■防衛フォーラム
期待していた次世代航空機FARA将来攻撃偵察航空機について。
アメリカ国防総省はFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止を決定しました。この計画は幾度も中止を繰り返していたOH-58カイオワ観測ヘリコプター後継機計画がまたしても中止されたもので、画期的な能力を有するとされたRAH-66コマンチ偵察ヘリコプターがコスト管理に失敗し一機一億ドルという状況により中止された流れの先に。
アメリカ陸軍先進技術開発軍司令官のジェームズレイニー大将によれば、この計画中止は予算的な要素も大きいとされつつ、ロシアウクライナ戦争やイスラエルガザ報復など最新の戦況を見たうえで、今週末や今夜大規模戦争が始まる可能性がある状況では徹底した調整が必要であるために長期間を要する新型機開発は最良の選択肢ではないとした。
陸軍参謀総長ランディジョージ大将も、ロシアウクライナ戦争において航空偵察の概念が根本から転換しており、人工衛星に搭載されるセンサーや無人航空機の能力がこれまでにないほどに広範囲に達して、そして安価になっている、と2月7日に国防総省において開かれた記者会見やプレスリリースなどで計画中止の背景を説明しています。■
中止のFARA将来攻撃偵察航空機とは。OH-58Dカイオワヘリコプターの後継機を開発するもので、候補機としてはベルヘリコプターテキストロン社のベル360インビクタスとシコルスキーエアクラフト社製レイダーXが候補として開発されていますが、開発遅延の可能性とコスト管理の見通しの甘さなどがアメリカ会計検査院に指摘されています。
ベル360インビクタスは攻撃ヘリコプター型の機体配置を採用しており、ベル525中型ヘリコプターの設計を応用しGE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用、巡航速度は330km/hで、機体はタンデム複座型を採用、主翼を有する構造で対戦車ミサイルなどの運用能力を有するほか、機首には機関砲を搭載する攻撃ヘリコプター型を採用した。
レイダーXとは、シコルスキー社が1970年代から開発している複合ヘリコプター技術を利用しシコルスキーS-97を原型として採用、GE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用し、二重反転ローター方式により最高速度は460km/hに達する計画でした。他方、操縦席はサイドバイサイド方式を採用し、武装は胴体部分に収容する計画でした。■
FARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止の全般に及ぼす影響について。アメリカ陸軍は同時に並行しているFLRAA将来型長距離強襲航空機については具体的な変更を示唆していません。陸軍はFLRAAについてはUH-60ブラックホークヘリコプターを置き換える次世代ヘリコプターの本命と位置付けており、今のところ継続されるもよう。
ベルV-280ヴァローとシコルスキー/ボーイングSB-1デファイアントがこの候補機と位置付けられています。ベルV-280ヴァローはV-22オスプレイのようなティルトローター方式の航空機で海軍なども哨戒ヘリコプターの原型機として注目している。SB-1デファイアントは複合ヘリコプター、既存機のような空気抵抗を活かした匍匐機構能力をもつ。
FLRAA将来型長距離強襲航空機は、少なくとも既存のUH-60ブラックホークと比較して大幅に巡航速度が増大するため、これらの航空機を援護するにはFARA将来攻撃偵察航空機が既存の戦闘ヘリコプターよりも高い巡航速度能力を発揮できる点が重視されていましたが、今後はこの任務も無人航空機が担う事となるのでしょうか、関心事です。■
UH-60Vブラックホークの調達が中止される、そして今回のFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止と同じくして陸軍は現在生産されているUH-60Vの生産を2025年に終了すると発表しました。その理由はコスト管理の失敗といい、全天候飛行能力をこれまでのヘリコプターと比較にならないほど高水準とした点が強調されていました。
UH-60Vはノースロップグラマン社製モジュール式オープンシステムアーキテクチャーオープンリフトシステムを搭載、この技術はAH-64Eアパッチガーディアンにも採用され、コンピュータシステム、ビジュアルディスプレイシステム、コントロールディスプレイユニットとすべてをデジタル端末化し、高度な任務遂行能力を持つとされています。
陸軍は既存のUH-60のうち760機をUH-60Vへ改修し、既存の1375機のUH-60Mと並行運用する計画を見直すとのこととなります。既存のUH-60はUH-60Lであり、今後はコスト管理に成功しているUH-60Mへの改修を強化するのか、UH-60Lをそのまま運用しFLRAA将来型長距離強襲航空機での置き換えを目指すかなどの選択肢があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
