吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

いいかげんなコメント

2016年06月11日 06時04分09秒 | 日記
 過日、市川海老蔵の妻の乳がん報道がなされた。
 そして翌日のTVバラエティ番組で、進行がんとはという解説がどこかの医者によりなされたのを観た。

 ボードにはいろいろな種類の癌が張り出されていたが、たまたまスキルス胃がんの説明ボードに「特徴:粘膜をはうように進行する」とかいてあった。

 おいおい、間違ってるよこれと思い、そのうち解説で訂正するだろうなと思っていた。
 ところがこのDr.は「スキルスは粘膜をはうように横に広がっていきます」と説明を始めたのである。

 あちゃ~またいい加減な事いっているな~と思ったのである。スキルスは原発局面は、確かに粘膜の癌なのであるが、そこから粘膜をはって進展するのではなく、「粘膜の下」をはって横にひろがっていくのである。なので粘膜の性状は変わりがほとんどないので見つけにくいのである。

 いかにこの初期原発巣(小さいことが多い)を発見できるかがポイントである。胃カメラでみて粘膜面での異常を確認できるのはこの部分だけなのである。

 Dr.のいう「粘膜を這うよう」広がれば、カメラでは胃の粘膜を観察しているのだから発見しやすい。しかし「粘膜の下」を広がっていくのだから、粘膜の上しか観察できない胃カメラでは発見しにくいのである。
 そんなの当たり前のことである。

 まあその後、司会者は「はぁ~そんなんですね、粘膜の下を横にひろがっていくんですね~」と気が付かれないように訂正していたのであるが、素人の司会者にフォローされるようじゃこのコメントしている医者もなさけないなーと感じた。