Sightsong

自縄自縛日記

チャールズ・ヘイワードの映像 ピーター・ブロムリー『Charles Hayward Recorded』

2016-09-07 22:53:08 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・ブロムリー『Charles Hayward Recorded』を観る。チャールズ・ヘイワードの旺盛なる活動を追いかけた映像である。

何年に撮られたものだろう、雰囲気は割に最近だが、2010年に亡くなったハリー・ベケットや、2012年に亡くなったロル・コクスヒルも登場している。

それにしても、ヘイワードはヘンな人である。素朴な要素が大事なんだとか言いながら、水辺で波の音や鍵盤ハーモニカの音なんかをテレコに撮って、みずからグチャグチャとそのテレコを再生したりしている。しかも実に愉しそうなのだが、ドラムスを叩くときにはさらに至福というのか歓喜というのか、顔をクシャクシャにして笑っている。ドラミングは牧歌的にして爆走型、走っていたと思ったら自分自身を追い越したりしている。なんだか奇妙だ。

ライヴ映像も面白い。ハリー・ベケットがトランペットを吹く横で、パット・トーマスがヤマハのキーボードでピロピロとえらくカッチョいいソロを取っている。

そしてまた、ヘイワード(ドラムス)、ジョン・エドワーズ(ベース)、ロル・コクスヒル(ソプラノサックス)の野外での演奏。エドワーズは大真面目にインタビューに答え、即興ってのは予見なしにステージに上ってはじまるものだよなどと熱く語っていたのだが、何だか緊張感に欠けるベース。そして脱力王コクスヒルのソプラノが極め付けである。いまも天国で力を抜きまくっているに違いない。


ピエロ・ビットロ・ボン『Mucho Acustica』

2016-09-07 20:48:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピエロ・ビットロ・ボン『Mucho Acustica』(Long Song Records、2010年)を聴く。

Piero Bittolo Bon (as, bs)
Simone Massaron (g, baritone g)
Jamaladeen Tacuma (b)
Massimiliano Sorrentini (ds)
Federico Scettri (ds)

左右にドラマーふたりを配し、ギターとジャマラディーン・タクマのベースが狂騒的極まりないファンクを形成する。これだけでも夢を視るには十分なのだが、さらにそのなかで、ピエロ・ビットロ・ボンのサックスが強者たちを吹き飛ばさんばかりのサックスを吹きまくる。冗談ではなく、吹きまくるという表現しかないように吹きまくる。

アルトにはティム・バーンとはまた違った様子で粘っこく、決して折れない強靭さがある。比較的静かなる曲でも結局自分の吹きたいように吹いた曲になってしまっている。そしてバリトンもまた、強粘性が容赦なく縦横無尽。

「Moon Liver」だとか「Tamarrow is the Question」だとかの曲名もふざけているのだが、また、「Stoppani Stomp」では「Bye Bye Blackbird」を引用してみたり、遊び心抜群。というかやりたい放題である。

●参照
ピエロ・ビットロ・ボン(Lacus Amoenus)『The Sauna Session』(2012年)
デイヴィッド・マレイ『Be My Monster Love』、『Rendezvous Suite』(2009、12年)(タクマ参加)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 再見(1985年)(タクマ参加)
シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(1985年)(タクマ参加)


グレゴリー・ポーター『Take Me To The Alley』

2016-09-07 06:49:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

グレゴリー・ポーター『Take Me To The Alley』(Blue Note、2015年)を聴く。

Gregory Porter (vo)
Alicia Olatuja (cho)
Chip Crawford (p)
Aaron James (b)
Emanuel Harrold (ds)
Keyon Harrold (tp)
Yusuke Sato 佐藤洋祐 (as)
Tivon Pennicott (ts)
Ondrej Pivec (organ)
KEM (vo)
Lalah Hathaway (vo)

グレゴリー・ポーターは、実は前作まで試聴してもピンとこなかった歌手なのではあるが、先日、飛行機の中でこの盤を聴いていると思いがけずやられてしまった。好みなんてそんなものである。

豊富な音量をコントロールして繰り出してくるバリトン・ヴォイスに、理屈を超えた説得力がある。バックもなかなか良くて、チップ・クロフォードのピアノや、佐藤洋祐とティヴォン・ペニコットのサックスにも、耳が追随してゆく。

「Insanity」は、このメンバーでの録音に加え、レイラ・ハサウェイとの共演のトラックも入っていて、聴き比べると愉しい。前者はキーヨン・ハロルドのトランペットをフィーチャーしており、後者はオンドレ・ピヴェックのキーボードが雰囲気満点。それにレイラの深い声。

●参照
レイラ・ハサウェイ『Live』