日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「ここでしか買えない」ことに価値がある

2007-10-26 19:44:12 | マーケティング
今日、知人から「ポポー」という名前の果物を頂いた。
印象は「黄色いあけび」という感じなのだが、食べると濃厚なカスタードクリームのよう。
調べてみると、「幻の果物」だとか「森のアイスクリーム」、「森の(カスタード)クリーム」と呼ばれているらしい。
戦前は、その高い栄養価などで積極的に栽培されたようなのだが、今は果物として生産されている場所が限られているようだ。
「傷み易い」という理由もあり、なかなか流通しないのだろう。
私が頂いたものは、信州産のポポーだった。

最近のグルメブームで、様々なお土産の銘品が全国の百貨店で、販売されるようになってきた。
今回「製造年月日偽装」で問題になった「赤福」でも、以前は名古屋の特定百貨店か近鉄の売店だけだった。
それが、いつのまにか東京の百貨店でも販売されるようになったのは、冷蔵技術などの発達などによるところが大きいのだろう。
それでも、全国の「老舗」の中には、全国展開を拒否し続ける「お店」がある。

実家のお墓のある松江にある「風月堂」というお菓子屋さんは、「棟方志功の書」がさり気なく飾ってある「老舗・和菓子店」なのだが、百貨店どころか駅のキヨスクにも出していない。
インターネットなどでの販売も、していない(HPすらない)。
販売しているお菓子も「八雲小倉」と「萬寿(まんじゅう)2種」、「カステラ」、「羊羹」「最中」だけ。
夏になると「琥珀糖」というお菓子が増えるのだが、朝作ったお菓子が売り切れたらそれで閉店というお店である。
接客をしてくれる女将さんは、「昔と同じ作り方をしているので、量産できない。常連のお客さんに迷惑をかけると申し訳ないので、お店と電話注文しか受け付けられない」と言っていた。
その代わり、お店に行くたびに「ご主人さんは、元気でしたか?」とか「お子さんも大きくなられましたか」という会話が普通にされる。
最近では、旅行のガイドブックなどで紹介されることも多くなり、以前とは客層も相当変わってきたようなのだが、それでも「お客さん一人ひとりと向き合う」姿勢は、変わっていない。
いずれも日持ちのしないお菓子なので、松江に行かなくては買うことができない。

風月堂の女将さんを見ていると、「無理に全国展開をする必要はないのでは、ないだろうか?」という気がしてくる。
「知名度を上げる」という意味では、全国展開は有効な手段だ。
反面、無理をしてしまう可能性も高い。
それが、今回の「赤福」なのではないだろうか?
「赤福」は、積極的に全国展開をしていた反面、「お伊勢参り」の賑わいを創りだそうとしていた。
「お伊勢参り」=「おかげ横丁」などのように、「そこに行かなくては買えない」という価値を、もっと考えても良いのではないだろうか?

ちなみに、頂いたポポーは4個入り200円程度で、農協の直売所で販売されていたらしい。
だが、馴染みのない果物ということもあり、余り売れていなかったようなのだ。
もし「森のカスタードクリーム、幻の果物・ポポー」というコピーをつけ500円くらいの値段だったら、立ち寄った観光客は興味を引いて買っていたのではないか?と、思うのだが・・・。