吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています

談志師匠のこと その8

2011年12月24日 06時55分58秒 | インポート

 これだけ師匠のコメントをしておきながら自分は師匠の小噺こそ聴いたことはあるが古典を聴いたことがなかった。亡くなられて数日後、NHKの追悼番組で初めて師匠の「芝浜」を聴いた。延々と古典落語のストーリーが展開されていく。ところが話の流れに抑揚がないため途中で笑ったり唸ったりすることがないのだ。つまり話の展開にメリハリが感じられないのだ。途中「え? これが天才落語家の談志の噺か?」と幾度も思った。ところが不思議だったのは噺の流れに抑揚がなくとも少しも退屈しないのだ。あからさまに惹き込まれていくような感触もなかったが、しかし目の前に夫婦の会話の情景がはっきり浮かんでみえるのだ。そのまま黙ってその映画のような情景をみていた。そして最後に「いや、よそう、また夢になるといけねぇ」という盃を置くくだりで我に帰った。総天然色の映画が終わったような感覚だった。愕然とした。他の噺家にはない、これこそ談志の噺だったのかとゾクゾクした。やはりすごい。天才というのは嘘ではなかろう。