期待していた次世代航空機FARA将来攻撃偵察航空機について。
アメリカ国防総省はFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止を決定しました。この計画は幾度も中止を繰り返していたOH-58カイオワ観測ヘリコプター後継機計画がまたしても中止されたもので、画期的な能力を有するとされたRAH-66コマンチ偵察ヘリコプターがコスト管理に失敗し一機一億ドルという状況により中止された流れの先に。
アメリカ陸軍先進技術開発軍司令官のジェームズレイニー大将によれば、この計画中止は予算的な要素も大きいとされつつ、ロシアウクライナ戦争やイスラエルガザ報復など最新の戦況を見たうえで、今週末や今夜大規模戦争が始まる可能性がある状況では徹底した調整が必要であるために長期間を要する新型機開発は最良の選択肢ではないとした。
陸軍参謀総長ランディジョージ大将も、ロシアウクライナ戦争において航空偵察の概念が根本から転換しており、人工衛星に搭載されるセンサーや無人航空機の能力がこれまでにないほどに広範囲に達して、そして安価になっている、と2月7日に国防総省において開かれた記者会見やプレスリリースなどで計画中止の背景を説明しています。■
中止のFARA将来攻撃偵察航空機とは。OH-58Dカイオワヘリコプターの後継機を開発するもので、候補機としてはベルヘリコプターテキストロン社のベル360インビクタスとシコルスキーエアクラフト社製レイダーXが候補として開発されていますが、開発遅延の可能性とコスト管理の見通しの甘さなどがアメリカ会計検査院に指摘されています。
ベル360インビクタスは攻撃ヘリコプター型の機体配置を採用しており、ベル525中型ヘリコプターの設計を応用しGE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用、巡航速度は330km/hで、機体はタンデム複座型を採用、主翼を有する構造で対戦車ミサイルなどの運用能力を有するほか、機首には機関砲を搭載する攻撃ヘリコプター型を採用した。
レイダーXとは、シコルスキー社が1970年代から開発している複合ヘリコプター技術を利用しシコルスキーS-97を原型として採用、GE社製T-901ターボシャフトエンジンを採用し、二重反転ローター方式により最高速度は460km/hに達する計画でした。他方、操縦席はサイドバイサイド方式を採用し、武装は胴体部分に収容する計画でした。■
FARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止の全般に及ぼす影響について。アメリカ陸軍は同時に並行しているFLRAA将来型長距離強襲航空機については具体的な変更を示唆していません。陸軍はFLRAAについてはUH-60ブラックホークヘリコプターを置き換える次世代ヘリコプターの本命と位置付けており、今のところ継続されるもよう。
ベルV-280ヴァローとシコルスキー/ボーイングSB-1デファイアントがこの候補機と位置付けられています。ベルV-280ヴァローはV-22オスプレイのようなティルトローター方式の航空機で海軍なども哨戒ヘリコプターの原型機として注目している。SB-1デファイアントは複合ヘリコプター、既存機のような空気抵抗を活かした匍匐機構能力をもつ。
FLRAA将来型長距離強襲航空機は、少なくとも既存のUH-60ブラックホークと比較して大幅に巡航速度が増大するため、これらの航空機を援護するにはFARA将来攻撃偵察航空機が既存の戦闘ヘリコプターよりも高い巡航速度能力を発揮できる点が重視されていましたが、今後はこの任務も無人航空機が担う事となるのでしょうか、関心事です。■
UH-60Vブラックホークの調達が中止される、そして今回のFARA将来攻撃偵察航空機の開発計画中止と同じくして陸軍は現在生産されているUH-60Vの生産を2025年に終了すると発表しました。その理由はコスト管理の失敗といい、全天候飛行能力をこれまでのヘリコプターと比較にならないほど高水準とした点が強調されていました。
UH-60Vはノースロップグラマン社製モジュール式オープンシステムアーキテクチャーオープンリフトシステムを搭載、この技術はAH-64Eアパッチガーディアンにも採用され、コンピュータシステム、ビジュアルディスプレイシステム、コントロールディスプレイユニットとすべてをデジタル端末化し、高度な任務遂行能力を持つとされています。
陸軍は既存のUH-60のうち760機をUH-60Vへ改修し、既存の1375機のUH-60Mと並行運用する計画を見直すとのこととなります。既存のUH-60はUH-60Lであり、今後はコスト管理に成功しているUH-60Mへの改修を強化するのか、UH-60Lをそのまま運用しFLRAA将来型長距離強襲航空機での置き換えを目指すかなどの選択肢があります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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