その後の話である。昔、自分が勤務していた時の大学病院の主任教授が日光で指導医セミナーを開催することになった。そしてその時、講師として談志師匠を招聘した。師匠のマンションは自分が勤務していた大学病院とは目と鼻の先で歩いて2分のところにある。普段から師匠はよくお見舞いや自分の受診などで院内に出入りしていた。そんな経緯もあってセミナーでの講演をお願いしたのだが、いざ開演してみると小噺の連続である。会場は唸ったり、笑いの渦が巻き起こったりでおおいに盛り上がった。そして夜の懇親会になった。もう「仕事」は終わりなのであるが、自ら買って出てマイクを持ち話術たくみに会場を楽しませてくれた。ところが自分がとても意外に思ったのは昔「俺がかって喋っているのを客が聞いてかってに喜んでいるだけ」と彼が言っていた突っ張ったスタンスではなく、まさに正反対のサービス精神旺盛な師匠がそこにいたことなのである。