ゲキ×シネ「五右衛門ロック」で、森山未來君も良いなぁと思い、9月は「ネジと紙幣」をチョイスしました。これは近松門左衛門の「女殺油地獄」を基にしたものです。先日、ケーブルテレビでその映画をやっていることを知っていましたが、筋を知りたくなかったので、見ないようにしていました。もしかしたら、それは見ていた方が面白かったかもしれません。
森山君は、ストレートプレイ初挑戦だそうです。
お相手はともさかりえさん。この人を見ていると、私はいつも私の妹を思い出してしまいます。ついでながら、ドラゴンボールのブルマも同様です。と言うことは、日本で「ドラゴンボール・実写版」を作ったとしたら、子持ちになったブルマは彼女がいいと思います。まあどうでも良い、くだらない話を脱線ついでに書いてしまいました。
ところで下の画像は、そこで買ったネジキューピーのボールペンです。可愛いでしょ。
キューピーさんのスタンプになっているんですよ。
だけどお話はこんな可愛いグッズとは無関係の、シビアな暗い物語でした。
小道具で行人と桃子の二つの工場場面を見せるセットは、上手いと思いました。時計の壊れ具合なんか最高です。
生活感溢れるセットの中で繰り広げられたのは、芝居ならではの引っ掛けやだましのないストレートな物語。
が、終わってみるとなんだかよく分かりません。
―なぜ男は女は殺されなければならなかったのか。―
こんな感じのコピーだったように思いますが、思わず心の中で呟いてしまいました。
「なんで!?」って。
兼坂行人と言うダメ男に、何一つ共鳴できるものがないのが、この物語の理解を阻むのかも知れません。
それで頭の中で、かなりリプレイしてしまいました。
行人が言う「いつが初めかわからない。そこが初めなのかと思うと、その前がまだある。」。もちろんセリフはいつも不正確。
こんな風な自分になってしまったのは、あの時があったから。でもそう思うと、その前にも自分はこうで、その理由はその前にある・・・
「だから、もう終わりの事を考えるようにしたんだ。」
この「終わり」。
それこそが行人が幼馴染でいつも姉のように優しく手をさしのべてくれていた桃子を、殺してしまう理由だったのかも知れません。
「ちょっと先の事だけを考えたらいいんだよ。」と桃子は言います。
「終わり」と「ちょっと先の未来」は行人にとっては同じ事だったのかも知れません。
破滅型と言うと誰もが思い浮かぶのは、やっぱり太宰治かなと思うのですが、太宰=心中と考えると、なんとなくさっぱり分からなかった、物語のラストの輪郭が見えてくる様な気がしたのです。
「ちょっと先の事」は、行人にとっては怪我をさせてしまった地上げ屋に、落とし前のお金を渡して終わりにする事。その先の思考はない。駄々っ子のように両親が桃子に渡したお金をナイフ振り回して奪おうとする行人に、桃子は
「あんたはもうだめだ。」と失望の叫びをあげてしまいます。
その言葉はキィーワード。
もしかしたら、待っていた言葉だったかもしれません。
桃子に突き刺す二度三度の刃。
あまりにも非情で残酷です。
そして血で染まった手を、無表情で延々と洗い続ける行人の姿でラストを迎えます。
男は刃で女を殺し、そして自分の魂を殺したのだろうか、と、私は思いました。
破滅型人間を森山未來君は好演していたと思います。
その彼の次回作。来年三月。
演出;倉持裕 他の出演者 田口浩正 根岸理季衣 満島ひかり
田口さんの、家族で揉めるシーンは、良かったですよ~。