南海トラフ地震では非常に高い津波が想定され最大34mに達するということです。そして最悪の状況での死者想定は40万、なんとかならないものか。















(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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◆自衛隊関連行事
今週末、祇園囃とともに梅雨明けが実感できるのは良いのですがこの猛暑はどうにかしてほしいところですが、如何お過ごしでしょうか。さあ、今週末の行事を見てゆきましょう。
第5旅団創設8周年・帯広駐屯地創設61周年記念行事、今週末最大の陸上自衛隊は帯広駐屯地祭でしょう。道東地区の防衛警備及び災害派遣を担当する旅団で、かつての第五師団を縮小改編し誕生しました。機械化旅団で、北方領土返還時には北方領土の防衛警備を行う旅団とのこと。写真は第7師団ですが、装甲車と自走榴弾砲、と90式戦車を運用する旅団です。
静内駐屯地祭、第7高射特科連隊が駐屯している駐屯地です。87式自走高射機関砲と81式短距離地対空誘導弾が実弾射撃を展示する駐屯地となっていて、射撃場の天候と視界により安全確認や標的機が飛行できない場合は中止となるのですが、実弾射撃を見ることが出来る駐屯地、特にミサイルの射撃はなかなか見れません。
倶知安駐屯地祭、元々第29普通科連隊が駐屯していましたが廃止され、第28普通科連隊第4中隊が駐屯、加えて元第11対戦車隊、現在は北部方面隊舟艇対戦車隊が駐屯しています。96式多目的誘導弾システムを運用する部隊で、光ファイバー誘導方式の長射程誘導弾により戦域の精密誘導火力行使を行う方面直轄部隊です。
安平駐屯地祭、第7師団管区にある駐屯地で、北海道補給処安平弾薬支処が置かれている駐屯地です。ただ、戦闘部隊も後方支援部隊もいるわけではなく、装備品展示や式典というのではなく駐屯地一般公開のみが行われる、ということです。何が行われるのでしょうか、ね。
稚内分屯地祭。我が国北方の最前線、宗谷海峡の沿岸監視にあたる第301沿岸監視隊の分屯地で、情報本部の分遣隊がロシアの通信傍受を行っていますが、これは公開されないでしょう。海上自衛隊稚内基地分遣隊、航空自衛隊第18警戒隊のレーダーサイトなどが置かれています。展示は何か行われるようです。(訂正:航空自衛隊の行事のようです)
八雲分屯基地祭、ほか移動二海郡にあるペトリオットミサイル部隊基地で、第20高射隊が置かれています。非常に興味深いのは基地内に補助飛行場として1800m滑走路をもつところで、旧陸軍が建設し、戦後米軍が整備した航空基地施設で、現在航空機は配置されていませんが、有事の際に緊急発着を行えるとのこと。
白山分屯基地祭。白山ですが、三重県の白山にある基地で近くに、正確には麓に第33普通科連隊の久居駐屯地があります。第14高射隊のペトリオットミサイル部隊が展開する分屯基地、久居駅から同じ津市といってもかなり険しい道路の先、山頂付近に或る分屯基地です。訓練展示も行われるとのこと。
海上自衛隊関係が今週末も熱いです。まず、航空基地一般公開は、7月21日サマーフェスタin下総、八戸航空基地ちびっ子ヤング大会第2航空群サッカー大会。下総航空基地は厚木に移転した航空集団司令部がかつて置かれ、現在は教育航空集団司令部が置かれている基地です。八戸航空基地は一般公開が行われるとのことですが主たる行事はサッカー大会とのこと。
艦艇一般公開と体験航海を北日本から順番に見てゆきましょう。7月22日、白老ミサイル艇わかたか一般公開、0900~1100と1300~1500の予定です。自衛艦 in
仙台港,イージス艦きりしま、護衛艦さざなみ、が仙台に寄港し、一般公開は0900~1100、1300~1600、体験航海は乗艦券が必要で1400~1600の予定とのこと。
東京では東京港晴海ふ頭艦艇広報、何が来るかは不明ですが体験航海も行われる模様、新潟西港護衛艦みねゆき艦艇広報一般公開・体験航海7月21日、七尾港まつりミサイル艇はやぶさ、七尾港に入港し一般公開21日・22日、体験航海は基本、乗艦券が必要ですが、定員に余裕があれば、これは数年前ではよく聞くのですが当日券が出されることもありました。
