が証明している。

 石破茂「与党は、法案や予算案を国会に提出する前に、政府と散々やり取りしており、その分は割り引いて考えないとフェアではない。議席数に見合った配分というのは、議論として成り立たないのではないか。いかにして野党を立てるのかが大事だ」(NHK NEWS WEB

 政府案を与党内で事前に熟知し、承認を与えているから、国会質問では政府案をヨイショする、あるいは勢いその素晴らしさを宣伝するだけの発言となり、答弁に立つ大臣もヨイショに答えるだけ、宣伝に応じるだけの馴れ合いの遣り取りとなる。

 要するに政府案の是非、長所短所、メリット・デメリット等々を国民の前に明らかにする役目は与党ではなく、野党が負っていることになる。

 勿論、政府提出の法案だけではない。〈予算委員会の所管事項は予算であるが、予算案の作成と予算の執行は内閣の責任の下で行われるため(日本国憲法第73条)、予算の内容に限らず、広くその執行主体である内閣の政策方針や行政各部の対応、さらには閣僚の資質の問題などが問われることになる。〉(「Wikipedia」)ことから、閣僚の不正行為や女性問題等のスキャンダル、問題発言等の事実関係の追及、事実関係に応じた閣僚の資質の追及にしても、与党という身内ではない野党が負っていて、その資質の適・不適格性を国民の前に明らかにする責任がある。

 また、首相が党代表を兼ねていることから、党議員に対する監督責任を有している以上、党所属議員の不正行為や女性問題等のスキャンダル、問題発言等の事実関係の追及、事実関係に応じた党議員の資質の追及も同じく野党議員でなければできない責任となる。

 安倍晋三夫人安倍昭恵の存在が官僚の忖度を誘発して森友学園に対する国有地格安売却に繋がったのではないかという疑惑、安倍晋三の30年来の腹心の友加計孝太郎に対する便宜によって加計学園獣医学部新設が認可されたのではないかという疑惑も持ち上がっている。

 これらを纏めて、政権監視の役目は野党が握っているということである。人間集団は身内に甘い。不正行為に対して目をつぶったり、なあ、なあの馴れ合いで許したり、隠し立てしたりする。政権監視の役目は与党に相応しくなく、与党では厳格に負うことはできない。

 政権監視の役目を野党こそが握っていることから、質問時間が与党対野党比で野党により多く振り分ける慣例となっているはずである。その慣例を破って議席数に応じた割合で配分するということは、野党の政権監視の役目を弱めて、その分、政府の身内である与党に引き渡すということを意味する。

 まるで警察が犯罪監視の役目を放棄して逮捕した犯罪者を犯罪者の仲間に引き渡して、その犯罪者を監視してくれと依頼するようなものであって、質問時間を決めるのは国会の役目で、政府は関係していないという立場を取っているが、安倍晋三の意図が働いている安部政権の少しでも臭い物に蓋をしようとする、いわば野党の政権監視の機会を少しでも殺ごうとする魂胆以外に見て取ることはできない。

 国会の質疑応答自体が与党・野党・政府全体が行う国民に対する説明そのものであって、与党に任せることができない野党の政権監視は政府側の責任としてある国民に対する説明を間接的に生み出す役割を兼ねる。

 10月30日午前の記者会見。

 菅義偉「政府としてのコメントは控えたいが、国会議員はそれぞれ国民の負託を得て当選してきており、等しく質問できるよう各会派の議席数に応じた質問時間の配分を行うことは、国民からすれば、もっともな意見であると考える。

 現に参議院ではそれに近い時間割で行っているのではないか。全体の質問時間を考慮する中で、国会でよく検討されるべきだと思う」(NHK NEWS WEB)    

 確かに「国会議員はそれぞれ国民の負託を得て当選してきている」。だからと言って、質問時間を議員数で機械的に割って平等な質問の機会を与えるべきだという質問機会平等論は一見、尤もらしい正当性を与えるが、与党承認を経た政府案の決定過程や野党の政権監視の役割を無視している点、決して正当性ある機会平等論とはならない。

 特に野党がその殆どを負っている政権監視の役割とその役割を果たすことで政府側の国民に対する説明とその責任を間接的に生み出すことになる役割を無視して野党の質問時間を削るということはそれぞれの役割を弱めることに他ならない。

