CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】街道をゆく 40 台湾紀行

2017-08-15 18:20:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
街道をゆく 40 台湾紀行  著:司馬 遼太郎

超有名シリーズながら、読んだことなかったのです
そうか、台湾の話もやってたのかと
思わずこの巻だけを読んでしまったのですが
なかなか、興味深いというか、面白い読み物でありました

司馬遼太郎節といっていいのか、
あの独特の語り口と、現実と虚構がごたまぜになりつつ
まるで、全部本当だったかのように読み下せてしまう
軽妙で、面白い文章がたまらない一冊でありました

数奇な運命をたどった台湾という土地、あるいは
そこに住む人たちについて考えた、
この国を思うことで、国とは何かに思いをはせたと
そういう内容なのでありますが、
秀逸なのは、李登輝さんと対談をしてることであったり、
対談とは別に、話をしているというのも
これまたすごいことだなと思わされるのでありました
この本を読んでしまうと、どうやっても
李登輝という人物について調べたくなってしまうじゃないか

李登輝さんとは、年齢をほぼ同じくして、
太平洋戦争にかかわったという共通点もあり、
戦中派の昭和回顧ともいえる内容ながら、
昭和における台湾という国がよくよくわかるようで
非常に面白かったのでありました
この取材、刊行がおそらくは90年代ということなので
だいぶ経ってからのとはいえ、まだまだ
濃厚な昭和が残っている、あるいは、戦前の日本の姿、幻のようなものが
随所で見られるというのが面白く読めたのであります
当時は、相当数の日本語を話せる方がいたようで、
先住民族の人たちの共通語が日本語であるという話は
どうも、これが初出じゃないかなと思われたりしたのでありますが
日本名でさらりと名乗られることや、
日本語で優しく語りかけられるという体験が
司馬先生を通して、文章として今に届くとなかなか
感慨深いと思われたのでありました

台湾ルポでありながら、観光案内とは当然まったく違う、
この国の歴史について、考えながら
そういう遺構というでもない、歴史の匂いみたいなのを
街のそちこちに見てまわるといったところが
精細な描写ではなく、簡単なというか、
さらりとした会話から立ち上っていて、詩的でもないのに
なんか情緒をかきたてられるというところが
非常にステキだと思わされるのでありました
いちいち格好いいと感じるのであります

ある種、本土よりも純粋な日本人教育がなされていたという
このくだりが素敵で、ステキでたまりませんでした
そのありもしないものが、もしかしたら戦前には
一部、あるいは、一縷、いたのかもしれないと
そう思わせてくれる何かがあるように
思えてならないのであります

悪さをする日本人というのが増えて、
ずいぶんと幻滅をされたのではないかと
ずっと危惧というか、勝手に心配していたのでありますが
それすらもおごりであり、これらの話は、
あくまで台湾における思い出であり、懐かしい話でしかないと
そう思えばこそ、
意に添えるではないが、応えられる何かじゃないかと思ったりしたのでありました

わけわからん私情の感想が入ってしまったが
語り口が、つらつらしてしまう、司馬遼太郎節も堪能できて
久しぶりに楽しい読書でありました