津波古勝子『大嶺岬』(短歌研究社、2014年)を読む。
津波古さんはフィリピン生まれ、沖縄育ち。琉球放送のアナウンサーもつとめた方である。以前に『けーし風』の読者会に参加され、そのときにこの歌集をもとめた。
わたしは普段短歌などを読む習慣がないので、痒いところやくすぐるところが判断できない。それでもときどき、あっという歌がある。
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原発を護りし力いかなりや他力本願の大和男子(やまとおのこ)の
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ヴァイオリンの弦いく筋の切れぎれにいたく縮れていのちはかなし
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何を見ることになろうか訝しみ合点なきまま時は過ぎゆく
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冬枯れのひまわり雪に溺るるを見て過ぐわれも何にか溺る
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若者の抱くギターに貼りつけし「基地反対」のシールそれぞれ
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憤りやがて悲しみ寡黙なる上原成信に泡盛を注ぐ
上原成信・編著『那覇軍港に沈んだふるさと』
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指笛の空耳なるや波の穂の戯れながら押し寄せてくる
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戦死せし父たちも加害者と識るまでの幾たびの夏おのもおのもに
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ひめゆりの傷みを裡に生きて来し美しき千代姉の背丸みおぶ
『けーし風』読者の集い(15) 上江田千代さん講演会(2011年)
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思惑を見抜き得ぬままふるさとのことばによりて家うばわれぬ