 当然、政府・与党側の臭い物に蓋の役に立つことになる。

 安倍内閣のナンバー2の菅義偉自身が臭い物に蓋の意図を持って質問機会平等論を唱えた。この意図は安倍晋三の指示を受けたそれであって、安倍晋三自身の臭い物に蓋の意図が自民党を介して発動されることになった議席数に応じた質問時間割り振りの要求ということになる。

 安倍晋三自身が野党の質問時間を削ることで政権監視の役割を弱めてまでして臭い物に蓋の意図を働かせているということは、安倍晋三自身の森友・加計疑惑がタダの疑惑ではなく、逆に事実であることを証明することになる。
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安倍晋三の傲慢さを紙一重ウラに隠した自信過剰は“謙虚”と“丁寧”を上辺だけの心がけに過ぎないと暴露

2017-11-03 12:10:51 | 政治

 安倍晋三は特定秘密保護法、共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案、集団的自衛権の憲法解釈行使容認を含む新安保法制等々の国民世論の反対が優勢、あるいは拮抗する諸政策の国会審議に関して常々「丁寧な説明を心掛ける」をキャッチフレーズとしてきた。

 だが、最後は数の力を駆使、法案を力づくで成立させてきた。

 森友学園忖度疑惑・加計学園政治関与の両疑惑を受けて内閣支持率が急激に低下すると、再び「丁寧な説明」を持ち出した。“丁寧”と“謙虚”は相互対応し合う心がけを示す。心がけとしての丁寧さは謙虚を心がけとしていることによって可能となるし、謙虚さは丁寧な姿勢を常に心がけていなければ、心身共に姿勢とすることはできない。

 2017年7月24日の加計学園衆議院閉会中審査。文飾は当方。

 安倍晋三「李下に冠を正さずという言葉があります。私の友人がかかわることでありますから、国民の皆様から疑念の目が向けられることはもっともなことであります。

 思い返しますと、私の今までの答弁においてその観点が欠けていた、足らざる点があったことは率直に認めなければならないと思います。常に国民目線に立ち、丁寧な上にも丁寧に説明を重ねる努力を続けていきたい、改めてその思いを胸に刻み、今この場に立っております」

 2017年7月25日の加計学園参議院閉会中審査。

 安倍晋三「まだ多くの国民の皆様に御納得いただいていないのは事実でございますので、事実に我々は基づいて丁寧に説明を続けていきたいと、このように考えております。

    ・・・・・・・・・・

 今までの政府における説明に対して国民の皆様から十分な御納得が得られていないということは十分に承知をしております。

 昨日、私といたしましても、事実に基づいて丁寧に説明をさせていただいたところでございますが、国民の皆様がどのように判断されるかということについてはまさに国民の皆様が判断されることであり、そのことについては真摯に受け止めたいと、このように考えております」

 自身の丁寧な説明に対して、「国民の皆様がどのように判断されるかということについてはまさに国民の皆様が判断されることであり、そのことについては真摯に受け止めたいと、このように考えております」の発言には一種の開き直りを窺うことができる。

 森友・加計疑惑で受けた内閣支持率低下が北朝鮮問題で一時回復したが、再び低下したにも関わらず、2017年10月22日投開票の祝儀委員議員選挙で安倍自民党は圧勝することになった。

 安倍晋三が衆議院選挙の結果を受けて自民党総裁として自民党本部で行った2017年10月23日「記者会見」(自民党/2017年10月23日)      

 安倍晋三「総選挙において、我が党が、3回連続で、過半数の議席を頂いたのは、ほぼ半世紀ぶり。同じ総裁のもとで、3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年余りの歴史の中で、初めてのことであります。

 であるからこそ、謙虚に、政策を進めていかなければならない。本当に身の引き締まる思いであります。私自身、その責任の重さを、深く噛みしめております」

 安倍晋三は「我が党が、3回連続で、過半数の議席を頂いたのは、ほぼ半世紀ぶり」、「同じ総裁のもとで、3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年余りの歴史の中で、初めてのこと」と自身の功績を優れた記録として最初に誇っている。

 その後で心がけとしての「謙虚」という言葉を持ち出している。

 もし事実、国民の声に耳を傾けて政策立案と国会審議、成立した政策の実行に「謙虚」な姿勢で臨む心がけでいたなら、他の誰もが成し得なかった、自身によって打ち立てることができた選挙の勝利の回数と獲得した議席の数を誇るようなことはしないはずだ。

