吉田クリニック 院長のドタバタ日記

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妊婦死亡7千万円賠償命令 医師の過失認定、東京高裁 その4

2016年06月16日 05時55分46秒 | 日記
 そして三つ目の疑問である。「適切に治療すれば救命できた。なかでも治癒しやすいケースだった」と言っているが、正直、救命センター勤務時代に羊水塞栓で救命できなかった患者さんを指し、まるですべて「不適切な治療」だと言われているようである。
 羊水塞栓でDICになったらそう簡単にはよくならない。何が、そしてどうやったら「適切な治療」になるのか司法のほうから教えてほしいくらいである。具体的治療方法も提示せず、被告の治療が不適切だなどと言えるのが不思議である。

 過去に大野病院産科医逮捕事件があった。これは早期胎盤剥離の術中に妊婦が亡くなった事件である。これは医療界を震撼させた。
 結局のところ、被告医師に無罪判決がでたものの警察の対応の問題点が取りざたされた。
 また医療側でも、判決の行方を左右する鑑定人医師は「専門でなければ鑑定人を引き受けるべきではない」という当たり前の声が起こったのである。
(この時、検察側の医師鑑定人は大学教授というだけで胎盤早期剥離についての経験はほとんどなかったとのこと) 
 今回の裁判ももしかしたら検察の意のままに動く「素人」医師鑑定人がたてられたのであろうか?

 いずれにせよ「今の医学水準では」ということになるが、かなり厳しい(というか不可能に近い)水準が突きつけられたことになる。これでは皆こわがって、誰も産科医療に携わらなくなってしまう。おそらく日本の産科医療は崩壊していくだろう。