京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

 離れられずに

2012年11月06日 | 催しごと
「秋の非公開文化財特別公開」が行われている。

 
初めて上京区の報恩寺を訪れた。寺歴によれば享保・天明の再度の大火で伽藍はことごとく類焼したとある。本尊阿弥陀三尊像や地蔵菩薩像はじめ、絵画、古文書には難を逃れ現存しているものはあるが、本堂と庫裏は再建されないままで、本尊は客殿に祀られているのだという。鳴虎、梵鐘の伝説、黒田長政往生の間など拝観するポイントも多いが、目的は「厨子入千体仏地蔵菩薩像」ただ一つだった。

(新聞掲載による写真)

厨子と千体仏とはそれぞれがガラスケースに入って客殿右側の間に展示されていた。
土・日曜日には2000人に近い参拝者で賑わったらしいが、平日の午前中とあってか、押すな押すなの状態ではないのが幸いだった。

他のことは眼中にない私は、各所の説明に耳を貸すこともなく、ただただガラスケースに入った千体仏にまとわりついて見入っていた。間近にして、そのぐるりを時計回りにという順路でひと巡り。二巡り、三巡り… 何度巡っただろうか。
驚きだった。新聞掲載の写真で興味を持ったわけだが、目の当たりにしては芸術品の感が強い。むろん信仰の対象・地蔵菩薩だろうが、この彫りの見事さ、精緻さに息を呑む。立ち去るのが惜しまれて何度も何度も、時には列の中に入って順番を待つ。引きつけられた。離れられない。

厨子入りの携行用だと説明されていたが、厨子の高さは19.6cm。
その中に、檜(ひのき)素材で13.5cmの岩山が作られ、わずか3,3cmの中尊を配置。
そのぐるり、岩山の後ろ脇も含めて、更に小さな5mmサイズという千体仏が白檀で一体づつ彫られている。
針金を利用して立てて並べてあるのだそうだ。こんな小さな地蔵さんに顔が彫られ、衣のひだが見て取れるし、5mmの像に光背があり光を放っているのも感動だった。閻魔王と冥官が手前に。5mmの像を1千体、この彫り師の思いが、見るものを引き付けて離さないのか。

ルーブル美術館など欧州の美術館を巡回し、平成18年、国の重要文化財指定を受けてからは京都国立博物館に寄託保管されている。以後、展示されることもないまま、この寺でも初の公開だそうで次回の予定も未定とのことだった。御柏原天皇により御下賜された当時は1000体だったが、現在は954体。46体が失われている。鎌倉時代、1300年代後半の作と説明された。
言葉は要らないほどに釘付け。大きな思いを胸に刻めた気がしている。御利益のおすそ分けを、ぜひ!!   合掌

コメント (7)
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