 なぜなら、全てに対して「謙虚」でなければ、ホンモノの「謙虚」とは言えないはずだし、記録に対しても「謙虚」な姿勢を心がけなければならないからだ。

 だが、記録をより重視しているから、自画自賛を先に持ってきて、その後に「謙虚」という言葉を持ってきているはずだ。 

 そして第4次安倍内閣発足後の「記者会見」首相官邸/2017年11月1日)   

 安倍晋三「本日、第98代内閣総理大臣として、引き続きその重責を担うこととなりました。

 まず冒頭、先の総選挙において、これまで3回の中で最も高い得票数によって私たち自由民主党を力強く信任してくださった国民の皆様に対し、改めて厚く御礼を申し上げます

 その負託にしっかりと応えていかなければならない。責任の重さを深く胸に刻み、謙虚な姿勢で自由民主党、公明党の強固な安定した連立基盤の上に、真摯な政権運営に当たってまいります」

 「これまで3回の中で最も高い得票数によって私たち自由民主党を力強く信任してくださった国民の皆様に対し、改めて厚く御礼を申し上げます」との発言は一見、自民党に投票した国民に対する感謝に聞こえるが、政権は自民党に投票した国民だけのためにあるのではない。再度政権を担うことが決定した以上、全ての国民と向き合う義務と責任がありながら、そのことを忘れて、自民党投票の国民のみに顔を向けて感謝し、その感謝を通して、「最も高い得票数」を誇る。

 とてものこと、口にしている「謙虚な姿勢」はホンモノには見えない。

 安倍晋三が謙虚さを忘れて誇っているのは以上のことだけではない。
 
 安倍晋三「国民の皆様の信任を大きな力として、選挙でお約束した政策を一つ一つ実行し、結果を出していく。そのために安倍内閣は本日から早速、全力投球であります。

     ・・・・・・・・・・

 国民の皆様の強い信任を得て、一層、強力な経済政策を展開してまいります。国民の皆様の信任は、強い外交の源泉でもあります。そして、継続こそ力であります」

 選挙前の各マスコミの内閣支持率は50%、あるいは40%を切っている上に支持しないが支持するを3~4%上回る逆転状況にあった。但し自民党に対する政党支持率は常に30%を超えていて、野党は5%台以下で、自民党1強の情勢にあった。

 いわば安倍晋三に対する「強い信任」とするには整合性がいささかズレることになる。このことは10月の「産経・FNN合同世論調査」産経ニュース/2017.10.16 22:30) が如実に証明することになる。

 「安倍晋三内閣を支持するか」
 「支持する」42.5%(9月調査50.3)
 「支持しない」46.3%(40.0)
 「他」     11.2%(9.7)

 《首相の人柄》

 「評価する」47.0%(56.2)
 「評価しない」45.0%(37.7)
 「他」     8.0%(6.1)

 9月調査よりも支持するが7.5ポイント下がり、支持しないが6.3ポイント増えている。人柄に至っては評価するが9.2ポイント下がり、評価しないが8ポイント増加している。

 もし安倍晋三が謙虚な心がけで新たな政権担当に臨む気持でいたなら、安倍晋三お得意の言葉で言うと、このファクト(=事実)に“謙虚”に目を向け、「強い信任」といった言葉は決して口にできないだろう。

 にも関わらず口にするということは「強い信任」を誇っているからこそである。

 ここにも“謙虚”も“丁寧”さも見えてこない。

 先に挙げた「我が党が、3回連続で、過半数の議席を頂いたのは、ほぼ半世紀ぶり」、あるいは「同じ総裁のもとで、3回続けて勝利を得たのは、立党以来60年余りの歴史の中で、初めてのこと」との自画自賛は自身に対する「強い信任」という思いがあるから口をついて出てくる言葉であり、「強い信任」と相互対応した自画自賛の言葉に過ぎない。

 到底、“謙虚”とか、“丁寧”といった心がけを窺うことはできない。逆に傲慢さを紙一重ウラに隠した自己を絶対とする自信過剰しか見て取ることができない。

 冒頭発言終わり近くに次のように発言している。

 安倍晋三「内外の困難な課題が山積する中で、今、求められていることは、一心不乱に政策を前に進め、そして、結果を出すことであります。国民の皆様の支持を大きな力に変えて、ひたすらに仕事に打ち込んでいかなければならない」

