Sightsong

自縄自縛日記

『HMT』

2016-09-24 09:35:54 | アヴァンギャルド・ジャズ

『HMT』(doubt music、2016年)を聴く。

Junji Hirose 広瀬淳二 (sax)
Yoshinori Mochizuki 望月芳哲 (b)
IRONFIST Tatsushima IRONFIST辰嶋 (ds)

いやこれは苛烈なんてものではない。脚も折れんばかりというよりも、脛の骨がばきばきに折れて周囲に裂傷を負わせながらも勢いを失うことなく爆音で爆走する。

1曲目はトリオ、2曲目は広瀬・望月デュオで少々雌伏のときを経てまた爆走をはじめ、3曲目は広瀬・辰嶋デュオでそのままゴールへと向かう。ベースとドラムスの絶えざる繰り返しによるうねりが大変なことになっている。擾乱というよりも上に立つ者にとっては剣山である。しかしその上で、広瀬さんのサックスは気と念とを放出しまくっている。

レーベルのサイトに、足立正生監督が寄せた文章には、「センチメンタルな奔流」とある。誰がなんと言おうと爆走する音楽は確かにセンチメンタルかもしれない。

●広瀬淳二
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)


イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』

2016-09-24 07:25:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(RogueArt、2015年)を聴く。

William Parker (b, 尺八, sintir, n’goni kemlah n’goni, thumb p)
Joe Morris (g, banjouke, banjo, b, fiddle, pocket tp, whistles)
Hamid Drake (ds, frame drum, cymbals, gongs)

グループ「Eloping with the Sun」(太陽とともに逃げる?)は、ウィリアム・パーカー、ジョー・モリス、ハミッド・ドレイクによるトリオである。

断っておくがこれは「ジャズ」ではない。かろうじてドレイクのドラミングがそのように聴こえるのではあるが、パーカーもモリスも思い思いに様々な楽器に手を出す。パーカーの親指ピアノや尺八、モリスのフィドルやポケット・トランペット。民族音楽的でもある。

かれらの戯れは見事、さすがの音楽マスターだ。パーカーの重くて軽やかなベース、モリスのシングルトーンによるうねうねしたギターが聴けるわけではないのだが(実は最初落胆した)、繰り返し再生していると宙ぶらりんのテンションが得られてくる。聞き流す音楽としてのBGMではなく、自然でいてかつ巧みな音楽家たちによる心地良いBGMである。

2015年にウィリアム・パーカーが来日したとき(エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール)、ベースではなく他の楽器に手を出すパーカーに不満を感じたファンは多かったに違いないのだが(わたしもそのひとり)、しかし、この音楽世界も広大で豊穣なのだった。

調べてみると、実は2001年に、グループ名を冠した最初のアルバムを出していた。それもいつか聴いてみるとしよう。

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)

●ジョー・モリス
ジョー・モリス@スーパーデラックス(2015年)
ジョー・モリス+ヤスミン・アザイエズ@Arts for Art(2015年)
『Plymouth』(2014年)(モリス参加)
ジョー・モリス『solos bimhuis』(2013-14年)
ジョー・モリス+アグスティ・フェルナンデス+ネイト・ウーリー『From the Discrete to the Particular』(2011年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ジョー・モリス w/ DKVトリオ『deep telling』(1998年)

●ハミッド・ドレイク
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』(2008、10年)
デイヴィッド・マレイ『Live at the Edinburgh Jazz Festival』(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
フレッド・アンダーソンの映像『TIMELESS』(2005年)
ヘンリー・グライムス『Live at the Kerava Jazz Festival』(2004年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2002年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ペーター・ブロッツマン『Hyperion』(1995年)