明日土曜日に阪神基地サマーフェスタが行われ、護衛艦いそゆき一般公開ヘリコプター地上展示訓練用プール開放が行われ、水泳用帽子と水着は必須ですが自衛隊のプールを利用できるとのことで、このほか大阪湾クリーン作戦に参加している交通艇での抽選港内クルーズ等行われます。
九州では大分港大在埠護衛艦いせ一般公開、いなづま一般公開・体験航海、21日0930~1600、22日0930~1600。多用途支援艦げんかい日南市油津港寄港,宮崎県日南市 油津港7号岸壁7月20日~23日、調べてみたら以上の通りでした。他に何か行事など実施についてお気づきの点がありましたらコメント欄でお教えいただけると幸いです。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
◆注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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◆九州方面には台風接近中
九州北部豪雨災害派遣ですが、前回掲載以降の防衛省自衛隊発表からその概要を見てみましょう。
福岡県の14日災害派遣要請と共に一時終了していた航空機の災害派遣任務が再開され、14日土曜日、15日日曜日には9機のヘリコプターが問う縫うされることとなりました。派遣部隊は土曜日の時点で第42普通科連隊(北熊本)、西部方面特科隊(湯布院)、西部方面航空隊(高遊原)、第4飛行隊(目達原)、第8飛行隊(高遊原)、第2施設群368施設中隊(湯布院)、第5施設団(小郡)、第4特科連隊(久留米)、第4高射特科大隊(久留米)、
第4戦車大隊(玖珠)、第4対舟艇対戦車隊(玖珠)、第41普通科連隊(別府)となっています。
災害派遣部隊は防衛省最新の発表では第42普通科連隊(北熊本)、西部方面特科隊(湯布院)、西部方面航空隊(高遊原)、第4飛行隊(目達原)、第8飛行隊(高遊原)、第2施設群368施設中隊(湯布院)、第5施設団(小郡)、第4特科連隊(久留米)、第4高射特科大隊(久留米)、
第4戦車大隊(玖珠)、第4対舟艇対戦車隊(玖珠)、第41普通科連隊(別府)となっており、派遣規模は人員440名(延べ3880名)、車両150両(延べ1000両)、航空機0機(延べ30機) 航空機による災害派遣は収束しました。
災害派遣は熊本県での14日以降の任務状況として、阿蘇市および南阿蘇村での行方不明者捜索活動、阿蘇市および南阿蘇村での三か所の給水支援、高森町での行方不明者捜索活動と航空機による情報収集活動が実施されました。16日までに高森町での行方不明者捜索任務が完了、17日までには航空機による情報収集活動が完了していますが、阿蘇市および南阿蘇村での行方不明者捜索活動、阿蘇市および南阿蘇村での給水支援は実施場所を一カ所に縮小していますが継続されています。
大分県での14日以降の災害派遣は、竹田市における行方不明者捜索活動、竹田市役所から向山田地区への物資輸送支援、市内三カ所での給水支援、日田市小野鈴連町における避難支援活動と、市内二カ所での給水支援、そして航空機による情報収集が行われました。避難支援は15日までに完了しましたが、災害派遣地域に中津市三か所での給水支援が加わり、竹田市二か所、日田市二か所での給水支援、日田市での物資輸送支援と情報収集、16日には竹田市での給水支援三か所へ縮小、17日は日田市四カ所での給水支援が行われました。
福岡県での災害派遣は14日に開始され、朝倉市と柳川市での孤立者救助活動、久留米市高良川での水防活動が行われました。これらは成果を出したようで、15日には八女市一か所での給水支援活動、として八女市星野村が孤立したためヘリコプターによる物資輸送支援活動を実施すると共に航空機による情報収集を実施しています。16日には八女市での給水活動実施と共に星野村への地上交通が応急復旧したようで地上からの輸送支援へ切り替え、引き続き航空機情報取集が行われましたが17日には八女市一か所での給水支援活動のみとなり、かなり復旧したといえるでしょう。
