Sightsong

自縄自縛日記

アンドリュー・シリル『The Declaration of Musical Independence』

2016-09-14 20:28:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・シリル『The Declaration of Musical Independence』(ECM、2014年)を聴く。

Bill Frisell (g)
Richard Teitelbaum (syn, p)
Ben Street (b)
Andrew Cyrille (ds, perc)

どうもビル・フリゼールが苦手である。かつてはそれなりに聴いていたのだが、佐々木啓祐『爆弾花嫁』(1935年)というサイレント映画(斎藤寅次郎が編集に参加)に音を付けてゆくというライヴステージ(2000年)があまりにも退屈で、それ以来、遠ざけている。人の感覚なんていい加減なものだ。

本盤もフリゼール中心に聴いてゆくと耳が勝手にスルーしてしまうのだが、いやいや、主役はアンドリュー・シリルである。相変わらず細やかで、かまいたちのようにスッパリと切れそうな達人のドラミングを追従してゆくと、主客逆転する。ベン・ストリートの重いベースも、リチャード・タイテルバウムの耳を別の時空間に持ち運んでくれるシンセサイザーも良い。

●アンドリュー・シリル
トリオ3@Village Vanguard(2015年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
ベン・モンダー『Amorphae』(2010、13年)
トリオ3+ジェイソン・モラン『Refraction - Breakin' Glass』(2012年)
アンドリュー・シリル『Duology』(2011年)
US FREE 『Fish Stories』(2006年)
アンドリュー・シリル+グレッグ・オズビー『Low Blue Flame』(2005年)
ビリー・バング+サン・ラ『A Tribute to Stuff Smith』(1992年)
アンドリュー・シリル『Special People』(1980年)
アンドリュー・シリル『What About?』(1969年)


蓮見令麻@新宿ピットイン

2016-09-14 07:16:09 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットインにて、蓮見令麻さんのライヴ(2016/9/13)。

Rema Hasumi 蓮見令麻 (p, vo)
Masa Kamaguchi (b)
Roger Turner (ds)

まずは初めて観るロジャー・ターナーの音色に陶然とさせられる。数々のスティックやブラシを使い分け、ときにはブラシの持ち手側でシンバルを擦り、とても繊細に残響を活かしたプレイを披露してくれた。また、セカンドセットでは音圧が強くなり、ツアーで前の2回は使わなかったというバスドラムも生きた。

蓮見さんによれば、今回ドラムスを誰にするか検討するときに、ちょうど日本ツアーを行っていると知りターナーのヴィデオを観て決めたのだという。他のドラマーの名前には興味深いものもあったのだが、それはともかく、素晴らしい組み合わせだった。

そして蓮見さんのプレイである。ピアノと歌とをときにユニゾンで合わせつつ、まるで重力で水が流れていくように、思いがけず現れる彗星のように、美しいパッセージを放った。それは己の時間の流れ方に従ったもので、強弱を用いた見事なグルーヴを顕出させてみせた。音圧で攻めるわけではない、しかしそれでベースとドラムスとに押されず対峙しているのはどういうわけだろう。

終盤にオーネット・コールマンの「Lonely Woman」を弾いたのだが、そのときはじめてジャズらしき和音が聴こえてきたのも面白いことだった。

ところで、ロジャー・ターナーは画家でもあり、京都のギャラリーで展示もなされる(>> リンク)。当然そこには足を運べないのだが、ご本人も、小さな蛇腹状の「ストレッチ・ブック」の数々を持ち歩いていた。コラージュ、油彩風、ボールペン画など多彩で、これも面白かった。

●参照
蓮見令麻@荻窪ベルベットサン(2015年)