「秘密の花園」、完結編。
ひとつ前の感想に、何を書いていたのか読み直してみました。
の感想に書いてある事が、私のこの物語の大きな感想なのかも知れないと思いました。
「秘密の花園」はアーサー卿の、人生の大いなる懺悔の物語だと思います、人として生きた。
かつての、もう私たち普通の人間にとっては半世紀近くなんて、大いなる昔です。その昔に一度は最終回を迎えた「ポーの一族」。その時、いろいろな人の物語が語られてきたと言うのに、アーサー卿だけは、ランプトンの絵、つまりエドガーの絵でしか語られず、そしてエドガーとアランが去って嘆くオービンの前に、霧の中で幻のように現れて消え去って行きます。
その時私たちは、アーサー卿が人としてエドガーと出会い、そしてポーの一族に加わったのだという事を知り、そしてエドガーとアーサー卿の物語を、ただひたすら妄想するしかなかったのでした。
そして時を経て描かれたアーサー卿とエドガーたちとの物語。
やはり私は思ってしまったのです。
これが描かれるのには、この萩尾望都氏の人生の時間が必要であったのではないかと。
画像の下からはネタバレ感想です。
人生の終わりには、人は悔いる事が山のようにあるのかもしれません。だけどアーサーは、父の新しい家族であるセスと出会い、父への想いなどにケリをつけていくのでしたね。
そして一番の想い残していたパトリシアへの物語に決着が付けられたことは、本当に良かったし素敵でしたね。
「パトリシア 私と結婚してください。」の言葉には、ほんと、泣けました。
「これはぼくの夢の言葉なんだ。でも真実の言葉なんだ。」
それに対して、パトリシアも夢の言葉として、そのプロポーズに答えます。
だけどロンドンに帰ると、パトリシアは強い母に戻ります。このシーンも含めて好きだなと思いました。パトリシアは最初は夫の顔色ばかり窺っている、昔ながらの妻でしかなかったのに、この数年のアーサー卿との関わり合いで変わっていったのかもしれませんね。
好きと言えば、今回どのシーンも好きだったのですが、エドガーがアーサー卿にポーの一族に加わって欲しいと誘いに行った時、エドガーが静かに「あなたは適任なんだよ。」などと語ってる傍から、アランが「怪物になるって事だよ!!」とストレートトーク。
それを受けて、エドガーも去り際に言いましたね。
「アーサー、人間ていうのは、けっこう美味だよ。」と。
ロンドンの紳士服店に行って、最新流行のタイを求めるシルバーにも笑ってしまいましたが、最後に本当にしみじみとしたのは、やはりアーサー卿とジョン・オービンとの再会(と、言っていいのでしょうか。)ですよね。
目の前に、本物のアーサー卿がいるのに、100歳のオービンには分かりません。
だけど・・・・
本当に分かってないの ?
一見、話がトンチンカンな100歳の老人のように見えてしまうけれど、もしかしたら、彼には分かってたんじゃないかしら。
だからトンチンカンに見える話の応酬だけれど、さりげなくオービンは
「(エドガーに)会いましたか ?」と聞いてきたり
「彼らは何処に行ったのでしょうね?」と言ったりしたのではないかなと思ってしまったのでした。
そしてアーサーも、だから「ありがとう、ジョン・オービン」と言ったのかもしれません。あれは彼の本に対してだけの言葉じゃなかったのかも・・・・。
もしも、やはり何もわからなかったオービンとのすれ違いでしたら、永遠に生きていく者と、儚く消えていく者の出会いと別れのような気がして、切なかったですね。
だけどやっぱり分かっていての会話だったとしたら、きっとその日の夜、オービンは泣きながら
「強くずっと念じていれば、その想いは叶う日が来るのかもしれない。今日、私は・・・・」と日記に書き記した事でしょう・・・・・。
トップ画像は。2017年に撮った、「横浜イングリッシュガーデン」の薔薇のアーチです。本の紹介の下にも数枚貼っておきますね。
ふと思いついた、オマケ。
アーサー卿、永遠の命になってしまったので「享年」とは言わないか。
33歳で死去・・・
33歳 !?
一番びっくりしたのは、じつはここ。
さりげなく人間も進化しているよね。
この時代の33歳は、今の時代の45から55歳くらいの感覚だと思われるー。
逆の言い方をすると、今の33歳は、20代前半、60代前半でも10歳くらい若い感覚で生きているように感じます。昔と比べて。