災害派遣においてもっとも切迫しているのは堤防決壊を防ぐ水防活動で、これは土嚢による堤防補強などで、特殊な技術というよりも人員の投入が必要となります。一旦決壊しますと水位低下まで市街地の浸水が続きますので時間との戦いとなります。このほか、また今回の災害派遣は航空機による孤立住民救出がかなり行われていたようで、市街地での浸水による道路使用不能状況に際しては、ヘリコプターに頼るほかない、という状況を痛感させました。孤立地域へのヘリコプター空輸支援も行われていまして、これも今回の災害派遣の特色と言えるでしょう。災害派遣は現在も継続中です。
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◆自衛隊は海峡封鎖も視野にリムパック対機雷演習
第二北大路機関へ掲載しましたが、米第五艦隊所属のヘンリーJカイザー級給油艦ラパハノックがアラブ首長国連邦沖のペルシャ湾で接近してきた不審船舶へ銃撃を行いました。
米第五艦隊発表では16日アラブ首長国連邦沖で発生、AP通信によればこの銃撃により不審船で一名が死亡、三名が負傷したとのことです。イラン経済制裁に端を発しイランが海峡武力封鎖を示唆したホルムズ海峡危機が生起して以来、実際に火力が行使される事案は今回が初めてではないでしょうか。写真はヘンリーJカイザー級給油艦、佐世保で撮影したものです。AFP通信によれば、銃撃を受けたのはインド漁船で、警告を無視し接近したためですが、給油艦を貨物船と見間違えた可能性もあるやもしれません。
アラブ首長国連邦はイランとはペルシャ湾を隔てて対岸にあります。米海軍はイランの経済制裁への反発として世界の重要な石油海上交通路ホルムズ海峡の海軍による封鎖示唆により発生したホルムズ海峡危機に際し、イギリス海軍のミサイル駆逐艦派遣に続いて原子力空母エイブラハムリンカーンを派遣して以来継続的に艦艇を派遣し、ペルシャ湾での警戒監視にあたっています。イラン海軍は小型戦闘艦艇と少数の潜水艦を中心といするもので、特にイラン海軍小型艦艇の挑発行動が続いていたことを背景に小型戦闘艇へ警戒が集まっていた、こうした状況下で発生しました。
イラン政府は今回の事案に鋭く反応し、イラン外務省報道官は記者会見において我々はあらゆる手段を用いて外国軍を排除しペルシャ湾を防衛する、と発言。イランのサレヒ外相もイランはホルムズ海峡の安定と平和について翁関心と努力を払ってきている、としてアメリカ側を牽制しています。無論、ホルムズ海峡は国際海峡であり、ペルシャ湾沿岸はイラン以外にサウジアラビア、カタール、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦、イラクの領海と接続水域があり、イランの領海ではありません。
ただ、この海域への緊張が高まれば、我が国としても厳しい判断を迫られることになるでしょう。過去にはイランイラク戦争に際してタンカーへの無差別攻撃が示唆された際や、リビアの特務艦によるスエズ運河機雷敷設事案、湾岸戦争において石油依存度の高い我が国はペルシャ湾への海上自衛隊派遣を求められてきましたが、資金拠出を重視し、同時に原子力発電の重視による石油依存度低下を目指してきました。この方式が福島第一原子力発電所事故以降厳しくなっている、これを忘れてはならないでしょう。
そして本日、海上自衛隊は現在実施中のハワイ沖での環太平洋合同演習リムパック2012においてオーストラリア海軍との間で初の対機雷戦訓練を実施しました。リムパックへは海上自衛隊よりヘリコプター搭載護衛艦しらね、イージス艦みょうこう、掃海母艦ぶんご、P-3C哨戒機3機が派遣中です。今回は特に水中処分隊により、音波測定により発見された機雷を無力化するという運用が行われ、日豪間でのリムパック演習へ海上自衛隊が対機雷戦訓練を実施する、というのは初めてとのことです。
リムパックでの対機雷訓練は今回の事件とは直接無関係ですが、防衛省はホルムズ海峡危機に際して、イラン海軍が機雷封鎖などの強硬手段に出た場合への多国間対処の演練も演習目的に含まれる可能性がある、NHK報道に明示されていました。実際問題として、機雷は費用対効果においてかなり有用な装備、即ち敷設されたならば処理に大きな課題を突き付ける装備であり、ホルムズ海峡危機が機雷戦へ転換した場合を想定する必要性はあるのですが、兆候がわかりにくく、即応という概念あ自衛隊以外に政府にも突き付けられるところです。
