そんな付き合いから、師匠は当時の主任教授の外来にも時々受診するようになった。また医局に教授を訪ね「○○先生(教授のこと)いるぅ~?」と突然くることもあった。教授がいないと教授秘書のHさんに自分の症状と具合を打ち明け、医療スタッフではないがひとしきりHさんに話をきいてもらっては引き上げていった。その時の師匠の姿はとても「破天荒」や「破滅型芸人」というものではなく通常の常識的な患者さんの姿に映ったのである。以前の食道がんの時の記者会見で見せた喫煙パフォーマンスは破天荒さを装ったものであるとこの時初めて確信した。この現代の日常のすべてを落語の洒落で表現しても、実際は常識的な人であったのだろうと思われる。尤も彼にとって「本当は常識人であった」と評されるのは本人の意向に反するものであろう。最後まで洒落で生きていた男と言われたいのだと思う。まあまあとりあえず常識的とは言ってはみたものの、実際、常識的な患者さんなら好き勝手な時間に医局にはズカズカ入り込んで「談志だぁ~」はないだろうけど・・・。