北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑪ 空港津波被害へ輸送機用臨時飛行場の可否

2012-07-21 21:56:57 | 防災・災害派遣
◆補助飛行場を!、沿岸空港脆弱性への一案
 南海トラフ地震では非常に高い津波が想定され最大34mに達するということです。そして最悪の状況での死者想定は40万、なんとかならないものか。
Nimg_5456 写真は東日本大震災災害派遣にあたるC-130H.空港、大規模災害に際しては孤立地域への物資及び人員の搬入と展開、負傷者の後方都市への搬送拠点として重要な位置づけに或る防災拠点設備となる場所ですが、南海トラフ地震は最大規模の津波想定で高知県内での高さ34mという極大規模となる津波が押し寄せるため、空港設備そのものが破壊される、東日本大震災における仙台空港と同じような危険性が大きいといえるでしょう。
Nimg_5472 この場合を想定し、内陸部の直線道路の一部、特に高速道路の一部を既存道路で代替し得る位置について、その一部車線を野戦飛行場として活用できないのか、考えておく必要性は無いでしょうか。もちろん、高速道路は南海トラフ地震に際して津波の第一撃から生き残る四国瀬戸内海沿岸地区からの救援搬送拠点となるため、一概に高速道路を封鎖して飛行場にするわけにはいかないのですが。
Nimg_0355 C-130H輸送機であれば不整地着陸訓練として、例えば小牧基地の近傍にある岐阜基地の不整地発着訓練場、早い話が滑走路のわきに或る舗装されていない平坦地なのですが、こうした場所への発着訓練を行っています。理想はコンクリート厚30cmの滑走路となる直線道路を順次整備してゆくことなのですが、まず用地取得だけでも行っておき、非常時には発着、つまり不整地発着することにより生じる器材損害の危険と発着しないことで生じる人命の危険とを考慮して運用、予算措置が採られると共に順次設備整備、という方式が理想です。
Nimg_0360 サービスエリアに隣接して部隊の発着地域を整備してゆくことが出来れば、物流拠点としての、いわば前方や線拠点というような能力を発揮できるでしょう。航空自衛隊の空輸能力は現状でC-130H輸送機15機程度、C-1輸送機25機程度、もう少し輸送能力が大きいKC-767を発着させたいところですが、この機体を入れる場合、コンテナ積降設備や2000m級滑走路が必要となり、不整地発着は絶対できないため、こちらは輸送力に含めることはできません。
Nimg_0284 この空輸能力には少々物足りなさを感じるところではありますが、C-1輸送機は空輸能力が搭載量で4.5倍に強化されるC-2輸送機へ大隊が間もなく始まります。また、近距離の、美保基地、伊丹空港、浜松基地、小牧基地、広島空港、福岡空港、熊本空港からの輸送拠点です。距離としては比較的近い場所にありますので、24時間当たりの任務飛行回数を多く維持することが出来、一回当たりの輸送能力は小さくとも全体の空輸能力は大きくなると考えます。
Nimg_0354 米軍支援の拠点ともなり得ます。横田基地の米空軍第374輸送飛行隊が20機のC-130Hを運用しており、海兵隊岩国航空基地には第1海兵航空団のKC-130輸送機が前方展開、隷下部隊は普天間にもKC-130を置いていますので、同盟国の支援を受けるという拠点であれば、野戦飛行場でも一定の価値を有すると言えないでしょうか。
Nimg_0876 管制塔などの施設は、空中早期警戒管制機による支援である程度代替できると考えます。実際、東日本大震災では浜松基地より進出したE-767が管制任務に当たりました。浜松基地は標高46m、浜松市中区で太平洋から11kmの距離があり、津波が浸透する浜名湖からも5km、最大規模の津波に対しても基地施設の損害は限定的でしょう。
Nimg_0891 ここまで記載するのも余りに被害想定地域の空港が海に近いのです。もちろん、発着設備だけあればいいというものではありません、年に一回程度は実際に航空機をフライパスさせる訓練が必要でしょうし、機体が着陸し、エンジンを停止させずそのまま発進したとしても地上支援要員は必要でしょう、平時には基地に展開し、緊急時にヘリコプターで展開し自治体や警察要員、国土交通省の要員と協力するとしても、これには人員に限界のある航空自衛隊では難しい部分があります。しかし、前述のとおり、空港がどの程度海に近い場所にあるのかを見てみましょう。
Nimg_1186 高知空港は拠点空港。2500mの滑走路を有していますが、太平洋から距離僅か200m、県道14号線を乗り越えればそのまま滑走路であり津波への脆弱性が大きいです。仮に30mの防波堤を造ってしまうと航空機発着の妨げになるほどの場所にあり、高知空港の隣には物部川があり、此処を遡上した津波が空港設備を更に損傷させる危険な立地で、他方で10km先に高知市役所や高知県庁など重要設備があります。復旧措置を準備することは重要ですが最初の72時間を支える野戦飛行場を内陸部の高知道付近に配置できることが望ましい。
Nimg_4896 南紀白浜空港は地方空港、和歌山唯一の空港で滑走路は2000mです。県道34号線に沿って400mで太平洋で、滑走路南端から海までの距離は250m程度です。ただ、この距離からは読み取れないのですが標高は90m程度あるということなので、津波からはある程度機能を維持できるかもしれません。他方、紀伊半島は道路網に限界があり孤立しやすい地形にもあることは無視出来ず、内陸部に補助発着場があってもいいのではないでしょうか。
Nimg_6803_1 徳島空港は共用空港、2500mの滑走路を有し、海上自衛隊徳島航空基地と隣接しています。滑走路が海に突き出ているという立地にありますので、津波被害から逃れることは出きません。近傍の小松島航空基地も同様の立地。しかも徳島空港は旧吉野川と今切川に挟まれた扇状地で、しかも上流は3km南の吉野川が内陸部へ繋がっており、被害が大きくなることが自明で、しかし徳島市街地が近く、小松島市国道55号線付近に小松島航空基地のヘリコプター退避地を兼ねて発着場を配置することはできないものか、と思います。
Nimg_7586 宮崎空港は拠点空港、2500mの滑走路が日向灘に面しており、海抜6mの場所にあります。この立地から津波に際しては高い確率で空港機能を喪失することとなるでしょう。ただ、20km先に航空自衛隊新田原基地があり、こちらは2700m滑走路を持つと共に海抜80mですので、自衛隊や米軍の支援部隊はこちらの基地を利用すればよいのですけれども、九州内陸部に予備の発着場はあって良いのではないでしょうか。
Nimg_8149 空港が沿岸部にある要因ですが、用地取得が便利なのと、旧軍飛行場を流用したところに背景があります。高知空港は旧日本海軍高知海軍航空隊基地、徳島空港は徳島海軍航空隊基地、宮崎空港は旧日本海軍赤江飛行場、既存の旧軍基地ではなく、予算に余裕があれば内陸部に移せていれば、と思うこともあるのですが、これは致し方ないでしょう。
Nimg_8544 航空自衛隊は北海道に八雲分屯基地として平時にはペトリオットミサイル部隊が展開しつつ優位の際に発着施設として用いることが可能な設備を有しています。南海トラフ地震、このほか、沖縄トラフ地震など我が国では南海トラフ地震以外にも警戒を要する津波を伴う地震の危険性があり、沖縄では那覇空港が海に近いため読谷補助飛行場跡地の防災拠点への利用、今後の三陸沖地震への備えとして仙台空港と三沢基地の間に緊急用の発着場というものはあっていいように思います。なによりも、想定される被害は本土直接武力侵攻が想定する人命被害に匹敵するほどですから。
Img_6944 一定の施設整備と法整備も含め課題のある応急発着設備ですが、南海トラフ地震に際しては干天の慈雨というべき非常に大きな能力を発揮できるでしょう。特に発災後、人命の生存を左右する72時間という時限までに、沿岸空港が機能回復まで東日本大震災の教訓から100時間を要しますので、この時間を補う重要な設備です。他方で、こうした応急設備は本土武力侵攻というかたちでの有事に際しても有用であるということを付け加えておきましょう。
北大路機関:はるな

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平成二十四年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.07.21・22)

2012-07-20 23:55:47 | 北大路機関 広報

◆自衛隊関連行事

 今週末、祇園囃とともに梅雨明けが実感できるのは良いのですがこの猛暑はどうにかしてほしいところですが、如何お過ごしでしょうか。さあ、今週末の行事を見てゆきましょう。

Cimg_2289 第5旅団創設8周年・帯広駐屯地創設61周年記念行事、今週末最大の陸上自衛隊は帯広駐屯地祭でしょう。道東地区の防衛警備及び災害派遣を担当する旅団で、かつての第五師団を縮小改編し誕生しました。機械化旅団で、北方領土返還時には北方領土の防衛警備を行う旅団とのこと。写真は第7師団ですが、装甲車と自走榴弾砲、と90式戦車を運用する旅団です。

