「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

メタボリックシンドロームと闘う

2007-07-10 23:14:22 | 医療
肥満から、
メタボリックシンドローム
(内臓肥満症候群)が生じます。
メタボリックシンドロームの多くは、
糖尿病に移行します。
(ちなみに糖尿病の患者の数は、740万人。
糖尿病の方から見ると、すべてが、メタボリックシンドロームから
発症したわけではなく、
もともとの原因で発症した場合(I型糖尿病)や
ウイルス感染後に発症したものなども含まれる。
しかし、耐糖能異常880万人という
予備軍から年間20~68万人が
糖尿病へ移行している。)
糖尿病になった人は、
糖尿病の三大合併症、
いずれも細小血管障害からくるのですが、
①腎症
②網膜症
③神経障害
に進行して行き、果ては、
①腎不全から人工透析(年間新規導入14000人)
⇒今や透析導入の原因の第一位である。
②失明(年間2000人~3000人)
③下肢切断(年間3000人以上)
という重症化の道をたどります。

一方、
メタボリックシンドロームは、
大血管も障害し、
動脈硬化症へ至り、
心筋梗塞(約87万人)
脳卒中(約137万人)
閉塞性動脈硬化症などを
おこすことになります。
これらは、
死の危険があります。
万が一、一命を取り留めても、
重篤な後遺症を生じ、
要介護状態になることでしょう。

メタボリックシンドロームは、
不健康な生活習慣
すなわち、
①不適切な食生活(エネルギー・食塩・脂肪の過剰等)
②身体活動、運動不足
③喫煙
④過度の飲酒
⑤過度のストレス
などから、生じてきており、
『生活習慣病』の概念の一つとして言われることもあります。

メタボリックシンドロームの診断基準は、
8つの医学関連学会が策定した
新基準(2005年4月)
によると
*腹腔内脂肪蓄積
これはウエスト周囲径(ちょうどおへその上で計ります。)
男性 85cm以上
女性 90cm以上
(どちらも内臓脂肪面積 男女とも100平方㎝に相当)
上記に加え以下のうち2項目以上で診断。
*高トリグリセライド血症かつ/または低HDLコレステロール血症
 (150mg/dl)         (40mg/dl未満)
*収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上
*空腹時高血糖 110mg/dl

「肥満」+「高脂血症」、「高血圧」、「糖尿病」
を見ているわけです。



来年度(平成20年度)から、行政が行う健康診断
(こまかくいうと、健康診断の実施主体が、
市町村から、医療保険者にかわります。)では、
『特定健康診査(特定健診)』という名の下に、
メタボリックシンドロームをターゲットにします。

対象者:40~74歳の医療保険加入者 約5600万人に
『特定健康診査(特定健診)』が実施されます。


質問票、身体計測、身体診察、血圧測定、血液検査、検尿などの
検査を行います。(必須の検査項目とその判定値は決まっています。)

検査の結果次第によっては(検査の結果がよくなければ)、
『特定保健指導』の利用券が、結果のよくない人に送られます。

『特定保健指導』該当者:メタボリックシンドロームの該当者及び予備軍ということになり、対象者の約34%と試算すると、約1960万人となります。

これは、3つのグループがあり、
簡単にいうと(検査の結果により、厳密に分けれるのですが、ここでは、簡単にのべます。)
①肥満以外のリスクがない状態の人
②肥満と伴にリスクが出始めた人
③肥満と伴にリスクが重なり始めた人
です。

3つのグループの状態にあわせ、『特定保健指導』が
行われることになります。
①肥満以外のリスクがない状態の人
⇒「情報提供」:自らの身体状況を認識するとともに、健康な生活習慣の重要性に対する理解と関心を深め、生活習慣を見直すきっかけとなるよう、健診結果の提供にあわせ基本的な情報を提供されます。

②肥満以外にもリスクが出始めた人
⇒「動機づけ支援」:自らの健康状態を自覚し、生活習慣の改善のための自主的な取組みを継続的に行うことが出来るようになることを目的とし、医師、保健師、または管理栄養士の面接・指導の下に、行動計画を立て、実際に実行できたかを指導した人が評価します。

③肥満以外にもリスクが重なり始めた人
⇒「積極的支援」:自らの健康状態を自覚し、生活習慣の改善のための自主的な取組みを継続的に行うことが出来るようになることを目的とし、医師、保健師、または管理栄養士の面接・指導の下に、行動計画を立て、計画の進捗状況を指導した人が追うとともに、実際に実行できたかを指導した人が評価します。

*すでに医療機関を「高脂血症」、「高血圧」、「糖尿病」などで、受診中の人も
『特定健康診査(特定健診)』の対象者になりますが、『特定保健指導』の対象者にはなりません。また、前期高齢者(65歳以上75歳未満)に該当した場合、指導の重点を、日常生活のQOLや介護予防を重視した指導になります。


来年度から、
『特定健康診査(特定健診)』
『特定保健指導』が実施されるわけで、
実際に、有効な健診となるよう、
行政の手腕が試されます。

小坂が思うに、課題として、
①他の病気(がん、結核など)の健診との兼ね合い。
(同時に実施可能か、他の検査項目の追加をするか等)

②介護予防の生活機能評価などの介護予防事業との兼ね合い。
(同時に実施可能か等)

③75歳以上という対象外の後期高齢者医療制度との兼ね合い
(「広域連合」との連携も含め)

④『特定保健指導』には、多大なマンパワーが必要
(かかりつけの開業医がそこまで、時間を割けるのかも含め)

⑤『特定保健指導』をいくらしても、本人の健康になろうという意志が、芽生えるかどうかは、本人の問題であり、行動変容をおこさせるのには、非常にテクニック(例えば、コーチング)が必要であろうということ。

等が、
考えられます。


私も医師として、本当に有効なプログラム構築に尽力したいと考えます。



*制度の解説は、
東京都医師会理事 近藤太郎氏の講演を
参考にしております。



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