 「一心不乱に政策を前に進め」とか、「ひたすらに仕事に打ち込んで」といった言葉は謙虚で丁寧な心がけで国民に向き合い、政権を担当するという趣意となる。

 だが、党総裁として、あるいは首相として自身が選挙で打ち立てた記録を誇り、それを国民の「強い信任」に直結させる傲慢さを見せた後での謙虚で丁寧な心がけに過ぎない。

 上辺だけの心がけと見る他ない。そのうちメッキが剥がれるだろう。
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希望の党惨敗と立憲民主党躍進で見えてきたこと 二つの保守政党は要らないということ

2017-11-02 10:30:09 | 政治

 今回の10月22日投開票の総選挙は安倍自民党の再々度の圧勝で終わったが、野党は明暗を分けた。都議選で一時ブームを起こした小池百合子の「寛容な改革保守」を掲げて新党結成した希望の党は、当初はその人気にあやかって民進党からの合流、その他からの入党希望者が雪崩現象的に続出したが、小池百合子が民進党左派を「排除」という言葉を使って選別を開始すると、小池百合子への人気はメッキが剥がれ、当初からその人気に反して薄かった希望の党に対する有権者の関心はなおのこと薄れていった。

 このことは希望の党が公示前57議席に対して当選50議席、希望の党から左派とされて排除されたうち枝野幸男が結党した立憲民主党が公示前15議席に対して当選55議席の野党第1党に躍り出た選挙結果に現れている。

 だが、この現象自体のみが選挙結果から見えたことではないはずだ。「寛容な改革」を名乗ってはいるが、民進党左派を排除してまでその血筋が「保守」であることを標榜した小池百合子の希望の党が有権者には受け入れられず、排除された民進党左派の立憲民主党が公示前議席の3倍以上の議席を獲得して、野党第1党に躍り出た。

 いわば希望の党と立憲民主党の選挙結果を見る限り、保守が排除されて、左派が受容された。

 尤もこのような結果を迎えるまでに色々な経緯がある。

 小池百合子は10月5日の民進党代表前原誠司との会談後の「対記者団発言」(logmi/2017年10月5日)で選挙後の首相指名は、新生党、日本新党、民社党、社会党、公明党等の連立細川護熙内閣の跡を受けた羽田内閣が総辞職、社会党が離脱し、自民党とさきがけを加えて連立を組み、連立の条件だったのだろう、社会党の委員長である村山富市を首班指名して1994年6月30日自社さ連立政権内閣を発足させた例を挙げている。   

 小池百合子「考えてみますと、この首班指名云々のときにこれまで自由民主党の方々は、羽田政権のあと村山政権を担がれたということがございました。こんな形で水と油で手が結ばれたなどということも『首班指名』という言葉で改めて思い出したところでございます」

 要するに小池百合子は希望の党を以ってして自公を過半数割れに追い込む躍進を頭に置いていて、その際は自民党と連立を組むケースも有り得ることを示唆した。

 このことは希望の党が安倍晋三や官房長官菅義偉の選挙区で対立候補を立てているが、自民党内で小池百合子に近い野田聖子や石破茂に対しては立てていないことが「水と油で手が結ぶ」譬えに信憑性を与えて、「ポスト安倍」の連立相手に野田聖子や石破茂を想定しているのではないかと窺わせることになった。

 もし希望の党が自由党と並ぶ保守の政党として成長して連立を組んだ場合、あるいは同じ保守として合流した場合、政策等を競い合う政権交代可能な二大政党制は消滅し、政権を失うことのない安心感から、安倍晋三以上の思い上がり・傲慢が生まれる危険性を抱えることになるだけではなく、同じ保守政党同士ということで、自民党と希望の党がそれぞれに利益を代表する団体・階層が重なって、利益がそれらに偏る危険性まで抱えることになる。

 要するに安倍晋三の上に厚く、下に薄い格差経済政策によって現在がそうであるように中間層以下の中低所得層の利益が置き去りにされる危険性である。

 立憲民主党は中間層の利益を代表することを謳い(政権を獲らなければ実現は不可能だし、政権を獲ったとしても、実現させる能力を発揮できるかどうかは別問題だが)、中間層の再生を訴えている。安倍晋三とは逆の下には厚く、上には薄い比較平等政策と言うことができる。