Cimg_3952 静内駐屯地祭、第7高射特科連隊が駐屯している駐屯地です。87式自走高射機関砲と81式短距離地対空誘導弾が実弾射撃を展示する駐屯地となっていて、射撃場の天候と視界により安全確認や標的機が飛行できない場合は中止となるのですが、実弾射撃を見ることが出来る駐屯地、特にミサイルの射撃はなかなか見れません。

Cimg_66441 倶知安駐屯地祭、元々第29普通科連隊が駐屯していましたが廃止され、第28普通科連隊第4中隊が駐屯、加えて元第11対戦車隊、現在は北部方面隊舟艇対戦車隊が駐屯しています。96式多目的誘導弾システムを運用する部隊で、光ファイバー誘導方式の長射程誘導弾により戦域の精密誘導火力行使を行う方面直轄部隊です。

Img_5610 安平駐屯地祭、第7師団管区にある駐屯地で、北海道補給処安平弾薬支処が置かれている駐屯地です。ただ、戦闘部隊も後方支援部隊もいるわけではなく、装備品展示や式典というのではなく駐屯地一般公開のみが行われる、ということです。何が行われるのでしょうか、ね。

Cimg_4859 稚内分屯地祭。我が国北方の最前線、宗谷海峡の沿岸監視にあたる第301沿岸監視隊の分屯地で、情報本部の分遣隊がロシアの通信傍受を行っていますが、これは公開されないでしょう。海上自衛隊稚内基地分遣隊、航空自衛隊第18警戒隊のレーダーサイトなどが置かれています。展示は何か行われるようです。(訂正:航空自衛隊の行事のようです)

Cimg_7934 八雲分屯基地祭、ほか移動二海郡にあるペトリオットミサイル部隊基地で、第20高射隊が置かれています。非常に興味深いのは基地内に補助飛行場として1800m滑走路をもつところで、旧陸軍が建設し、戦後米軍が整備した航空基地施設で、現在航空機は配置されていませんが、有事の際に緊急発着を行えるとのこと。

Cimg_9579 白山分屯基地祭。白山ですが、三重県の白山にある基地で近くに、正確には麓に第33普通科連隊の久居駐屯地があります。第14高射隊のペトリオットミサイル部隊が展開する分屯基地、久居駅から同じ津市といってもかなり険しい道路の先、山頂付近に或る分屯基地です。訓練展示も行われるとのこと。

Cimg_8266 海上自衛隊関係が今週末も熱いです。まず、航空基地一般公開は、7月21日サマーフェスタin下総、八戸航空基地ちびっ子ヤング大会第2航空群サッカー大会。下総航空基地は厚木に移転した航空集団司令部がかつて置かれ、現在は教育航空集団司令部が置かれている基地です。八戸航空基地は一般公開が行われるとのことですが主たる行事はサッカー大会とのこと。

Cimg_7002 艦艇一般公開と体験航海を北日本から順番に見てゆきましょう。7月22日、白老ミサイル艇わかたか一般公開、0900~1100と1300~1500の予定です。自衛艦 in 仙台港,イージス艦きりしま、護衛艦さざなみ、が仙台に寄港し、一般公開は0900~1100、1300~1600、体験航海は乗艦券が必要で1400~1600の予定とのこと。

Cimg_0835 東京では東京港晴海ふ頭艦艇広報、何が来るかは不明ですが体験航海も行われる模様、新潟西港護衛艦みねゆき艦艇広報一般公開・体験航海7月21日、七尾港まつりミサイル艇はやぶさ、七尾港に入港し一般公開21日・22日、体験航海は基本、乗艦券が必要ですが、定員に余裕があれば、これは数年前ではよく聞くのですが当日券が出されることもありました。

Cimg_3976 明日土曜日に阪神基地サマーフェスタが行われ、護衛艦いそゆき一般公開ヘリコプター地上展示訓練用プール開放が行われ、水泳用帽子と水着は必須ですが自衛隊のプールを利用できるとのことで、このほか大阪湾クリーン作戦に参加している交通艇での抽選港内クルーズ等行われます。

Cimg_8895 九州では大分港大在埠護衛艦いせ一般公開、いなづま一般公開・体験航海、21日0930~1600、22日0930~1600。多用途支援艦げんかい日南市油津港寄港,宮崎県日南市 油津港7号岸壁7月20日~23日、調べてみたら以上の通りでした。他に何か行事など実施についてお気づきの点がありましたらコメント欄でお教えいただけると幸いです。

◆駐屯地祭・基地祭・航空祭

注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関

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第11旅団創設3周年 真駒内駐屯地創設57周年記念行事詳報④ 第11後方支援隊

2012-07-19 21:13:33 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
◆第11旅団第11後方支援隊の観閲行進
 観閲行進特集、今回は第11後方支援隊を扱います。戦闘部隊が任務を遂行し、維持するためには後方支援が何よりも重要です。
Mimg_1513 補給と戦闘支援こそが現代戦を支えるといって過言ではないでしょう。そして第11旅団には後方支援隊が置かれています。今回の記事では第11後方支援隊の写真と共に、その編成と任務を列挙してゆきます。多分に当方の誤解と誤字が含まれていることでしょうが、後方支援隊の任務と編成のご理解へ一助となれば幸い。
Mimg_1518 第11後方支援隊長平木重臣1佐。第11後方支援隊は真駒内駐屯地へ駐屯、隊員500名を以て第11旅団の後方支援を行う部隊で第11師団時代の第11後方支援連隊から縮小改編を受け創設された部隊です。武器科と需品科に輸送科と衛生科の隊員を以て編成され、第1整備中隊、第2整備中隊、補給中隊、輸送隊、衛生隊という編成となっています。
Mimg_1532 第1整備中隊の車両、主に重点整備を行う部隊から編制されており、第一線での整備以上の整備を行うことが任務です。より正確には火器車両整備小隊、通信電子整備小隊、施設整備小隊、工作回収小隊から編成されており、写真の高機動車は後部に搭載するコンテナがそのまま電装品整備に行われるシェルターとなっているのでしょう。
Mimg_1546 第1整備中隊本部の重レッカ。三菱ふそうトラックバス社製の装備で、74式特大型トラック原型として10tまでの吊上能力を有するため、戦車の整備や火砲の砲塔整備などにも用いられる装備、この車両の手におえない装備品の整備や回収は重装輪回収車が当たります。第一線での回収作業を想定した場合、キャビン部分への防弾鋼板装備など措置が欲しいところですね。
Mimg_1548 第2整備中隊。第一線部隊の整備支援を行います。第1普通科直接支援小隊、第2普通科直接支援小隊、第3普通科直接支援小隊、特科直接支援小隊、高射直接支援小隊、戦車直接支援小隊、偵察直接支援小隊を以て編成されており、第一線部隊へ随伴し、整備支援を行います。特に車両部隊が増加しているため部隊整備能力には限界があり、この支援を行うというもの。
Mimg_1554 各直接支援小隊は真駒内駐屯地へ駐屯していますが、第11旅団は真駒内駐屯地以外にも駐屯しているため、第1普通科直接支援小隊は滝川駐屯地へ常時展開し第10普通科連隊の直接支援任務に当たり、第3普通科直接支援小隊は函館駐屯地へ駐屯し第28普通科連隊の整備支援任務に当たっています。第2普通科直接支援小隊は真駒内で第18普通科連隊の支援、というかたち。
Mimg_1556 第11後方支援隊補給中隊の観閲行進。見ての通り補給部隊ですが、給水や燃料輸送などを行う部隊です。野外浄水器具により河川や湖沼の水を浄水し給水する任務も担う部隊です。北海道では給水の際にエキノコックス菌の危険があるため滅菌剤を入れなければならない、ということですが車両を見ますと気づくところがありました。
Mimg_1564 写真の車両ですが3t半、73式大型トラックですがキャビン部分へ防弾鋼板が取り付けられ、フロントガラスも内部に防弾ガラスが取り付けとなっていて一定の爆発物や軽火器による攻撃へ対応する構造となっているのがみえるでしょうか。給水車や浄水装備は重要ですが、そこまで優先目標となるようには見えません。
Mimg_1568 防弾浄水車。これは推測ですが、給水と浄水は自衛隊の国際貢献任務として派遣される事例が多く、この為の防護仕様とかんがえられます。ところで、密閉なのですが、ただでさえ熱くなる部分に加えて海外派遣はより高温多湿で厳しい場所に行くことも多く、この場合、冷房とかどうなっているのでしょうか、後付とかは無いのでしょうか、ね。
Mimg_1569 燃料輸送車。3t半/73式大型トラックの派生型ですね。機械化と装甲車両は普及するとともに当然燃料需要も大きくなり、重要です。他方で、73式大型トラックを基本とした一定の不整地での運用を想定した車両が基本なのですが、方面隊には兵站拠点へ集約するための、もう少し大型のタンクローリ型の燃料輸送車、航空自衛隊が運用しているような大型のものは必要ないのでしょうか。
Mimg_1570 第11後方支援隊輸送隊。第11旅団の大型車両の輸送支援を行う部隊です。さて、ここまで第11後方支援隊の編成を見てきましたが、第11師団時代の第11後方支援連隊の編成を簡単に見てみましょう。これは、連隊本部、本部付隊、武器大隊、補給隊、衛生隊、輸送隊となっています。第一線部隊への支援という観点からはかなり前進したように見えますね。
Mimg_1577 73式特大型セミトレーラ最大積載量40tの輸送車両で74式戦車を輸送可能な装備、50tの90式戦車の輸送はそのままでは不可能ですが、75式自走榴弾砲などの装備品は輸送可能です。一般に装軌式車両、所謂キャタピラ式ですがこれら車両は長距離を自走することはできません。このために輸送車がひつようになる、ということ。
Mimg_1582 輸送車が必要という部分で一般に、と言ったのは2003年のイラク戦争でクウェート国境からバクダッドまで600kmを機動できたため、適切な整備支援を行えば可能、ということを示したのですが攻撃前進以外は故障回避と整備負担軽減の観点から自走以外の手段が望ましいということです。今回は第11特科隊の73式装甲車を搭載していました。
Mimg_1589 第11後方支援隊衛生隊。衛生隊は医官と歯科医官に看護官と薬剤官で編成、有事の際には野戦病院を構成し、第一線からの負傷者を野戦病院において治療します。病院設置は厚生労働省の許可が必要という問題がありましたが、東日本大震災に際しては初めて野戦病院を実際にせっちし、被災者の治療に当たりました。これは自衛隊の野戦病院最初の実例ということを聞き、何やら感慨深いものでしたね。
Mimg_1590 行進する衛生隊の1t半救急車と野外手術システム。自衛隊の任務は野戦救急と救命ということで、感染症予防などはどうしているのか気になっていたのですが、これは後方の病院へ搬送していては絶命してしまう状況に際して、究極の応急措置として手術を行うというもので、一命を取り留めた後に改めて入院する、ということでした。感染症にり患しても治療を行えば命を落とすことはありませんが、重傷者をそのまま搬送していては助からないこともある、この言葉は重いもの。
Mimg_1593 1t半救急車、救急車中隊に装備されています。中隊定数は不明ですが、まあ、中隊ということですから小隊が下にいるとして、12両程度、でしょうか。ちなみに、名古屋市消防局の救急者数は35台程度、というので12両で当ても少なすぎることはありません。重傷者用担架四床か軽傷者用座席8名の後方野戦病院への搬送が可能です。しかし、最前線での運用を考えると、軽装甲車派生型の軽装甲救急車が欲しい。
Mimg_1594 野外手術システム。大型トラック四両に治療シェルターを搭載し、手術車と手術準備車と滅菌車に衛生補給車を以て構成され、水トレーラと発電機二基を支援に当てます。電動手術台、X線装置、X線フィルム現像装置、臨床検査装備、手術用機材滅菌洗浄機材、血液分析装置と各種医薬品や機材をもって編成されているもの。開頭開胸開腹全ての手術を90分程度で実施でき、24時間で10~15名の手術が可能とのことでした。以上で第11後方支援隊の観閲行進は完了、まだまだ観閲行進は続きます。
北大路機関:はるな

