ケイの読書日記

個人が書く書評

益田ミリ 「今日の人生」 ミシマ社

2017-10-11 08:59:14 | 益田ミリ
 今、コミックエッセイという一大ジャンルがあるのも、益田ミリさんが頑張ってくれたおかげなのかも、と思う。
 ミリさんは大阪出身で、ノリの良いフレンドリーな人だと思うけど、売れっ子で忙しいのでトラブる事もあるんだろう、こういう記述がある。

 「昔 お世話になったし」にも時効があるのだ と踏ん切りをつけることで その人を憎むまでにはならず が しかし もう二度とどんな頼まれごとも引き受けはしない と決心できることに気づいた今日の人生。  (本文より抜粋)
 
 わたしの わたしの人生に降りかかってくる面倒なできごと すべて作品に昇華してみせると改めて思った今日の人生。  (本文より抜粋)

 ああ、どういった面倒なできごとがあったんだろう?気になるなぁ。今、ミリさんの周辺にいる人って、ほとんど出版関係の人だよね。


 先日読んだ『ナイルパーチの女子会』の中にも、作家と編集者の間の軋轢が書かれていた。
 雑誌の編集者が、人気の主婦ブロガーたちに書籍化の話を持ち掛ける。奥様雑誌に、読者代表・主婦代表のように写真を載せて紹介し、主婦ブロガーたちを競わせるが、少しでもブログのアクセス数が落ちると、手のひらを返すような扱いに。
 雑誌の編集者は、仕事でやってるんだから、友人のように電話をかけてこられても迷惑だというのは理解できるが…。あまりの豹変ぶりに裏切られたと感じる人も多いはず。
 逆に言えば、作家は編集者に恩を感じる必要はないんだろう。


 このミリさんのコミックエッセイには、こういう場面もある。
 心がささくれてウツウツと歩いていたミリさんは、レンタルビデオ屋の前のバルーン人形のベイマックスを触って、少し心が軽くなった。その時、彼女は考える。

 もし わたしが映画『ベイマックス』を観ていなければ あれはただレンタルビデオ屋に飾られているバルーン人形なのです。けれど わたしはベイマックスを知っていて 彼が人を傷つけることを禁じられた優しいロボットであることも知っていたのです。知っていることが わたし自身の助けになった。そういうものが数多くあればあるほど それらが支えとなり 倒れずに済んでいるということも あるのだと思ったのでした。  (本文より抜粋)


 そういえば以前 かなりのダメージを受けた出来事があって そのときは ふと耳にした星野源さんの曲に助けられたのです。
 その曲の歌詞の中に みんなが好きなものが好きでもいい というようなフレーズがあって それがそのときのわたしを ちょっと元気づけてくれたのでした。自分の個性の弱さも 個性のひとつなのかもしれないと。 
 映画や音楽や芝居や そして本を読むことは 自分の世界に「手すり」をつけている そういうことなのかもしれません  (本文より抜粋)


 なるほどね。益田ミリさんのコミックエッセイは、生きる指針になるなぁ、と気付いた、私の今日の人生。

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