目覚めも上々、すっくり起き上がって窓を開けた。黒い雲がかかっていたが、雨は上がっていた。家を出る頃には明るさも感じられ、雨は免れそうな予感でいっぱいになる。
21日、牛馬童子口から牛馬童子像を経て近露王子ー比曾原王子ー継桜王子ーとがの木茶屋ー野中の清水―中川王子ー小広王子へと、8.5kmの古道を辿った。

京都の城南宮で5日~10日のお籠りで潔斎したあと、先達がホラ貝を吹きながら熊野へと出発した。かつての御幸では、800人ほどの一行が2mの間隔で歩いたそうだから、1600mから2000mに及ぶ白装束の行列の想像は今なら相当に異形なものとして映る。先達としての定家の苦労は読み知れるが、徒歩で詣でる女官達の悲鳴も聞こえてきそうだ。

定家が、西行も一遍も芭蕉も歩いた道の上を、自分も歩いているのだ。雨でないに越したことはないが、もうどちらでもいいような…、残り僅かになった行程だから大切に歩こうと思っていた。一歩一歩踏みしめて歩こうと思った。長かったが、ようやくここまで来て念願の一つだった牛馬童子の姿との対面がかなった。訪れる人の足元に小さく…。悲劇の若者がこんな人気の少ない山中に佇んだままというのも、なにやら物悲しさが上乗せされそうだ。


「秀衡桜」が咲いているのか、すでに葉桜か、楽しみだった。むろん「伝説」上の秀衡桜だが、ヒノキに桜を継いだものだという。
見事な幹は折れ曲がっていた。台風でやられたという。が、その脇から4代目の細い幹が枝葉を広げていた。


山桜の淡さ、八重の濃いピンク、カエデの新緑、スイセンがみられレンギョウに、山つつじも鮮やかだ。昨年の4月には、きらめく海の美しさに酔うほどだったし、桜も満開で青空のもと見事な春を満喫した。今回は霧雨も午後から加わってか、柔らかな春の色合いを楽しめる、ひっそりと清かな空気に包まれていた。吹き抜ける風がどこまでも心地よい。異性を求めているというウグイスの鳴き声に耳を傾け、雨に煙る幾重もの山並に感動しながら、何度もシャッターを押していた。
14473歩、素敵な風景に出会えた一日となった。
21日、牛馬童子口から牛馬童子像を経て近露王子ー比曾原王子ー継桜王子ーとがの木茶屋ー野中の清水―中川王子ー小広王子へと、8.5kmの古道を辿った。

京都の城南宮で5日~10日のお籠りで潔斎したあと、先達がホラ貝を吹きながら熊野へと出発した。かつての御幸では、800人ほどの一行が2mの間隔で歩いたそうだから、1600mから2000mに及ぶ白装束の行列の想像は今なら相当に異形なものとして映る。先達としての定家の苦労は読み知れるが、徒歩で詣でる女官達の悲鳴も聞こえてきそうだ。


定家が、西行も一遍も芭蕉も歩いた道の上を、自分も歩いているのだ。雨でないに越したことはないが、もうどちらでもいいような…、残り僅かになった行程だから大切に歩こうと思っていた。一歩一歩踏みしめて歩こうと思った。長かったが、ようやくここまで来て念願の一つだった牛馬童子の姿との対面がかなった。訪れる人の足元に小さく…。悲劇の若者がこんな人気の少ない山中に佇んだままというのも、なにやら物悲しさが上乗せされそうだ。




「秀衡桜」が咲いているのか、すでに葉桜か、楽しみだった。むろん「伝説」上の秀衡桜だが、ヒノキに桜を継いだものだという。
見事な幹は折れ曲がっていた。台風でやられたという。が、その脇から4代目の細い幹が枝葉を広げていた。


山桜の淡さ、八重の濃いピンク、カエデの新緑、スイセンがみられレンギョウに、山つつじも鮮やかだ。昨年の4月には、きらめく海の美しさに酔うほどだったし、桜も満開で青空のもと見事な春を満喫した。今回は霧雨も午後から加わってか、柔らかな春の色合いを楽しめる、ひっそりと清かな空気に包まれていた。吹き抜ける風がどこまでも心地よい。異性を求めているというウグイスの鳴き声に耳を傾け、雨に煙る幾重もの山並に感動しながら、何度もシャッターを押していた。
14473歩、素敵な風景に出会えた一日となった。