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平成24年7月九州北部豪雨災害 自衛隊災害派遣、人員440名車両150両にて継続中

2012-07-18 23:20:55 | 防災・災害派遣

◆九州方面には台風接近中

 九州北部豪雨災害派遣ですが、前回掲載以降の防衛省自衛隊発表からその概要を見てみましょう。

Simg_6622 福岡県の14日災害派遣要請と共に一時終了していた航空機の災害派遣任務が再開され、14日土曜日、15日日曜日には9機のヘリコプターが問う縫うされることとなりました。派遣部隊は土曜日の時点で第42普通科連隊(北熊本)、西部方面特科隊(湯布院)、西部方面航空隊(高遊原)、第4飛行隊(目達原)、第8飛行隊(高遊原)、第2施設群368施設中隊(湯布院)、第5施設団(小郡)、第4特科連隊(久留米)、第4高射特科大隊(久留米)、 第4戦車大隊(玖珠)、第4対舟艇対戦車隊(玖珠)、第41普通科連隊(別府)となっています。

Simg_6272 災害派遣部隊は防衛省最新の発表では第42普通科連隊(北熊本)、西部方面特科隊(湯布院)、西部方面航空隊(高遊原)、第4飛行隊(目達原)、第8飛行隊(高遊原)、第2施設群368施設中隊(湯布院)、第5施設団(小郡)、第4特科連隊(久留米)、第4高射特科大隊(久留米)、 第4戦車大隊(玖珠)、第4対舟艇対戦車隊(玖珠)、第41普通科連隊(別府)となっており、派遣規模は人員440名(延べ3880名)、車両150両(延べ1000両)、航空機0機(延べ30機) 航空機による災害派遣は収束しました。

Simg_6322 災害派遣は熊本県での14日以降の任務状況として、阿蘇市および南阿蘇村での行方不明者捜索活動、阿蘇市および南阿蘇村での三か所の給水支援、高森町での行方不明者捜索活動と航空機による情報収集活動が実施されました。16日までに高森町での行方不明者捜索任務が完了、17日までには航空機による情報収集活動が完了していますが、阿蘇市および南阿蘇村での行方不明者捜索活動、阿蘇市および南阿蘇村での給水支援は実施場所を一カ所に縮小していますが継続されています。

Simg_6085 大分県での14日以降の災害派遣は、竹田市における行方不明者捜索活動、竹田市役所から向山田地区への物資輸送支援、市内三カ所での給水支援、日田市小野鈴連町における避難支援活動と、市内二カ所での給水支援、そして航空機による情報収集が行われました。避難支援は15日までに完了しましたが、災害派遣地域に中津市三か所での給水支援が加わり、竹田市二か所、日田市二か所での給水支援、日田市での物資輸送支援と情報収集、16日には竹田市での給水支援三か所へ縮小、17日は日田市四カ所での給水支援が行われました。

Simg_4251 福岡県での災害派遣は14日に開始され、朝倉市と柳川市での孤立者救助活動、久留米市高良川での水防活動が行われました。これらは成果を出したようで、15日には八女市一か所での給水支援活動、として八女市星野村が孤立したためヘリコプターによる物資輸送支援活動を実施すると共に航空機による情報収集を実施しています。16日には八女市での給水活動実施と共に星野村への地上交通が応急復旧したようで地上からの輸送支援へ切り替え、引き続き航空機情報取集が行われましたが17日には八女市一か所での給水支援活動のみとなり、かなり復旧したといえるでしょう。

Simg_3210 災害派遣においてもっとも切迫しているのは堤防決壊を防ぐ水防活動で、これは土嚢による堤防補強などで、特殊な技術というよりも人員の投入が必要となります。一旦決壊しますと水位低下まで市街地の浸水が続きますので時間との戦いとなります。このほか、また今回の災害派遣は航空機による孤立住民救出がかなり行われていたようで、市街地での浸水による道路使用不能状況に際しては、ヘリコプターに頼るほかない、という状況を痛感させました。孤立地域へのヘリコプター空輸支援も行われていまして、これも今回の災害派遣の特色と言えるでしょう。災害派遣は現在も継続中です。

北大路機関:はるな

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ホルムズ海峡危機 米軍給油艦ラパバノック、ペルシャ湾で接近不審船銃撃 イランは反発

2012-07-17 23:26:34 | 国際・政治

◆自衛隊は海峡封鎖も視野にリムパック対機雷演習

 第二北大路機関へ掲載しましたが、米第五艦隊所属のヘンリーJカイザー級給油艦ラパハノックがアラブ首長国連邦沖のペルシャ湾で接近してきた不審船舶へ銃撃を行いました。

Himg_7113 米第五艦隊発表では16日アラブ首長国連邦沖で発生、AP通信によればこの銃撃により不審船で一名が死亡、三名が負傷したとのことです。イラン経済制裁に端を発しイランが海峡武力封鎖を示唆したホルムズ海峡危機が生起して以来、実際に火力が行使される事案は今回が初めてではないでしょうか。写真はヘンリーJカイザー級給油艦、佐世保で撮影したものです。AFP通信によれば、銃撃を受けたのはインド漁船で、警告を無視し接近したためですが、給油艦を貨物船と見間違えた可能性もあるやもしれません。

