京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 「いのちのスープ」

2012年11月21日 | 日々の暮らしの中で

上映中の「天のしずく」が、料理研究家の辰巳芳子さんを追ったドキュメンタリー映画であることを新聞記事から知った。全国の病院で最期をみとる「いのちのスープ」が広がっているそうだが、その提唱者である。
最近、玄侑宗久氏と辰巳芳子さんの対談を読んだばかりだったので、改めてページを繰ってみることとなった。

冒頭、辰巳さんは、スープが喜ばしい理由として、食べ物の中で最も母乳に近いものだからだと述べられた。「ス-プをいただくいちばんの功徳はほっとすることだ」とされる著書の言葉をひいて玄侑氏は、「人と人が接することのいちばん大きないただき物を、ほっとすることだと思う」と応じられていた。

スープ、汁ものを食べて「あっ、なんだかやる気が出た」と感じられることは大事で、自分の生命力が信じられてこそ希望が、愛が生まれ育つのではないかと辰巳さん。著書『あなたのために ― いのちを支えるスープ』は、作り手に向けた本だと説明される。
つくる人が一番良い結果を生み出そうと工夫する中で、身も心も込めた心遣いを身につけていける。料理の作業への心遣い、それを通して無意識にでも受容力のあるいい人なれるのではないか、と含みを持たせている。
いつもの味噌汁に、家族の健康を願い、ひと匙の擦りゴマを加える朝…。そんな心遣いをされる女性を知ったが、見習わなくっちゃ。

 
言葉の中にも仕込まれて存在するだろうと思われる「心遣い」。辰巳さんは「人間の面白さは感応力にある」と言われていたが、懐かしい友人の声を聞いて、まさに「あっ、なんか元気が出た!」の思いで東寺の弘法さんを覗いてみることにした。現金な~…。

重い雲が広がっていたのが嘘のようだ。広がった青空の下、まぶしいほどの晩秋の日差しを浴びた黒々とした五重塔に、紅葉が色を添えていた。
コメント (4)
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