「理不尽? はいその通りです」 顔の表情をかえずややうつむき加減で彼ははっきりそう答えた。そのしぐさと応答のタイミングが妙にアンバランスだったので、その間(ま)がおかしかった。(さすがは落語家、微妙な間(ま)で笑わすとはお主できるな)・・・とは言えなかったが、これが彼の芸風なのかもしれないと思った。彼からいろいろ聞いたが、彼は弟子であっても授業料を談志師匠に毎月払っているそうである。たしかにここは「立川流家元」である。立川流は落語協会に属していないので常打ちの寄席や演芸場には入れないそうである。となると自分達で噺の仕事を見つけてこなくてはならない。お茶やお華の免許家元制度のようなシステムなのであろう。このお弟子さんも普段はアルバイトをしているそうである。というかまだまだ落語が本職ではなさそうである。しかも彼は「授業料払っていないと『立川○○』という名前が名乗れないんですよ」と苦笑いした。寡黙な彼だとおもったが、聞けばいろいろと答えてくれた。