Himg_1164 アラブ首長国連邦はイランとはペルシャ湾を隔てて対岸にあります。米海軍はイランの経済制裁への反発として世界の重要な石油海上交通路ホルムズ海峡の海軍による封鎖示唆により発生したホルムズ海峡危機に際し、イギリス海軍のミサイル駆逐艦派遣に続いて原子力空母エイブラハムリンカーンを派遣して以来継続的に艦艇を派遣し、ペルシャ湾での警戒監視にあたっています。イラン海軍は小型戦闘艦艇と少数の潜水艦を中心といするもので、特にイラン海軍小型艦艇の挑発行動が続いていたことを背景に小型戦闘艇へ警戒が集まっていた、こうした状況下で発生しました。

Himg_4913 イラン政府は今回の事案に鋭く反応し、イラン外務省報道官は記者会見において我々はあらゆる手段を用いて外国軍を排除しペルシャ湾を防衛する、と発言。イランのサレヒ外相もイランはホルムズ海峡の安定と平和について翁関心と努力を払ってきている、としてアメリカ側を牽制しています。無論、ホルムズ海峡は国際海峡であり、ペルシャ湾沿岸はイラン以外にサウジアラビア、カタール、バーレーン、クウェート、アラブ首長国連邦、イラクの領海と接続水域があり、イランの領海ではありません。

Himg_6934 ただ、この海域への緊張が高まれば、我が国としても厳しい判断を迫られることになるでしょう。過去にはイランイラク戦争に際してタンカーへの無差別攻撃が示唆された際や、リビアの特務艦によるスエズ運河機雷敷設事案、湾岸戦争において石油依存度の高い我が国はペルシャ湾への海上自衛隊派遣を求められてきましたが、資金拠出を重視し、同時に原子力発電の重視による石油依存度低下を目指してきました。この方式が福島第一原子力発電所事故以降厳しくなっている、これを忘れてはならないでしょう。

Bimg_7132 そして本日、海上自衛隊は現在実施中のハワイ沖での環太平洋合同演習リムパック2012においてオーストラリア海軍との間で初の対機雷戦訓練を実施しました。リムパックへは海上自衛隊よりヘリコプター搭載護衛艦しらね、イージス艦みょうこう、掃海母艦ぶんご、P-3C哨戒機3機が派遣中です。今回は特に水中処分隊により、音波測定により発見された機雷を無力化するという運用が行われ、日豪間でのリムパック演習へ海上自衛隊が対機雷戦訓練を実施する、というのは初めてとのことです。

Bimg_6858 リムパックでの対機雷訓練は今回の事件とは直接無関係ですが、防衛省はホルムズ海峡危機に際して、イラン海軍が機雷封鎖などの強硬手段に出た場合への多国間対処の演練も演習目的に含まれる可能性がある、NHK報道に明示されていました。実際問題として、機雷は費用対効果においてかなり有用な装備、即ち敷設されたならば処理に大きな課題を突き付ける装備であり、ホルムズ海峡危機が機雷戦へ転換した場合を想定する必要性はあるのですが、兆候がわかりにくく、即応という概念あ自衛隊以外に政府にも突き付けられるところです。

Himg_7095 さて、今回何故給油艦は銃撃を行ったのでしょうか。これは過去のテロ事件の戦訓があります。米海軍の対応ですが、2000年10月12日のイージス艦コール爆破事件以来神経質になっています。写真は同型のアーレイバーク級ミサイル駆逐艦。コール爆破事件とはイエメンのアデン港に停泊中のイージス艦へ不審な小型ボートが接近、自爆したことで12mもの破口が生じ、幸い艦の中枢部分は無事で沈没はしませんでしたが17名の乗員が死亡、修理に2003年まで要しました。

Himg_9132_1 この事件以降、米海軍はあらゆる艦艇へ機関銃の増設を行っています。横須賀基地での一般公開などでも艦橋部分や船体部分に12.7mm機関銃や25mm機関砲などが増設されており、機関銃は単装と連装などで六カ所から八カ所、それに左右両舷に機関砲が搭載されています。報道を見る限りでは警告を無視して接近したとのことですから、自爆攻撃を行うのか否か、接近船舶の意図は図れず、銃撃と報じられていますので決して射程が大きくない機関銃の射程内まで警告無視での接近し、これ対し射撃が加えられるのは致し方ないといえるやもしれません。

Himg_1430 イラン政府の対応により緊張が高まったホルムズ海峡危機ですが、現時点ではこの海峡への機雷封鎖など具体的行動に移される兆候はありません。具体的には緊張状態が高いまま長期間推移する可能性が高まっているということで、今後は偶発的衝突へも含め警戒を続ける必要があるでしょう。特に東日本大震災以降、我が国は戦後初めて原子力政策を開始して以来化石燃料へのエネルギー政策の結果的なものではありますが転換をおこなっています。

Bimg_7579 原子力政策からの脱却を図るも図らないも代替エネルギー確保の如何というものが論議の根幹を左右させる問題となりますので、特に後者への政策を実施する場合には世界各国が資源外交としてリスクの共有へ進んできた方式へ、参加することも求められるわけです。問題はイランの核開発に起因し経済制裁が行われたことがホルムズ海峡危機の発端ですが、核開発を進めるイランの石油輸出重要海峡封鎖示唆、因縁めいたものさえも感じるものですが、必要な措置はどうあるべきか、最悪の状況に備えつつ、何故か日本政府が放棄している外交努力も含め予防外交を進めなければなりません。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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ヘリコプター護衛艦くらま就役30周年記念一般公開③ 倉島桟橋対岸と弓張岳山頂俯瞰風景