さて、今回何故給油艦は銃撃を行ったのでしょうか。これは過去のテロ事件の戦訓があります。米海軍の対応ですが、2000年10月12日のイージス艦コール爆破事件以来神経質になっています。写真は同型のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦。コール爆破事件とはイエメンのアデン港に停泊中のイージス艦へ不審な小型ボートが接近、自爆したことで12mもの破口が生じ、幸い艦の中枢部分は無事で沈没はしませんでしたが17名の乗員が死亡、修理に2003年まで要しました。
この事件以降、米海軍はあらゆる艦艇へ機関銃の増設を行っています。横須賀基地での一般公開などでも艦橋部分や船体部分に12.7mm機関銃や25mm機関砲などが増設されており、機関銃は単装と連装などで六カ所から八カ所、それに左右両舷に機関砲が搭載されています。報道を見る限りでは警告を無視して接近したとのことですから、自爆攻撃を行うのか否か、接近船舶の意図は図れず、銃撃と報じられていますので決して射程が大きくない機関銃の射程内まで警告無視での接近し、これ対し射撃が加えられるのは致し方ないといえるやもしれません。
イラン政府の対応により緊張が高まったホルムズ海峡危機ですが、現時点ではこの海峡への機雷封鎖など具体的行動に移される兆候はありません。具体的には緊張状態が高いまま長期間推移する可能性が高まっているということで、今後は偶発的衝突へも含め警戒を続ける必要があるでしょう。特に東日本大震災以降、我が国は戦後初めて原子力政策を開始して以来化石燃料へのエネルギー政策の結果的なものではありますが転換をおこなっています。
原子力政策からの脱却を図るも図らないも代替エネルギー確保の如何というものが論議の根幹を左右させる問題となりますので、特に後者への政策を実施する場合には世界各国が資源外交としてリスクの共有へ進んできた方式へ、参加することも求められるわけです。問題はイランの核開発に起因し経済制裁が行われたことがホルムズ海峡危機の発端ですが、核開発を進めるイランの石油輸出重要海峡封鎖示唆、因縁めいたものさえも感じるものですが、必要な措置はどうあるべきか、最悪の状況に備えつつ、何故か日本政府が放棄している外交努力も含め予防外交を進めなければなりません。
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◆北部九州四県43万人に避難指示・避難勧告
7月11日からの北部九州における豪雨被害は14日現在、死者22名、行方不明者9名、本日14日も引き続き豪雨となっています。
12日早朝に熊本県と大分県が自衛隊へ災害派遣を要請、防衛省HPには発表されていませんがNHK本日1612時の報道では福岡県も災害派遣要請を出しました。本日夜の時点で避難勧告と避難指示は43万人に対し出されており、損壊家屋161戸、床上床下浸水3600戸以上、消防や警察、地元水防団の対応も限界を来したとの判断から熊本県は蒲島熊本県知事より12日0649時に第8師団へ水防活動及び人命救助に関する災害派遣を要請、広瀬大分県知事は12日0750時に西部方面特科隊へ孤立住民の救助に関する災害派遣要請を出しました。
陸上自衛隊はこの要請に応じ、北熊本駐屯地第43普通科連隊、湯布院駐屯地西部方面特科隊、高遊原分屯地西部方面航空隊、目達原駐屯地第4飛行隊、高遊原分屯地第8飛行隊、飯塚駐屯地第2施設群より災害派遣部隊を展開させています。13日1900時までの災害派遣規模は人員720名で延べ派遣規模は1350名、車両派遣規模は170両となっており延べ派遣規模は310両。航空機による住民救出は全員救出を以て完了しましたが、延べ派遣規模は航空機15機となっています。福岡県が本日災害派遣要請を第4師団へ出しましたので、この数は多くなることでしょう。
熊本県災害派遣部隊は派遣要請を受け航空機などによる情報取集を開始、約三時間後の1000時には熊本市水道町大甲橋付近での決壊危険堤防に対する普通科部隊による水防活動を開始すると共に熊本市内での孤立住民の救助を実施、大規模土石流により大きな被害が出た阿蘇市内牧地区における住民避難支援活動を行い、併せて孤立住民救助を実施、南阿蘇村での行方不明者捜索活動を開始しました。13日には災害派遣要請に給水支援が加わり、阿蘇地区での行方不明者捜索、高森町での行方不明者捜索とともに阿蘇地区三か所での給水支援を開始しました。
