吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

妊婦死亡7千万円賠償命令 医師の過失認定、東京高裁 その3

2016年06月15日 06時15分30秒 | 日記
 2回にわたってこの産科訴訟の報道を引用、掲載した。

 妊婦、胎児ともに救命できなかったのは極めて残念であり亡くなられた患者さんには哀悼の意を表するものである。
 さて、今回の判決は、いくつかの疑問点が残る。

 一つ目は産科医であれば「早期胎盤剥離」なら大量出血しているということは誰にでも分かることである。その上で輸血量が足りなかったというのは不思議である。出血性ショックは症状をみれば推測もつく。たまさか外出血がなくても超音波検査で子宮内に大きな血腫をつくるので診断はできる。それなのに輸血が足りなかったという本当の原因は何なのであろうか?

 二つ目の疑問。早期剥離→子宮内胎児死亡→羊水塞栓→DICへの進展などというのも産科医でもない自分にも容易に想像がつく。自分が救命センター勤務していたころは羊水塞栓でDICの患者はいくらでも診療した。それはもう大変な状態で昼夜問わずの集中治療やら緊急手術やらをしても救命率は高くはなかった。それを現時点での死亡率を「最新の知見を元に2~3割」と言っているが、いったいどんな文献や研究結果をみてモノを言っているのか不思議である。そんなに死亡率が低いわけはないと実感している。本当に羊水塞栓の死亡率なんですかと疑わしくなる。

 たまさか百歩譲って死亡率を2~3割としても、10人のうち2~3人がなくなるという数値をもって助からなかったのは医療側が悪いと言うのであろうか? 仮に心臓手術で手術したら10人のうち2~3人の人が亡くなりますよといわれたら安心して手術を受ける人はいないと思うのであるが。