2012-07-16 23:35:07 | 海上自衛隊 催事
◆くらまを市内で見てみよう!
 佐世保基地で護衛艦くらま一般公開を見学して後、いろいろと市内から見てみることとしました。
Kimg_7625 護衛艦くらま。夏を思わせる立派な雲が青空に映えて、この写真を撮った当方も暑さを熱さとして実感していました。撮影位置からもう少し先に土砂砂利埠頭、コンクリート原料とするのでしょうか、その場所から撮影するとよい、と聞いたのですが、なんでもガイドブックに載っているほどの有名地らしいのですが、どう見ても立ち入り禁止の場所ですね。
Kimg_7637 この写真を撮影した場所では斜め後ろからしか見えないのですが、紹介してもらった場所、これは常識で考えれば危険地なのですよ、土砂というのはすぐ流れてきますし、土日ならば作業員がいないので立ち入りできる、とガイドブックにも書かれていたそうなのですが、絶対やってはいけません、迷惑がかかります。埋まったら見つかるのは翌日、もちろん残念な状態で。
Kimg_7640 夏空と佐世保基地。立神桟橋と倉島桟橋と共に九州らしい風景、お気に入りの一枚です。暑かったのですが、工業地帯的な場所でして、土日では営業している飲食店もなかなか見つかりません、これ以上進んでも撮影位置はなさそう、ホームセンターで飲み物を購入しそのまま戻ることとしました。やはり撮影地は自分の足で踏破して見つけなければなりません。
Kimg_7680 弓張岳展望台へ、佐世保撮影となれば佐世保駅前バスターミナルから一日に数本、平日と休日の運行本数が極端に違い、三時間に一本程度と運行本数がものすごく少ないバス路線ですが、ここからの俯瞰風景は壮大そのもの。ただ、弓張岳行きのバスが終点から次の発車まで12分程度、撮影時間は賞味5分です。ちなみにこの場所、タクシーで往復すると2800円くらいかかる。
Kimg_7687 強襲揚陸艦エセックス。今は日本を去り、ボノムリシャールが任務に就いているこの艦はワスプ級二番艦で満載排水量40532t、全長257.3m、全幅42.7m、喫水8.1mと大型。主機は70000hpの蒸気タービン二基で最大速力は22ノット、ヘリと揚陸艇での強襲揚陸を行う艦。飛行甲板には9か所のヘリコプター発着スポットを有し、ヘリコプター42機とVSTOL攻撃機8機を搭載、乗員1077名に加え海兵隊員1870名を輸送可能、艦内には2860?の貨物収容区間、1858㎡の車両区画があり、エアクッション揚陸艇LCACなら3隻、揚陸艇LCMならば12隻が収容できるという。
Kimg_7692 海上自衛隊の艦艇。左から補給艦はまな、イージス艦こんごう、護衛艦きりさめ、護衛艦ありあけ。はまな、は補給艦とわだ型で満載排水量12150t、一個護衛隊群への燃料と物資やミサイル、補給部品などを搭載します。こんごう、はミサイル護衛艦こんごう型の一番艦でイージスシステムを搭載した海上自衛隊初の護衛艦、満載排水量は9500tに達し21目標を遠距離中距離近距離で対処できるほか弾道ミサイルへの対処能力をも有する護衛艦です。きりさめ、ありあけ、は護衛艦むらさめ型で満載排水量6200t、対空対潜対水上各種装備を搭載しステルス性と情報共有を重視した護衛艦です。
Kimg_7698 護衛艦は、ミサイル護衛艦しまかぜ、護衛艦あけぼの。しまかぜ、はミサイル護衛艦はたかぜ型の二番艦でターターシステムを搭載し満載排水量5950t。あけぼの、は護衛艦むらさめ型。LSD-39MountVernon、ドック型揚陸艦マウントヴァーノンはアンカレジ級の一隻で1972年就役、満載排水量13700t。MCM-7Patriot、掃海艦パトリオット、木造船体をFRPでコーティングしたアヴェンジャー級掃海艦の七番艦、満載排水量1312t。その隣で少し見えるのはMCM-5Guardianガーディアン、こちらもアヴェンジャー級の一隻で五番艦となっています。
Kimg_7710 音響測定艦インペッカブル、T-AGOS-23で最新型です。ヴェクトリアス級音響測定艦の改良型ですが、予算の関係から1998年に一番艦が就役したのみ。満載排水量5368t、SURTASSとパッシヴ・アクティブ低周波ソナーにより音響情報を収取します。もう一隻はヴィクトリアス級音響測定艦、艦番号は確認できません。アヴェンジャー級掃海艇一番艦アヴェンジャーが停泊しているのも見えるでしょうか。
Kimg_7716 隣のホテルでは結婚式が開かれているようで、色とりどりの風船が一斉に空へと放たれていました。ここで佐世保の湾口の様子を見ることが出きるのですが、見ての通り非常に入り組んでいます。これは佐世保鎮守府が置かれた際に敵国の軍艦が入りにくいよう配慮したものですが、津波の侵入もはばむもので、水位上昇はあっても破壊力のある速度の大半は削がれている、非常に我が国の地形に配慮したものでした。
Kimg_7736 佐世保基地立神桟橋の護衛艦停泊位置の位置関係。海上自衛隊へ返還されている桟橋は、この立神桟橋では写真に或る突堤のみとなっていますが、此処だけで12隻程度の護衛艦は係留できることがわかるでしょう。佐世保基地を母港とする護衛艦は実は横須賀基地よりも多く、海上自衛隊最大の護衛艦母港となっています。
Kimg_7767 SSK佐世保重工ではドック型揚陸艦トーテュガ(LSD-46)が整備を受けています。佐世保基地や横須賀基地は米軍に撮り、艦艇整備能力も大きいのが価値を高めている要素です。トーテュガはホイットビーアイランド級の一隻で満載排水量15726t、全長185m。乗員340名に加え揚陸部隊500名を輸送可能、エアクッション揚陸艇LCACを4隻搭載することが可能で、このほか飛行甲板に露天係留方式としてCH-53大型ヘリコプターを搭載可能、東日本大震災へも派遣されたのは有名ですね。
Kimg_7783 佐世保教育隊の方を望見しますと、ミサイル艇二隻と水中処分母船が停泊しているのが見えます。佐世保警備隊には第3ミサイル艇隊のミサイル艇おおたか、しらたか、が所属しています。その背後には米海軍の車両貨物輸送艦ジョンPボボ少尉級の一隻が沖留されています。14140㎡の車両甲板とコンテナ530個を搭載安納で燃料6300kl及び真水310tタンクを搭載、五隻で海兵一個師団用装備を輸送するとのこと。
Kimg_7800 倉島桟橋、くらま、がみえますね。この桟橋は掃海艇の桟橋でもあるのですが、この日は全て出港していたみたい。このほか、支援船などが停泊している様子が見えます。冒頭の写真は白い停泊している船と駐車場がみえるのですが、この後ろの道路から撮りました。写真の通り、佐世保基地の周辺は住宅地になっています。
Kimg_7801 ヘリコプター搭載護衛艦くらま、護衛艦ゆうだち、多用途支援艦あまくさ、が停泊しています。弓張岳展望台からの俯瞰風景はこのようなところですが、とにかくバスで終点まで展開して、そのバスが始発として出発するまでに戻らないと三時間ほど待ちぼうけとなります、展望台からバス停まで小走りで二分ほど、余裕を以てバス停へと戻りました。そして撮影は次の位置へ、次回も続きます。
北大路機関:はるな

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海上自衛隊地方隊への一考察⑦ 沿岸防備へ中国海軍量産艦へ財政難下での苦しい対処法

