秘法「隠し剣鬼の爪」が最後の最後、怨念の刃として藩の家老の胸に突き刺さるとは!海坂藩の平侍・片桐宗蔵を演じた永瀬正敏の陰影のある表情がこの映画を一層印象深いものにしたと思えた。
私が所属して活動する「めだかの学校」の本年第1回目の活動日が本日だった。午前中に運営委員が集い、来年度の活動計画について議論しおおよその企画が決定し、ホッとした思いだった。
続いて午後からは一般会員も参集し、藤沢周平原作の映画シリーズ第4弾として山田洋次監督の「隠し剣鬼の爪」が上映された。
映画「隠し剣鬼の爪」は、藤沢周平の短編「雪明かり」、「邪剣竜尾返し」、「隠し剣鬼の爪」の3編の話を山田洋次流に改編し、1編の物語に紡ぎ直したものである。
キャッチコピーは「幕末の世、予期せぬ運命に翻弄される下級武士の生き様と、奉公娘との身分を超えた純愛を描いた時代劇」とある。
ストーリーは藤沢作品の典型である下級武士である片桐宗蔵(永瀬正敏)が藩命に逆らえずに、幼いころからの剣術仲間を誅殺せねばならない立場となったり、出自が貧しかった奉公娘・きえ(松たか子)は婚家において姑に虐めぬかれたり、と理不尽な世界を描く。そうした中で宗蔵は幼いころから剣術を鍛えていたことにより、秘剣を使って無念を晴らすといったストーリーである。
今回は観賞後に私が司会を務めて参加者たちと感想を話し合った。その中で私が一つのことを問うた。「映画の中に何度も藩の中での砲術訓練の様子が出てくるが、単に幕末の時代背景とした以外に意味はあるのだろうか?」と…。すると、ある参加者から「宗蔵が藩の家老を誅殺(この犯人としては証拠を残さなかったために追及はされない)した後、武士の身分を捨て、町人となってきえと一緒になるところに幕末を迎えたことで人々の価値観の変化が生まれていることを描いたのではないか」との考えが示された。それを聞いて私は「なるほど…」と思った。宗蔵はきっと、時代が変わってきていることを肌で感じ、武士に拘泥することの愚かさを悟ったのかもしれない。
独りで映画を楽しむのも私は好きだが、今回のように多人数で観て感想を語り合う鑑賞スタイルもなかなかいいなぁ、と感じた今日の鑑賞会だった。
「めだかの学校」では、この後2月に「花のあと」、3月に「蝉しぐれ」といずれも藤沢周平原作の作品の鑑賞を予定している。まだまだ「藤沢周平の世界」に遊ぶことができる。コロナ禍のために中止になるという事態だけは避けたいと願っている…。
※ 掲載写真は全てウェブ上から拝借しました。