小川紳介『三里塚 第三次強制測量阻止闘争』(1970年)を観る。
同年の小川紳介『日本解放戦線・三里塚』に続く作品であり、再び白黒フィルムが使われている。警察と機動隊に警護された公団(新東京国際空港公団)が空港予定地の測量を行おうとするときに集中して撮られ、クレジット等はまったくない。ニュース映画のように速報性が重視されたものだという。
ここに登場する農民たちは、ひとりひとりの名前が字幕として表示される。一方、公団職員や警察の面々は顔を隠していたり、抗議されて敢えて感情を押し殺したような不気味な表情を浮かべたりしている。機械のように土地収用法を盾にしながら、「そういうことは本社に言ってください」と、自らを手先におとしめた声も聞えてくる。
最初に登場する農民の男が言う。弟は沖縄で自爆した。敗戦からちょうど1年後の1946年8月15日にここにやって来て鍬入れをした、と。つまり国策としての開拓により三里塚に来て、二十数年が経っていたわけである。それに対し、「意見を聴かんでここに決めたとか」と憤る。
そしてまた、農民たちが口々に抗議する。「自分の土地を守るのに何が抗議だ」「何が妨害だ、自分の畑に座って何が悪い」「公団の職員だって百姓だろ」「ヌシらはゼニもらってやってる。イーカゲンにやれ!」。名前の無い者たちは何も答えられない。
強制測量に対する抵抗は激しいものだった。皆が手にビニール袋の「糞尿弾」を手にしている。「ここはくそまみれでやる」と言いながら、糞尿をカッパに塗ったりもしている。打たれる杭の上に飛び込んだりもする。それに対して機動隊が発する声は「排除!排除!」であり、いまと同じ姿をここにみることができる。
抵抗の結果、公団は1週間の測量の予定を3日間で切り上げ、測量は終わったと発表した。
●参照
小川紳介『1000年刻みの日時計-牧野村物語』(1986年)
小川紳介『牧野物語・峠』、『ニッポン国古屋敷村』(1977、82年)
小川紳介『日本解放戦線・三里塚』(1970年)
小川紳介『日本解放戦線 三里塚の夏』(1968年)
『neoneo』の原発と小川紳介特集
大津幸四郎・代島治彦『三里塚に生きる』(2014年)
萩原進『農地収奪を阻む―三里塚農民怒りの43年』(2008年)
鎌田慧『抵抗する自由』 成田・三里塚のいま(2007年)
鎌田慧『ルポ 戦後日本 50年の現場』(1995年)
前田俊彦編著『ええじゃないかドブロク』(1986年)
三留理男『大木よね 三里塚の婆の記憶』(1974年)