2012-07-15 18:41:00 | 防衛・安全保障
◆自衛艦隊沿岸配備用量産艦の必要性と模索
 中国海軍のコルベットがフィリピンパラワン島沖で座礁する事故がありましたが、小型艦の動向活性化と共に想定以上の海軍規模拡大が続いています。そこで今回も量産艦という前回の話題を、あまり深く考えず思いついたことを列挙してみます。
Eimg_1095 幸いにして海上自衛隊は旧海軍以来の艦隊運用と用兵に関する戦術研究と装備計画を計画しており、一度優位性を確保した時点で、これら基盤の蓄積はそう簡単に凌駕されるものではありませんし、ソ連太平洋艦隊へ刺し違える想定で編成された海上自衛隊の優位は今後十年や十五年程度では破られることはないでしょう。ただ、90年代には四半世紀以上の差があったと表現されていますので、差は縮小していることは否定しません。
Eimg_1120 海上自衛隊はソ連太平洋艦隊への対処を想定したため、その水準は高いものです。護衛艦隊の四個護衛隊群編制は我が国海上防衛の至宝というべき存在ですが、この規模は第四次防衛力整備計画、石油危機下の進められた四次防下に推進された編制ですので、インフレ率が大きすぎ同型艦でも前年と翌年で建造費が倍加したという無茶苦茶な時代に実現できた規模であれば、恐らく現状の経済情勢においても継続することは可能でしょう、しかし増勢することはできません。無理に増勢すれば跳ね返しで無理な減勢が要請されるでしょう。
Eimg_1967 地方隊向けの量産艦。これは前回提示したのですが、いくつかの選択肢を。かなり大型となりますが、あきづき型を原型としてFCS-3の能力に重点を置き、SSM発射筒と20mmCIWSを廃止しSSMはVLSに搭載、搭載艇も複合艇と簡略化、代わりに25mm単装機関砲を両舷に各一基装備する、米海軍アーレイバーク級後期艦のような可能な限り簡略化した艦を護衛艦隊へ配備し、むらさめ型を地方隊に回すという方式がひとつ。
Eimg_7789 カナダのハリファクス級フリゲイトのような一案も。対潜戦闘のみを重視し、現行の一部艦が行っているようなSSMの廃止やSAMの簡略化を行い、大型で航続距離があったとしても運用費用と取得費用をある程度低減する、というもの。ハリファクス級は4770tありますが、昨年東京に来た艦は兵装の大半を下していたそうで。しかしシーキングの運用能力があり航空機運用を重視した艦ということがいえるでしょう。もっとも、同時多方面からの対処には一定数の艦艇が必要になるのですが。
Eimg_2440 地方隊向け量産艦ですが、前回3000t台を提示したのですが、実はこの規模の水上戦闘艦で有力なものは世界ではかなりあります。シンガポール海軍のフォーミダブル級は3200tで、フランスの設計によりステルス設計の重視とディーゼル機関による航続距離延伸という同国らしい設計を採り、ヘラクレス多機能レーダーと射程30kmのアスター15短SAMにより高い能力を持ち、そして乗員定数は86名と護衛艦はつゆき型の195名と比較し、大きく自動化されています。もっとも、かなり建造費は高いのと、ダメージコントロールをどう考えているかなど興味深いですね。
Eimg_1921 3200t、韓国海軍が2250tのウルサン級フリゲイトの後継艦として建造する新型艦もこの規模となるようです。舞鶴へ寄港したことがある5600tのイスンシン級を小型化した形状となるようで、これまでの水上戦闘艦が船体規模に対して重武装となっていたため、荒天時の復元性が悪く一定以上の海象状況では海上自衛隊の護衛艦であれば行動できる状況であっても基地から出ることが出来ませんでした。
Eimg_2522 ただ、間違えても中古艦には手を出せないもの。イギリス製23型フリゲイトや22型フリゲイトなどは近年盛んに輸出されており、一見安価に見えるものもあるのですが、火器管制装置や電装品が異なり、データリンクへ加入させるまでの手間を考えた場合、10隻単位で一つの整備体系を導入できる方式とした場合でも、仕様変更への手間を考えた場合、これは得策とは言えないのです。
Eimg_1602 さて、海上自衛隊では護衛艦は大型化を続けていますが、中国海軍は量産艦の増強に努めており、満載排水量4000tの江凱Ⅱ型フリゲイトは15番艦が進水、火器管制システムのZKJ-7は同時多目標処理能力が限定的という情報を信じるならば、海上自衛隊のFCS-2より以前の水準ではあるのですが、一番艦進水式から六年で15隻を揃えており、五年間で12隻の護衛艦はつゆき型を建造した最盛期と同規模となりました。もっとも、中国海軍の量産艦シフトは、蘭州型とも呼ばれる高性能な旅洋型の建造費が大きすぎたため、という側面はあるようですけれども。
Eimg_2940 海上自衛隊は7000t級の大型艦を建造していますが、対して今年五月には新型の056型コルベットの進水式が行われ、本年中に4隻が進水式を迎えるとされる量産性重視を示したものとなりました。速力を22ノットで対潜兵装を排し水上打撃力と共に陸戦部隊の同乗を視野に入れた新型艦で、満載排水量は1200t程度ながら18ノットでの航続距離は9000浬と比較的長い領域警備重視の新型艦となっています。
Eimg_1456 インド海軍のミサイルコルベット。写真のようにコルベットは個艦防空能力が限定されるため、経空脅威状況下では航空優勢確保の状況以外での運用が制限されるものとなっています。しかし、対艦攻撃能力が低い東南アジア地域の空軍部隊に対してはその航空優勢競合地域においても運用することが可能で、長大な航続距離は我が国南西諸島はもとより小笠原諸島に対しても脅威を及ぼすこととなるでしょう。
Eimg_8447 重要な点は二つあり、我が国への直接的脅威、もう一つは周辺国の外交政策への影響です。具体的には前者が、領域警備に対して同時多数が多方向より進出した場合対応できるのかという点と共に我が政府が国民から防衛を達成するに足らずとして外交政策の妥協を強いる世論が形成される可能性、後者は実質的な砲艦外交により我が国に利することが無い外交政策へ周辺国が誘導され影響下に収められるということ。
Eimg_7246 我が国への直接的脅威ですが、護衛艦隊の能力であれば、殲滅することは可能ですが、殲滅ではなく戦争状態に至らない状況下で排除する、領域への接近を拒否することは、特に数が多くなり同時多数型方向から展開し、離島地域や沿岸部に隣接する公海上から示威行動を行うことに対して我が国施政権が及んでいる点を内外へ強調するには十分とは言えず、国内に対しても我が国は包囲されているとの誤解を生み、結果的に対中政策へ譲歩を強いる世論が醸成される可能性があります。
Eimg_5922 周辺国対外政策への影響。現時点では対抗している状況です。経済成長進むヴェトナムは1979年に中国からの侵攻を受けた中越紛争や1988年の中国軍による南沙諸島守備隊攻撃の反省から停滞していた海軍の再編計画を稼働させ、キロ級潜水艦6隻の緊急取得とフリゲイト2隻の導入計画を進めていますが、ヴェトナム施政権が及ぶ島嶼部での対立が続いているほか、フィリピンは第二次大戦中の中古駆逐艦の代用として40年型落ちの米沿岸警備隊大型カッターの取得を行い境界線を巡りつい先日まで対峙していました。
Eimg_6015 しかし、中国海軍の行動が恒常化し、この海域での優勢を中国海軍が確保した場合、東南アジア諸国の外交政策が中国寄り、言い換えれば排日的に転換する可能性があり、この海域を通る我が国シーレーンに対し重大な影響が及ぶこととなるでしょう。あたかも我が国が第二次大戦中に行った東南アジアへの対応を批判している中国が踏襲しているように印象付けられるのですが。
Eimg_5325 我が国としては、ソマリア沖海賊対処任務やパシフィックパートナーシップなど多国間訓練を背景に、この海域を恒常的に大型艦を航行させることを以て、結果的にプレゼンスを示すことが出来ています。海上自衛隊の運用計画に大きな影響を与えているこれら任務増大は間接的に我が国プレゼンスの誇示という意味では評価されるべきやもしれません。
Eimg_1386 こうした中で、どうしても問題となるのは艦艇の不足です。正直なところ、はるな型、たちかぜ型も蒸気タービン機関を効率的に延命できたならば練習艦に転用してガスタービン艦を自衛艦隊に戻せたのではないか、と思うところはりますし、はつゆき型の除籍艦についても延命をもう少し真剣に考えて良かったのではないか、と考えるのですが、延命に限界があることも事実です。
Eimg_7760 特にこの点で、護衛艦隊護衛隊群は外洋作戦に重点を置き、その枠内で沿岸任務を行うと共に自衛艦隊直轄部隊として二桁護衛隊の位置づけをある程度考える必要があると考えるのです。即ち、外洋作戦の比重というものは相応に高くあるべきで、沿岸警備に手手一杯となている状況に陥ってしまえば本土は守ることが出来たとしても外堀が埋められてしまう、ということ。
Eimg_9258 これを避けるためには有事の際の運用計画へ、ある程度の余裕を見てゆく必要があるのですが、平時における多数の外国艦船への警戒任務により稼働率が左右されてしまい、または忙殺されてしまい対応できなくなる可能性、というものはありますし、外洋作戦へ必要な部隊を展開させた場合本土防衛が手薄となってしまうのではないか、という危惧、杞憂でしょうか。
Eimg_8695_1 ここで、前回の量産艦という方策、他の一案としては非常に指揮系統や運用への概念の相違から難しいのですが海上保安庁巡視船に沿岸警備の一翼を担うと共に特定離島海域ではミサイル艇もしくは沿岸砲兵部隊を配置し支援するという方式、護衛艦未満ミサイル艇以上の多用途哨戒艦を防災枠とともに建造し支援に充てるという方式をこれまでに提示しました。
Img_9033 逆に言うならば、海上自衛隊は1000浬シーレーン防衛を念頭に整備計画を進めてきましたが、現在求められる能力は既にこれを越えていますし、現在実施されている任務もこれを越えたものとなっています。加えて、脅威に際して、外洋作戦を維持しつつ島嶼部防衛を考えた場合、防衛力は充分であるのか、具体的な指針が見えてこないわけで、具現化する脅威へ我が国の防衛は一定以上万全だ、という政府の指針が示されないのですから。
Img_5758 現実問題として艦艇数を増勢出来るならば、これに越したことはないのですが、定数を冷戦時代末期の60隻とした場合、毎年2隻から3隻の護衛艦を建造しなければならないのですが、現実的に現状の防衛大綱定数48隻、これに数隻を加えることは、現実的に不可能ではあるが、検討次第では難しいのを圧して、というところでしょう。
Img_7007 防衛費を増額すればいい、というのは一番稚拙な考えではあります。現在は税収の二倍以上の一般会計、歳入の二倍の歳出となっており、本来は国債への依存度を下げるという観点から税収を二倍としなければならない状況です。この中で膨大な南海トラフ地震への準備と東日本大震災からの復興を行わなければならず、仮にあらゆる税金が二倍以上となった場合、対応できるのでしょうか。
Eimg_1227 他方で、例えば防災に資するという側面から防災予算を含めて防衛に資する装備を導入する、経済活性化の景気刺激策としての防衛産業を強調する、原子力災害対策もしくは脱原子力政策からの資源確保への安全保障政策としてなど、多用途性を強調し一見姑息な手法と取られる方式を使いつつ、考えてゆくしかないわけで、可能ならば再び景気成長の方策を模索してほしい、この一点に尽きます。
北大路機関:はるな

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九州豪雨(7.11九州北部豪雨災害)熊本県・大分県・福岡県自衛隊災害派遣実施状況

2012-07-14 23:29:25 | 防災・災害派遣

◆北部九州四県43万人に避難指示・避難勧告

 7月11日からの北部九州における豪雨被害は14日現在、死者22名、行方不明者9名、本日14日も引き続き豪雨となっています。

Simg_2842_1 12日早朝に熊本県と大分県が自衛隊へ災害派遣を要請、防衛省HPには発表されていませんがNHK本日1612時の報道では福岡県も災害派遣要請を出しました。本日夜の時点で避難勧告と避難指示は43万人に対し出されており、損壊家屋161戸、床上床下浸水3600戸以上、消防や警察、地元水防団の対応も限界を来したとの判断から熊本県は蒲島熊本県知事より12日0649時に第8師団へ水防活動及び人命救助に関する災害派遣を要請、広瀬大分県知事は12日0750時に西部方面特科隊へ孤立住民の救助に関する災害派遣要請を出しました。

