Sightsong

自縄自縛日記

フリン・ヴァン・ヘメン『Drums of Days』

2018-05-04 20:26:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

フリン・ヴァン・ヘメン『Drums of Days』(Neither/Nor Records、2014年)を聴く。

Todd Neufeld (g)
Eivind Opsvik (b)
Flin van Hemmen (p, ds)
Tony Malaby (ts, ss) (2)
Eliot Cardinaux (Poem) (4) 

驚くほどに静かで考え抜かれた音である。これはもちろんメンバーの力量と方向性とがあってこそだ。

フリン・ヴァン・ヘメンは決して奇抜だったりことさらに目立とうとする音は出さない。ピアノにおいても、ドラムスにおいてもである。この感覚は蓮見令麻さんが本盤のレビューに書いている通りである。一聴、かれの独特さには気が付かない。しかし耳をそばだててみると、自然環境に溶け合って、アンビエントなサウンドを創りだしていることがよくわかる。気持ちいいというのか、哀しいというのか。

このことはトッド・ニューフェルドのギターについても言うことができる。考え抜いた音「しか」出さない人に違いない。また、アイヴィン・オプスヴィークのサウンドへの融合もさすがである。この中に1曲のみ参加するトニー・マラビーも然りだ。

このサウンドを物足りないと言ってはならない。聴けば聴くほど自分の動悸に気付かされるようなアルバムである。

●フリン・ヴァン・ヘメン
『While We Still Have Bodies』(2016年)
While We Still Have Bodies@Children's Magical Garden(2015年)


ティム・バーン+マット・ミッチェル『Angel Dusk』

2018-05-04 14:09:07 | アヴァンギャルド・ジャズ

ティム・バーン+マット・ミッチェル『Angel Dusk』(tim's tunes/party music、2017年)を聴く。

Tim Berne (as)
Matt Mitchell (p)

なるほどこのようにサウンドが変化するのかとちょっと感激。

バーンとミッチェルとはともに複雑なコンポジション(ミッチェルのソロピアノによる『Forage』と同じくバーンによるものだろうか)をひたすらに追及し、その執念とそこからの逸脱とにひやひやさせられる。シンプルであるだけになおさらだ。

バーンのアルトはSnakeoilなどのグループにおける演奏とはやや違い、裏声的な音色も含め、ダークにうねる。もっと爪をたてた猛禽類のように動くことができたのは、Snakeoilなどグループの中における存在だったからかもしれない。

そして知的でスリムに輝くミッチェルのピアノ。その、バーンとつかず離れずのラインが素晴らしい。ときにソロにもなり、たとえばネイト・チネンのレビューにあるように、6:40-7:15あたりのピアノソロは緊張のなかの別の緊張を創りだしている。

●ティム・バーン
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ティム・バーン+マルク・デュクレ+トム・レイニー『Big Satan』(1996年)
ジョン・ゾーン『Spy vs. Spy』(1988年)
ジュリアス・ヘンフィルのBlack Saintのボックスセット(1977-93年)

●マット・ミッチェル
マット・ミッチェル『A Pouting Grimace』(2017年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
ティム・バーン Snakeoil@Jazz Standard(2017年)
マリオ・パヴォーン『chrome』(2016年)
クリス・デイヴィス『Duopoly』(2015年)
マット・ミッチェル『Vista Accumulation』(2015年)
ティム・バーン『Incidentals』(2014年)
マリオ・パヴォーン『Blue Dialect』(2014年)
ティム・バーン『You've Been Watching Me』(2014年)
ティム・バーン『Shadow Man』(2013年)


メアリー・ハルヴァーソン『Code Girl』

2018-05-04 08:37:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

メアリー・ハルヴァーソン『Code Girl』(Firehouse 12 Records、2016年)を聴く。

Amirtha Kidambi (vo)
Ambrose Akinmusire (tp)
Mary Halvorson (g)
Michael Formanek (b)
Tomas Fujiwara (ds)

メアリー・ハルヴァーソンが詩を書き、それをアミリタ・キダンビが歌う。本盤が録音されたのと同じ2016年にThe Jazz Gallryでこけら落としのライヴが行われ、そのレビューを書いたシスコ・ブラッドリーによれば彼女がヴォーカルと共演したり詩を書いたりするのははじめてだとあるが、いま考えると、PEOPLEの3枚のことを忘れていたのではないかな(わたしも翻訳時にはPEOPLEを未聴で気付かなかった)。

それはさておき、なかなか独特で良いグループだ。ジャズ感覚はプレイヤーの色によるもので半分。縦ノリでその上でのユニゾンと逸脱により快感を生み出している時間も多々ある。グロテスクでガーリーなポップス感もある。よろすずさんたちはチェンバーロック的な側面について発言していた。上記シスコさんのレビューでは「各々のメンバーが自身の声を展開し、直接、お互いを信頼しつつ応答し、そこかしこで即座に合体するという、緊密な連携である。」と書いており共感する。

メアリーはリズムと音程とを意図的に過激に歪ませる。今後フォロアーも増えてきそうなものだがどうだろう。マイケル・フォルマネク、トマ・フジワラの個性も聴きとることができる。そして何よりもアンブローズ・アキンムシーレである。いつものフォーマットでなくてもかれのトランペットの音は濃密で知的、だからと言ってせせこましくなくて外に開かれている。3年前にトム・ハレルと並んで吹くところを観たが、それはもう対照的で動悸がするほどのものだった。「Code Girl」のトランぺッターは都合によってアダム・オファリルに替わったりもしているようだが(今月のVision Festivalに行く予定だった・・・)、やはりアキンムシーレを観たい。

●メアリー・ハルヴァーソン
トム・レイニー・トリオ@The Jazz Gallery(2017年)
メアリー・ハルヴァーソン『Paimon: Book Of Angels Volume 32』(2017年)
トマ・フジワラ『Triple Double』(2017年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
PEOPLEの3枚(-2005、-07、-14年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)