吉田クリニック 院長のドタバタ日記

日頃の診療にまつわることや、お知らせ、そして世の中の出来事について思うところ書いています。診療日には毎日更新しています。

野村沙知代さんの死因 その4

2017年12月20日 05時59分02秒 | 日記
 今回、野村さんの死因などきっと分からなかったものと推測される。大体心肺停止で搬入された患者さんの多くはほとんど死因を確定する手立てはない。昔はよくわからないものはすべて「心不全」という死因にしていた。昔の死亡診断書は手続き的に簡単であった。
 しかし最近では「心不全」という死因が認められていないので、病名をつけなければならないのであるが、それが分からないことも多い。たぶん、これも推測であるが「虚血性心不全」という病名は、苦肉の策でつけたのだろうと思われる。虚血性心不全というのは例えば心筋梗塞などのように心筋に血液供給が低下した場合に起こりうる心機能低下である。それが原因での心停止である。
 しかし心停止後から「遡って」この原因が「虚血性」だったのかどうかを判断するのはたぶん不可能である。自分は過去このような場合に散々面倒な思いをした。今回も担当医の苦渋の選択がこの「虚血性心不全」と言う病名にあらわれている。ご苦労様とこの担当医に言いたい。
 そして一つ勉強になった。このような場合は、昔、よく使われていてその後、禁止された「心不全」というオールマイティ病名を、最近ではこの「虚血性心不全」と名前に入れ換えて使ってもいいんだろうなと企んでいるのである。