Simg_3934 陸上自衛隊はこの要請に応じ、北熊本駐屯地第43普通科連隊、湯布院駐屯地西部方面特科隊、高遊原分屯地西部方面航空隊、目達原駐屯地第4飛行隊、高遊原分屯地第8飛行隊、飯塚駐屯地第2施設群より災害派遣部隊を展開させています。13日1900時までの災害派遣規模は人員720名で延べ派遣規模は1350名、車両派遣規模は170両となっており延べ派遣規模は310両。航空機による住民救出は全員救出を以て完了しましたが、延べ派遣規模は航空機15機となっています。福岡県が本日災害派遣要請を第4師団へ出しましたので、この数は多くなることでしょう。

Simg_6577 熊本県災害派遣部隊は派遣要請を受け航空機などによる情報取集を開始、約三時間後の1000時には熊本市水道町大甲橋付近での決壊危険堤防に対する普通科部隊による水防活動を開始すると共に熊本市内での孤立住民の救助を実施、大規模土石流により大きな被害が出た阿蘇市内牧地区における住民避難支援活動を行い、併せて孤立住民救助を実施、南阿蘇村での行方不明者捜索活動を開始しました。13日には災害派遣要請に給水支援が加わり、阿蘇地区での行方不明者捜索、高森町での行方不明者捜索とともに阿蘇地区三か所での給水支援を開始しました。

Simg_4093 大分県災害派遣部隊は災害派遣要請より34分後の0824時に第一次派遣部隊20名が湯布院駐屯地を出発、竹田市竹田地区における孤立うう明救助活動を時資すると共に航空機による情報収集活動を実施、13日には災害派遣要請に給水支援が加わり、竹田市での行方不明者捜索とともに市内二か所での給水支援活動を行っています。孤立者救助活動は航空機が使われ、このほか渡河ボートなども救援活動に使用されています。現場ではかなりの雨量があり、行方不明者捜索は二次災害の危険のなか進められているようです。

Simg_2856_1 福岡県の小川知事は本日1612時のNHK報道によれば、朝倉市、八女市、久留米市への災害に対し第4師団へ災害派遣を要請しました。南部筑後地方での豪雨被害が起きく、僅か四時間で総雨量415mmとなるなど記録的な豪雨により堤防の決壊などが相次いでいます。土砂崩れは181個所となり、孤立地域での住民救助活動等を要請したと報じられ、現在も被害は拡大しています。気象庁によれば、九州北部地方での気象は引き続き不安定であり、14日1800時から15日1800時まで本州山口県を含め雨量は多いところで120mmに達する見込みとされ、引き続き土砂災害などに対し厳重な警戒が必要です。

北大路機関:はるな

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平成二十四年度七月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2012.07.14・15・16)

2012-07-13 21:51:55 | 北大路機関 広報
◆自衛隊関連行事
 今週末の自衛隊関連行事は第5旅団管区の普通科部隊行事と航空自衛隊分屯基地祭、そして多くの艦艇一般公開などが行われます。なお、九州豪雨の影響が拡大した場合、行事への影響もあり得ることをご了承ください。
Gimg_0672 美幌駐屯地、北海道網走郡美幌町にある駐屯地で第5旅団隷下の第6普通科連隊が駐屯しています。第6普通科連隊は1989年に73式大型トラックで充足され自動車化が為されました。現在は第5師団の旅団化に伴い、重迫撃砲中隊を2004年に廃止、東日本大震災のあった2011年3月に第四中隊を廃止し三個中隊編制となっています。
Gimg_2330 美幌駐屯地の位置ですが、女満別空港から6kmと近距離にありますが、石北本線の美幌駅からは4kmほど離れているのでタクシーが必要になりそう。北海道の駐屯地は鉄道本数が少ないことが多いので必要ならば迷わず特急を使いたいところですね。普通科連隊の駐屯地ですので旅団からの戦車や自走榴弾砲の支援と共に訓練展示などを期待したいところです。
Gimg_6645 釧路駐屯地、釧路郡釧路町に所在する駐屯地で近傍には我が杭に最大の長距離実弾射撃を行うことが可能な矢臼別演習場があり、第5旅団隷下の第27普通科連隊と北部方面施設隊隷下の第342施設中隊が駐屯している駐屯地。重迫撃砲中隊を2004年に廃止、東日本大震災のあった2011年3月に第四中隊を廃止し三個中隊編制へ、第6普通科連隊と同じ改編が行われました。
Gimg_3522 第27普通科連隊の第三中隊は別海駐屯地に分駐しているので、第一中隊と第二中隊が釧路駐屯地に駐屯しています。たし、27連隊は第5師団の機械化普通科連隊という位置づけにあったと思うのですが、どうでしたか、この部隊、現在装甲車は分散配置となっているのか集中配備となっているのか、第11旅団と比べてしまいますが、気になります。駐屯地の位置は17km先にたんちょう釧路空港がありますが、鉄道は東釧路駅から4km、遠矢駅から4kmで、本数にご注意ください。
Gimg_3586 小松島航空基地一般公開が16日月曜日に行われます。これは小松島港まつり協賛行事として行われる行事でSH-60J/K哨戒ヘリコプターを運用する第24航空隊が展開しています。第24航空隊は大村航空基地の第22航空群隷下部隊で、1941年に創設された歴史ある航空基地ですが、昭和南海地震では津波被害に遭っていますが、海軍解散後で海上自衛隊創設前とあり、駐留するイギリス軍が高台で怖い目にあったこと以外自衛隊と海軍の被害はなかったようです。隊本部は旧海軍の建物であり、小松島港には護衛艦いなづま一般公開の予定です。
Gimg_5108 山田分屯基地、岩手県下閉伊郡山田町に所在する三沢基地の分屯基地でレーダーサイトである第37警戒隊が展開しています。十二神山が基地敷地にあり、飛行展示が1030から1120にかけ実施予定、千歳基地のF-15と三沢基地のF-2,E-2C、それに新潟分屯基地よりUH-60が飛行展示を予定しています。ちなみに雨天中止。模擬戦も1300から予定されているとのこと。
Gimg_6641 留萌港艦艇広報、北海道の留萌港で海上自衛隊多用途支援艦の寄港と一般公開が予定されています。多用途支援艦、どの艦なのでしょうかね。7月15日と16日月曜日の午前中に一般公開が予定と旭川地方協力本部HPに差異があるのですが、海上自衛隊HPによれば14日土曜日と15日日曜日が一般公開の予定と記載されていますので、双方に違いがあり足を運ばれる際は地本ご確認ください。
Gimg_0342 福島県小名浜港掃海艇のとじま一般公開、小名浜港第二埠頭アクアマリンふくしま北で14日1500~1630と15日0900~1000と1300~1530に一般公開が予定されています。体験航海は行われませんが日曜日は自衛隊装備品展示が行われると発表されています。ただ、海上自衛隊HPのほうでは16日も一般公開が行われると記載がある。
Gimg_9134 港フェスタ金沢2012護衛艦おおよど、が一般公開と体験航海を予定しています。実は水曜日から艦艇広報として金沢港に入港していたようです。一般公開は石川地本HPでは土曜日と日曜日に行われるとありますが、ポスターでは15日日曜日に1330~1600時に行われると記されており、どちらが正しいのか。金沢港で一般公開ですが詳しくは金沢港無量寺埠頭です。
Gimg_8840 姫路港艦艇見学2012護衛艦はるゆき一般公開。JR姫路駅や山陽姫路駅から神姫バス姫路港行きにて行くことが出来ます。一般公開は16日月曜日の1000~1100時と1300~1530時で、このほか姫路港では航空自衛隊のペトリオットミサイル、陸上自衛隊の82式指揮通信車も一般公開が行われるとのこと。
Gimg_4494 香川県坂出港林田岸壁護衛艦いせ一般公開。15日0900~1600と16日0900~1200に一般公開予定で、JR坂出駅から岸壁までのシャトルバスが運行されるほか、一般公開岸壁から徒歩五分の場所に駐車場が用意されます。このほか、一般公開が行われる15日1300時に陸上自衛隊ヘリコプター二機編隊による飛行展示が行われるとのこと。この一般公開が海上自衛隊一般公開では今週末最大の規模と言えるでしょう。
Gimg_5131 小松島港まつり護衛艦いなづま一般公開。小松島港赤石岸壁で15日日曜日と16日月曜日に0900~1100と1300~1600時、月曜日は1500時までですが一般公開が予定、赤石岸壁ですが阿波赤石駅から9kmもあり、数年前に阿波赤石駅からタクシーを利用するつもりで足を運べば無人駅、タクシーも通らず大変なことがありました。公共交通機関ご利用の方は南小松島駅からタクシーか予め阿波赤石駅前までタクシーを電話予約することをお勧めします。航空自衛隊第2高射群第6高射隊と陸上自衛隊第15普通科連隊第14施設隊が装備品展示を予定しているとのことでした。
Gimg_5906 第53回高知みなとまつり護衛艦せんだい一般公開、体験航海。高知新港第七埠頭第二岸壁へ入港し、一般公開は14日土曜日が1400~1630と15日日曜日に1300~1630、16日月曜日にも1300~1630の一般公開予定。体験航海は乗艦券が必要でこちらの申し込みは終了していますが15日の0900~1030、16日0900~1030に予定、受け付けは0800時からとのことですが、出入港を撮影することが出来るでしょう。
Gimg_7575 博多自衛艦一般公開護衛艦じんつう一般公開、博多港中央ふ頭第3号岸壁で7月16日に行われます。0900~1600時に予定、尚、他の一般公開も同様ですが終了時刻30分前が受け付け終了時刻となっていますので、埠頭からの撮影だけではなく一般公開を見学される方は、30分前までに受付を済ませるようにしてください。
Gimg_9512 サマーフェスタ IN 佐伯、多用途支援艦げんかい母港です。大分県佐伯市にありますが呉地方隊管区にあり、旧海軍では小沢提督の空母機動部隊がレイテ沖海戦へ出港した事例が有名ですが、旧海軍の重要な泊地としての位置づけに或る重要港湾です。長くなりましたが、今週末に予定されている一般公開はこのような内容でした。月曜日が祭日の海の日ということで海上自衛隊行事が盛りだくさんというところ。このほか、お気づきの行事や艦艇一般公開などがありましたら、コメント欄などでお教えいただけると幸いです。
◆駐屯地祭・基地祭・航空祭
注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える⑩ 第一線部隊の情報処理・指揮統制能力強化

