CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】ヴァン・ショーをあなたに

2017-08-03 21:48:07 | 読書感想文とか読み物レビウー
ヴァン・ショーをあなたに  作:近藤 史恵

以前にマカロンはマカロンという短編集を読んだ際、
これがシリーズ物だと知りまして、その前の編を探して
たどり着いたのがこの本でありました
これがシリーズの何作目になるのかはわかりませんが、
フランス料理を具材としつつ、人間関係というか
人生や、人との付き合い方についてあれこれと考えさせられる
ちょっとだけ推理のある短編集でありました
相変わらず面白いんだが、自転車競技シリーズとの差というか
違いに驚かされるばかりなのであります

相変わらず、わからないけども凄いおいしそうなフランス料理の数々と
それにまつわったり、お店にまつわったりする人たちのやりとり
そして、決して笑って終わる話ではない、少し、
ぴりっと辛いというか、爽やか満足とは違うラストを迎える短編が
あれこれと堪能できて素晴らしかったのでありました

いくつもいい小編がありましたけども、
個人的に気に入ったのは、猫の出てくる話で
やっぱり猫に出てこられたらまけだよなと
勝手に一人ごちたりしつつ、
猫愛からのどたばた、そして、思いも寄らない結末みたいなのが
ほんわかと楽しく読めたのでありました
人の優しさというではないが、
ある種の身勝手でもあるんだけども、なかなかどうして
考えさせられるところというには
少し無理がある内容ではあったが、猫がやたら可愛い描写だったので
どうでもよいのである、秀逸だ

そればかりでは当然なくて、
新しいパン屋さんが出来るというときに、
人のコンプレックスから、真理というか
本当のことというのが紡ぎだされるという不思議さを描いていたのも
凄い面白くてというか、料理がエッセンスなのは間違いないけども
それ以上に、人間ドラマが凄い面白いなというか
共感といったらいいか、なんとも、切ない気持ちにさせられるところで
素晴らしいと感じたわけであります
読んでないとなんのことかわからんが、
家族など、親しい人を思う心というのは、あるとき
ひょんなことからわかったりするもんだと
そういう話が好きなのである、人情話なのである

そして、表題作もなるほどなぁというオチであったり
短いので、そんなに凝った謎解きではないけども
少しばかり、人間臭い謎があって、
それをシェフが鮮やかに解決してしまうというところが
お洒落といってはアレだけども、すらっと読めて
とての楽しく読み終えられるという
手軽さとともに、苦い感じのお話も織り交ぜて楽しめる
いいシリーズだと感じ入ったのでありました

嫌な客でもないが、そういう折り合いをどこでつけるか
どこで腹を立てるかというのもまた、考えさせられるところでありますね
人生、楽なことなんざ、どこにもないのだよと
言ってくれているようでもあるし、そんなことはまったくないのかもしれない
読み手によるなと、独り言も記しておく