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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

衆議院総選挙 分析

2005-09-12 20:40:59 | 国際・政治
 昨日、9月11日の総選挙に関して、小生なりの分析を掲げたい。
 
 結果的に自民党は15年ぶりの単独過半数を達成し、民主党は大きく議席数を削減した。そして民主党は自民党の半数議席を確保する事ができなかったが、第三勢力となる与党の公明党には三倍以上の議席差をつけ、社民・共産・国民新党・新党日本の合計数も民主党にははるか及ばなかった。しかし、民主党の岡田党首は責任を取って職を辞し、鳩山乃至小沢氏が次期党首となる見込みと報道されている。

 自民党の小泉首相は、自信を持って郵政民営化に挑む構えだ。

 さて、
 55年体制の下では、自民党と社会党による二大政党制若しくは1:0.5大政党制がひかれていたのは周知であろう。
 自民党は、特に軽武装・経済発展重視の政策を行った事が、わが国の持続的経済発展を支えたといえよう。同じ西側諸国であり、かつ、日本と同じように冷戦構造の最前線に位置していたドイツでは徴兵期間が二年近くあり、貴重な若年労働力を防衛に多く割いていた点、NATOとの同盟体制に深くコミットしたことで独自の外交体制が行使しにくくなり、ブラント外交以降、ドイツの国力はフランスの外交力に政治的利用されるままであった事が大きな負の要因として作用していた。

 対して、わが国の場合は、革新政党である社会党との協調が自民党の国内政治にとり重要なポテンシャルを占めさせており、密約、若しくは非公式協力の下で合議制をとり日本コーポラティズムと言う事も不可能ではない国内政治を行っていた。

 特に、朝鮮戦争(1950~1953)、ヴェトナム戦争(1963~1975)には米国から日本に対して軍事的支援を要望する動きがあったことは確かであるが、わが国のタテマエとして、一応の勢力を有する『社会党が反対している』、『憲法九条がある』という言い分により、平和を維持する事ができたというのが日本戦後外交史の見方である。

 しかし、55体制の崩壊と、村山内閣の後、社会党が社会民主党となる頃には勢力を完全に失い、自民(西側)社会(東側)という国内政治における冷戦構造も集結してしまったわけだ。
 これにより、日本は『追従外交』と揶揄されるような状況に陥っており、貴重な防衛力を本来の国土防衛ではない任務に提供している。イラク復興人道派遣は、陸上自衛隊に対し実戦的環境の下での戦闘訓練を行わせるまたとない機会となり、事実イラク派遣を契機にわが国の陸上防衛力は質的に大きく向上したといえよう。一方で、インド洋対テロ艦隊派遣は、少ない補給艦(現在、ときわ型3隻、ましゅう型2隻の計5隻)を遠くインド洋に派遣する状態が、海上防衛にこの上ない負担としてのしかかっているのも事実だ。また、弾道ミサイル防衛は米国との共同開発を進めているため、予算は多く掛かり遅々として進まない状況に陥っている。

 国際貢献の主眼が国連安全保障理事会常任理事国への加入が目的とされるが、それに対しては投機的という程の労力が費やされており、55年体制のような独自色が溢れた外交政策が実施できない事は、明らかに社会党(社民党)の衰退によるものであり、加えてその要因が、グローバリゼーションの進展に伴う一国社会福祉政策が事実上不可能となった事である為、今後の再興の見通しは全く無い。

 従って、自民党と民主党による保守二大政党制に移行し、外交政策では若干の温度差、国内政治においてはできるだけ協調、時事的な重要政策によって政権交代が為されるというような状態としなければ、現行の不具合を是正する事は難しいと言えるわけだ。
 同時に、自民党政権にあっては米国から過剰な要求があった場合には『民主党の同意が受けられないので実行不可能だ』、民主党政権では『自民党が首を縦に振らない』というタテマエを展開する事ができるようになり、専ら国益に沿った外交政策も可能となろう。

 結果的に民主党は議席を減らしたが、自民党に対しての第二勢力であり、第一野党としての勢力を有している事に変わりは無く、ゼロサムゲームとして議会を見れば、減ったものの大きな問題ではない(54議席以上の民主党の半分以上の勢力を有する野党が生まれれば群雄割拠確固撃破状態になり問題だが、準自民党の国民新党に自民から議員が流れる可能性は無いし、社民・共産は論外的勢力しかない)。

 大河ドラマの巌流島の決闘や池田屋騒動、屋島の戦いのように日本人は一騎打ちを好む傾向がある。従って、自民党の郵政民営化という決闘状に対して、民主党が子育てや年金と言う逃げを使った事が支持を得られなかった要因といえよう。

 そして、これは本学客員教授であるK教授が仰った内容であるが、『国民に聞こう!』の殺し文句には勝てなかったようだ。首相は歌舞伎が好きなようだが、ただ見ているだけではない点がわかる。

 自民案には、民営化した後にサービスを維持できなかった場合どうするかの規定が無かったわけで、トニー・ブレアのように、授権的民営化、達成目標の決定と失敗時の人事刷新若しくはオプションとして再国有化という代案を盛り込んだ独自の民主党案を制定してマニフェストに大きく掲げれば、自民流郵政民営化VS民主流郵政民営化として台頭に戦えたであろう事を考えると非常に残念で仕方が無い。

 さて、憲法問題であるが、そもそも、ヤルタ体制・東京裁判史観に基づいて書かれた日本国憲法は、“賞味期限切れ”である。しかし、役所は変革を嫌い、革新政党が地方議会や労働組合で大きな勢力を有しているため、変革、もしくは改革に当たる憲法改正が行えないだけである。

 憲法9条改正という点では、自民も民主も同じであり、程度の問題となり次回の衆議院選挙においても再び負ける可能性が生じる。最悪なのは民主党の分裂である。
 憲法9条を改正するために、他の条項(まあよく言われるのが89条とかあとは、95条ですな)を改正するか、24条はどうするのか、1条に皇室典範を盛り込むのか、といった事で二大政党がしのぎを削る事となろうが、個人的には民主党には日本国憲法を維持しつつ、憲法の根幹部分となる改正方法があり、その点を突いてもらいたいように思う訳だ。

 何となれ、政治は常に流動的であり、今後の動静にも注視する必要があろうし、終戦60周年、日露戦争百年の本年には、山積する各種課題に挑まなければならず、有権者として、興味が尽きず、主体的に見て行きたい。

 HARUNA

コメント (2)
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