2012-07-12 23:10:50 | 防災・災害派遣

◆データ通信能力有する新指揮通信車が必要
 南海トラフ地震、特集第二回において広大な被災地へ災害派遣部隊の通信確保問題を提示しましたが、この関連でもうひとつ。
Nimg_5791 南海トラフ地震は想定される最大規模で発生した場合、中部方面隊管区を中心に東部方面隊管区、西部方面隊管区が大きな被害を受ける事となるでしょう。当然全国からの部隊が災害派遣へ支援へ展開しなければならなくなるのですが、これら災害派遣増援部隊の指揮統制を行うにあたって、現状の82式指揮通信車の通信能力は充分な水準なのでしょうか。
Nimg_2522 NBC偵察車が、現状の82式指揮通信車派生型の化学防護車よりもかなり大型のものとなっており、こちらのNBC防護車の車体を流用し情報指揮車として制式化することはできないのか、という素朴な疑問が湧いてきます。車体は大型ですので、大型モニターやPCを配置し、指揮官が画像情報を得ることが出来ますし、発電能力の余裕にも期待できるものがあります。
Nimg_3558 82式指揮通信車は、特科部隊の指揮通信用に導入されたもので、間接照準射撃を行う特科部隊には情報通信の迅速な伝送と共有が必要ということから導入当時としては高度な情報通信能力を有していました。しかし、制式化された1982年から今年で30年を経ています。特に当時としては一般的であった音声通信に重点を置いていることから、データ通信が行えない実情はかなり大きな問題となるかもしれません。
Nimg_1634 82式指揮通信車は231両が生産されており、将来装輪装甲車体系に後継車両の導入が計画されています。無線通信装置、今は多少変わっていることでしょうが82式指揮通信車には69式車両無線装置JVRC-F6(85式車両無線装置?),66式中無線装置JAN-GRC-N1/N11、71式軽受信機JAN/GRR-N4,車載装置JMT-N49が装備されています。この82式指揮通信車は駐屯地記念行事において体験乗車の定番ともなっていますので、乗られた方も多いかもしれませんが、車内には地図ボードと座席があり、音声情報を地図に書き込んでゆくという方式となっています。
Nimg_2043 東日本大震災では10万もの部隊を展開させ、任務に当たりました。さて、話を少し前に戻しますが1995年の阪神大震災において最も多くの被災者を瓦礫の下から救い出したのは被災地に近い伊丹駐屯地の第36普通科連隊ではなく、信太山駐屯地の第37普通科連隊でした。これはひとえに情報の集約を徹底して行ったため、ということを聞き、驚いたことがありました。
Nimg_4749 阪神大震災発災後、第36普通科連隊は近傍災害派遣を実施、阪急電鉄伊丹駅が高架ごと倒壊しており被害の大きさを即座に認識したとのことです。ここで36連隊長は管区内の被害状況の情報を迅速に収集し、特にどの地域へ集中して部隊を投入しなければならないのかを把握、第36連隊が兵庫県を管区とし、対して第37連隊が大阪府を管区としており、こちらから部隊を集中投入することで人命救助に寄与したとのことです。
Nimg_4137 72時間。さて、被災者が倒壊家屋の下での生存を維持できるのは発災後72時間が大きな目安となるそうです。さて、この72時間までに人員救助を完了させなければならず、だからこそ陸上自衛隊は基盤的防衛力として全国に部隊を配置しているわけです。一定の規模であれば管区連隊で対応し、これを超える規模の大規模災害に際しては師団など上級部隊の支援を、この上の規模に際しては方面隊や、これよりも上級部隊の支援を受けるというもの。
Nimg_0258 この中で、広く支援を受ける場合は、迅速に部隊が展開できなければこの72時間に間に合わなくなってしまうのですが、どの部隊を、どの地域へ、どの支援と共に投入させるのか、という指揮を如何に行うのかが重要となってくることは間違いないでしょう。この点で、かなり大きな問題となるのは現在の指揮通信車が通信能力が充分ではない、というものです。
Nimg_3908 上記のとおり、82式指揮通信車は四基の音声無線機で得た情報を順次地図ボードへグリースペンで書き込んでゆくという方式で情報を集約するのですが、現在の時代となりますと、もう少し優れた情報処理手段は無いのか、という点が気になってきます。もちろん、基幹連隊指揮統制システムを採用している部隊においてはもう少し進んでいるようですが、車体をもう少し大型化させたもので、画像情報を含め一定以上の通信帯域を衛星通信を含め確保し、画像情報、映像と地図情報を一致できるようしなければなりません。
Nimg_8873 特に無人航空機の一般化により自衛隊は小型無人機による上空からの情報を今後多数共有するようになります。無人機を以て上空から情報収集を行ったとしても、情報収集した情報を操作端末を有する場所まで展開して把握しなければならない、というのは余りに非効率ですし、連隊の管区は一都道府県という広大なものですので、情報を伝送し受信できなければなりません。
Nimg_5558 また、無人機からの情報伝送は、勿論師団通信大隊からの支援を受けなければならないのですが、駐屯地から前進し、運用を行う場合においては、被災地へ向かい走行中であっても情報を得て指揮官の判断に必要な情報を得ることが出来たならば、他管区から増援部隊として派遣される状況に際しても、到着後時間をおかず即座に救助人へ加入することが出来るでしょう。
Nimg_7984 東日本大震災では、被災地近傍の駐屯地が停電により電源喪失し、発電能力も喪失したため指揮官は無線情報を順次ボードに書き込む方式で情報収集に当たったのですが、情報の濃霧というべき状況に落いり隔靴掻痒という苦境の中で任務に当たったようです。ここで発電能力が充分ある指揮車において任務を展開していたならば、もう少し情報は得られたかもしれません。
Nimg_6012 このほか、これは先ほど記載しましたが、被災地へ急行する途中の部隊であっても車内において情報を収集し指揮統制を発信し受信することが出来たならば、例えば被災地へ遠方の駐屯地より、取り敢えず現地へ急行せよ、という英霊を受けると共に展開する車内にて派遣部隊の展開地域の命令を受け、必要であれば派遣される車上において戦闘序列を画定、大まかな現地での任務と捜索手順を構築することが出来るでしょう。
Img_0002a 理想的な状況は、指揮官が被災地へ向かう途中に、被災地の具体的展開地域を配分され、その後に連隊長が車内から、被災地上空の観測ヘリコプターや無人偵察機からの情報をリアルタイムで入手し、必要な支援部隊の要目を上級司令部へ要請すると共に、防災無線を通じて現地の自治体防災担当者と情報を得たうえで車両の待機位置等を把握する、こうした方式がもとめられるところ。
Nimg_2546 自衛隊としては、指揮通信車の新型は結局のところデータ通信能力を欠いている状況は問題となりますし、防災用として重要な車両と言う点を強く推すことで、ある程度予算査定において強みを持つことが出来るかもしれません。ただ、車体が大型となっていますので、戦闘時の生存性については考慮するべき部分が出てくるのかもしれませんが、派遣部隊の迅速な任務対応へ必要性は大きいと考えます。

北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

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