 その立憲民主党が躍進し、保守を掲げ、自民党との連立をも視野に入れていた希望の党が躍進から取り残されることになった。明らかに二つの保守政党は要らないと言うことであろう。

 政権交代可能な二大政党制とは単に二つの異なる政党が政策を競い合う形で交互に政権を担うことを狙いとしているだけではなく、二大政党のうちの政権を担っている一つの政党が利益を代表する集団・階層の長期政権による利益の偏りを政権交代によって別の党が利益を代表する集団・階層に向けて偏りを是正、それそれの利益をより平均化していくことをも狙いとしている。

 朝日新聞が10月23日、24日(2017年)に行った「世論調査の次の問いに対するの回答にはこの狙いが込められていなければならない。     

 「今回の衆議院選挙で、与党の自民党と公明党は定数の3分の2を超える議席を得ました。あなたは、与党の議席数はちょうどよいと思いますか。多すぎると思いますか。少なすぎると思いますか」
 「ちょうどよい」32%
 「多すぎる」51%
 「少なすぎる」3%
 「その他・答えない」14%

 安倍晋三の国家主義を受けて安倍政権が大企業やカネ持ちの利益を優先的に代表しているために格差が拡大している。このまま円安・株高のアベノミクス経済政策の継続を許したら、格差はなおのこと拡大していくだろう。中間層以下の集団・階層の利益を代表する政党が政権交代を果たしてそれぞれの利益を平均化することが必要となるが、その役を担うべき立憲民主党は野党第1党とは言え、55議席しか獲得していない弱小野党に過ぎない。

 特に安倍晋三のアベノミクスから取り残されている集団・階層に属している国民は政権交代可能な二大政党制とは何を狙いとしているのか、よく考えるべきだろう。
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安倍晋三の単細胞な視野狭窄が言わせた障害者芸術活動支援展覧会での多様性・個性と全日本人の輝きなる幻想

2017-11-01 07:47:08 | 政治

 安倍晋三が10月30日(2017年)午前、東京港区で開かれている障害者の芸術活動支援の展覧会「DIVERSITY IN THE ARTS」に出かけて、絵画や彫刻等を鑑賞したと10月30日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。       

 記事は日本財団が開いていると解説している。「Wikipedia」で調べてみると、公営競技の一つである競艇の収益金を基に海洋船舶関連事業の支援や公益・福祉事業、国際協力事業を主に行なっている公益財団法人と記載されている。前進は戦前、ファシズムと国粋主義を標榜した右翼団体国粋大衆党の総裁として君臨した笹川良一が戦後に創設した財団法人日本船舶振興会である。

 運輸大臣の監督下に置かれて競艇の収益金の中から一定の交付金を受けて、そのカネを造船業界等の振興や公益活動への補助金支給や資金貸付等のカネの配分で戦前から引き継いできた右翼の顔と合わせて権力を得たのだろう、政財界の黒幕との名称で奉られるようになっていた。

 言ってみれば他人のフンドシ(=カネ)で相撲を取って天下の横綱(=権力獲得者)を張ったような人物だったのだろう。

 日本船舶振興会の後身日本財団は笹川良一亡き後、現在はその三男笹川陽平が会長を務めてカネの配分で力を振るっているようだ。「DIVERSITY IN THE ARTS」の「DIVERSITY」は「ダイバーシティ」と発音、「多様性」という意味だそうだ。「芸術に於ける多様性」とでも訳すのだろうか。

 安倍晋三は元SMAPメンバーで展覧会に賛同して絵画を出展した香取慎吾の案内で鑑賞して回ったと記事は書いている。

 安倍晋三「それぞれの多様性、個性を生かしたもの、その感性が芸術として展示されているんだろうなと思った。2020年、東京オリンピック・パラリンピックがある。全ての日本人が輝く日本の姿を世界に示していきたい」

 前段の意味と後段の意味がどう繋がっているのか皆目見当がつかない。確かに障害者であっても、素晴らしい絵を書き、素晴らしい彫刻を彫る。あるいは特定の物事に関して特段の能力を発揮する、あるいは記憶力がハンパでないということもある。そして多くの障害者が健常者に少しでも追いつこうとしているのか、今ある機能全てを使って懸命に生きている。