大分県災害派遣部隊は災害派遣要請より34分後の0824時に第一次派遣部隊20名が湯布院駐屯地を出発、竹田市竹田地区における孤立うう明救助活動を時資すると共に航空機による情報収集活動を実施、13日には災害派遣要請に給水支援が加わり、竹田市での行方不明者捜索とともに市内二か所での給水支援活動を行っています。孤立者救助活動は航空機が使われ、このほか渡河ボートなども救援活動に使用されています。現場ではかなりの雨量があり、行方不明者捜索は二次災害の危険のなか進められているようです。
福岡県の小川知事は本日1612時のNHK報道によれば、朝倉市、八女市、久留米市への災害に対し第4師団へ災害派遣を要請しました。南部筑後地方での豪雨被害が起きく、僅か四時間で総雨量415mmとなるなど記録的な豪雨により堤防の決壊などが相次いでいます。土砂崩れは181個所となり、孤立地域での住民救助活動等を要請したと報じられ、現在も被害は拡大しています。気象庁によれば、九州北部地方での気象は引き続き不安定であり、14日1800時から15日1800時まで本州山口県を含め雨量は多いところで120mmに達する見込みとされ、引き続き土砂災害などに対し厳重な警戒が必要です。
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◆データ通信能力有する新指揮通信車が必要
南海トラフ地震、特集第二回において広大な被災地へ災害派遣部隊の通信確保問題を提示しましたが、この関連でもうひとつ。
南海トラフ地震は想定される最大規模で発生した場合、中部方面隊管区を中心に東部方面隊管区、西部方面隊管区が大きな被害を受ける事となるでしょう。当然全国からの部隊が災害派遣へ支援へ展開しなければならなくなるのですが、これら災害派遣増援部隊の指揮統制を行うにあたって、現状の82式指揮通信車の通信能力は充分な水準なのでしょうか。
NBC偵察車が、現状の82式指揮通信車派生型の化学防護車よりもかなり大型のものとなっており、こちらのNBC防護車の車体を流用し情報指揮車として制式化することはできないのか、という素朴な疑問が湧いてきます。車体は大型ですので、大型モニターやPCを配置し、指揮官が画像情報を得ることが出来ますし、発電能力の余裕にも期待できるものがあります。
82式指揮通信車は、特科部隊の指揮通信用に導入されたもので、間接照準射撃を行う特科部隊には情報通信の迅速な伝送と共有が必要ということから導入当時としては高度な情報通信能力を有していました。しかし、制式化された1982年から今年で30年を経ています。特に当時としては一般的であった音声通信に重点を置いていることから、データ通信が行えない実情はかなり大きな問題となるかもしれません。
82式指揮通信車は231両が生産されており、将来装輪装甲車体系に後継車両の導入が計画されています。無線通信装置、今は多少変わっていることでしょうが82式指揮通信車には69式車両無線装置JVRC-F6(85式車両無線装置?),66式中無線装置JAN-GRC-N1/N11、71式軽受信機JAN/GRR-N4,車載装置JMT-N49が装備されています。この82式指揮通信車は駐屯地記念行事において体験乗車の定番ともなっていますので、乗られた方も多いかもしれませんが、車内には地図ボードと座席があり、音声情報を地図に書き込んでゆくという方式となっています。
東日本大震災では10万もの部隊を展開させ、任務に当たりました。さて、話を少し前に戻しますが1995年の阪神大震災において最も多くの被災者を瓦礫の下から救い出したのは被災地に近い伊丹駐屯地の第36普通科連隊ではなく、信太山駐屯地の第37普通科連隊でした。これはひとえに情報の集約を徹底して行ったため、ということを聞き、驚いたことがありました。