 障害者という一つの固定観念に閉じ込めて見るのではなく、多様性の中のそれぞれの個と見なければならない。

 だが、多様性を認めない狭苦しい日本の社会となっている。学校でイジメが多いのもイジメる側に多様性を認める心の余裕・寛大さがないからだろう。10月26日付「共同通信47NEWS」記事が、〈文部科学省10月26日公表2016年度問題行動・不登校調査結果で、小学校での暴力行為が2万2847件に上り、前年度から5769件増え、調査が現行方式となってから過去最多を更新したことが分かった。特に児童同士の暴力は4千件以上増え、全体の約7割。年度間に30日以上欠席した不登校の小学生も3568人増の3万1151人で過去最多だった。〉と伝えている。  

 いじめの積極把握方針が暴力行為把握件数増となって現れたということだが、違いを認める多様性への配慮を欠いていることから、つい意地悪なからかいやイタズラを働くことになって、それが往々にしてイジメに発展していく。

 勿論、違いに対して無視しろと言うことではない。無視は多様性の承認とは逆の行為となる。例え一つの教室の中で挨拶もしない相手であっても、違いは違いとしてそれぞれが一個の存在者であることを感じ取っていなければ、多様性の中のそれぞれの個と見ることにはならない。

 自分だけが一個の存在者であるという感覚を持ち得て、気に入らない相手にはそれぞれに違う一個の存在者であると感じることができなければ、そのこと自体が多様性の排除となる。

 同じ日付の同じ内容を扱っている「NHK NEWS WEB」記事が子どもの自殺が平成で過去最多になったとの報道を付け加えていた。      

 前の年より29人増えて244人。確か安倍晋三は第2次安倍政権になって自殺者が減ってきたと自慢していたようだが、少子高齢化の上に子どもの自殺が増えたのでは角を矯めて牛を殺すようなものである。

 勿論、子どもの自殺はイジメだけが原因ではないが、子どもたちの可能性に向けた多様性の扉が常にオープンに開かれている学校社会、家庭であるなら、自分なりの可能性を見い出して自殺とは逆の生きる方向への歩みを取るはずだ。

 今もなお頑固な疾病のように蔓延(はびこ)っている障害者差別にしても、多様性の閉鎖社会となっていることの一つの象徴であろう。盲導犬や聴導犬等の補助犬が建物の中に入るのを断るホテルやレストランも未だに存在するようだ。公益財団法人アイメイト協会が『障害者差解消怯』施行(2016年4月1日)1年を機に2017年2月10日~3月12日に行った差別に関わる「アンケート調査」では有効回答数121人の内(男 64人、女 54人 性別の記入無 3人)のうち、〈法律施行後の2016年4月1日から2017年2月までの期間(10ヵ月間)に、アイメイト(盲導犬)を理由に入店拒否などの差別的な扱いを受けた犬は、全体の6割以上(75人62.0%)にのばった。〉と報告している。
   
 このような差別の状況にあることから、厚労省が公共性を担った医療機関に対しても2013年6月に《身体障害者補助犬ユーザーの受け入れを円滑にするために~医療機関に考慮していただきたいこと~》といった要望書を出すことになったのだろう。   

 かくかように多様性を認めない日本の閉鎖社会を脇に置いて、絵画展の多様性の連想からか、「全ての日本人が輝く日本の姿を世界に示していきたい」との言葉で2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは「全ての日本人が輝く」ことができる多様性を約束するかのように言う。

 「全ての日本人が輝く」については差別の一切ない完璧な多様性を約束しなければならない。例え格差社会を受けて少ない収入で遣り繰りの生活を強いられたとしても、心は豊かに保つことのできる多様性を保証しなければならない。

 だが、貧しい多くの国民は精神的にゆとりのないギスギスした生活を強いられているのが実態となっている。

 安倍晋三がいとも簡単に「全ての日本人が輝く日本の姿を世界に示していきたい」と言うことができるのは、多様性とは逆行する格差社会をせっせと築いていること、あるいは様々な差別が横行する社会を足下に置いていることに向けるだけの目を持たないからだろう。

 だから、障害者の芸術活動支援の展覧会で障害者の多様性や個性に触れて、その一面的事実で以って同じような多様性・個性が日本人全体に保証されているかのようなことを言うことができる。

 様々な差別や多様性排除の閉鎖社会が証明することになる、安倍晋三の単細胞な視野狭窄が言わせた「全ての日本人が輝く」という安請け合いの幻想に過ぎない。
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