阪神大震災発災後、第36普通科連隊は近傍災害派遣を実施、阪急電鉄伊丹駅が高架ごと倒壊しており被害の大きさを即座に認識したとのことです。ここで36連隊長は管区内の被害状況の情報を迅速に収集し、特にどの地域へ集中して部隊を投入しなければならないのかを把握、第36連隊が兵庫県を管区とし、対して第37連隊が大阪府を管区としており、こちらから部隊を集中投入することで人命救助に寄与したとのことです。
72時間。さて、被災者が倒壊家屋の下での生存を維持できるのは発災後72時間が大きな目安となるそうです。さて、この72時間までに人員救助を完了させなければならず、だからこそ陸上自衛隊は基盤的防衛力として全国に部隊を配置しているわけです。一定の規模であれば管区連隊で対応し、これを超える規模の大規模災害に際しては師団など上級部隊の支援を、この上の規模に際しては方面隊や、これよりも上級部隊の支援を受けるというもの。
この中で、広く支援を受ける場合は、迅速に部隊が展開できなければこの72時間に間に合わなくなってしまうのですが、どの部隊を、どの地域へ、どの支援と共に投入させるのか、という指揮を如何に行うのかが重要となってくることは間違いないでしょう。この点で、かなり大きな問題となるのは現在の指揮通信車が通信能力が充分ではない、というものです。
上記のとおり、82式指揮通信車は四基の音声無線機で得た情報を順次地図ボードへグリースペンで書き込んでゆくという方式で情報を集約するのですが、現在の時代となりますと、もう少し優れた情報処理手段は無いのか、という点が気になってきます。もちろん、基幹連隊指揮統制システムを採用している部隊においてはもう少し進んでいるようですが、車体をもう少し大型化させたもので、画像情報を含め一定以上の通信帯域を衛星通信を含め確保し、画像情報、映像と地図情報を一致できるようしなければなりません。
特に無人航空機の一般化により自衛隊は小型無人機による上空からの情報を今後多数共有するようになります。無人機を以て上空から情報収集を行ったとしても、情報収集した情報を操作端末を有する場所まで展開して把握しなければならない、というのは余りに非効率ですし、連隊の管区は一都道府県という広大なものですので、情報を伝送し受信できなければなりません。
また、無人機からの情報伝送は、勿論師団通信大隊からの支援を受けなければならないのですが、駐屯地から前進し、運用を行う場合においては、被災地へ向かい走行中であっても情報を得て指揮官の判断に必要な情報を得ることが出来たならば、他管区から増援部隊として派遣される状況に際しても、到着後時間をおかず即座に救助人へ加入することが出来るでしょう。
東日本大震災では、被災地近傍の駐屯地が停電により電源喪失し、発電能力も喪失したため指揮官は無線情報を順次ボードに書き込む方式で情報収集に当たったのですが、情報の濃霧というべき状況に落いり隔靴掻痒という苦境の中で任務に当たったようです。ここで発電能力が充分ある指揮車において任務を展開していたならば、もう少し情報は得られたかもしれません。
このほか、これは先ほど記載しましたが、被災地へ急行する途中の部隊であっても車内において情報を収集し指揮統制を発信し受信することが出来たならば、例えば被災地へ遠方の駐屯地より、取り敢えず現地へ急行せよ、という英霊を受けると共に展開する車内にて派遣部隊の展開地域の命令を受け、必要であれば派遣される車上において戦闘序列を画定、大まかな現地での任務と捜索手順を構築することが出来るでしょう。
理想的な状況は、指揮官が被災地へ向かう途中に、被災地の具体的展開地域を配分され、その後に連隊長が車内から、被災地上空の観測ヘリコプターや無人偵察機からの情報をリアルタイムで入手し、必要な支援部隊の要目を上級司令部へ要請すると共に、防災無線を通じて現地の自治体防災担当者と情報を得たうえで車両の待機位置等を把握する、こうした方式がもとめられるところ。
自衛隊としては、指揮通信車の新型は結局のところデータ通信能力を欠いている状況は問題となりますし、防災用として重要な車両と言う点を強く推すことで、ある程度予算査定において強みを持つことが出来るかもしれません。ただ、車体が大型となっていますので、戦闘時の生存性については考慮するべき部分が出てくるのかもしれませんが、派遣部隊の迅速な任務対応へ必要性は大きいと考えます。
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