Sightsong

自縄自縛日記

ビル・マッケンリー『Solo』

2018-05-19 18:49:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

ビル・マッケンリー『Solo』(Underpool、-2018年)を聴く。

Bill McHenry (sax)

ビル・マッケンリーのソロサックス集。ほとんどに曲名が付されておらず、まるで毎日のエチュードのエクササイズのようだ。

マッケンリーはフリー寄りの演奏をすることはあっても苛烈だったり奇抜だったりすることも特にないし、かといってソニー・ロリンズやケン・ヴァンダーマークのように豪放だったり、スタンダードが特に巧いというわけでもない(アンドリュー・シリルとのデュオを観たとき、「Bye Bye Blackbird」のアドリブは実に物足りなかった)。

そうではなく、ほとんどの部分を中音域で攻める。しかし聴けば聴くほど味がある。音色を微妙に変化させているし、ときにスティーヴ・レイシーばりにベンドさせたりもする。微妙な倍音も良い。おそらく自分の片手でピアノを弾きながらの共演も響きに工夫があって面白い。なんだか動悸動悸する。

●ビル・マッケンリー
アンドリュー・シリル+ビル・マッケンリー『Proximity』(2014年)
ビル・マッケンリー+アンドリュー・シリル@Village Vanguard(2014年)
エリック・レヴィス『In Memory of Things Yet Seen』(2014年)
US FREE 『Fish Stories』(2006年)
ビル・マッケンリー『Ghosts of the Sun』(2006年)


アンドリュー・ラム『New Orleans Suite』

2018-05-19 07:30:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

アンドリュー・ラム『New Orleans Suite』(Engine Studios、2005年-)を聴く。

Andrew Lamb (ts)
Tom Abbs (b, cello, didgeridoo, perc)
Warren Smith (ds, perc, voice)

一聴いつもと変わらないシカゴ的なサックストリオかとも思えるのだが、本盤には、2005年にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナへの支援という意味が込められている。

従って、1曲目の「Dyes and Lyes」から皮肉とメッセージとが発せられる。というのも、この災害は、黒人貧困層に構造的・人為的な被害をもたらしたからである(「Democracy Now!」の記事)。

"Mother Nature just staged a terrorist act on ou' ass And for once in a loooooong time, not a muslim was blamed"
"We're gonna rebuild it Better than before Of course we'll have to Eliminate the poor. That includes the culture That the place was famous for"

もちろんそのような思いがありつつも、アルバム全体としては、やはり良好なシカゴテイスト。とくにアンドリュー・ラムの確信を込めてくっさく吹くテナーはいつも最高である。コードのなかで敢えてエッジを効かせるでもない。当然、フレッド・アンダーソン、ヴォン・フリーマン、アリ・ブラウン、アーネスト・ドーキンス、ハナ・ジョン・テイラーらと共通するものは自然に見出すことができる。

●アンドリュー・ラム
アンドリュー・ラム+シェイナ・ダルバーガー@6BC Garden(2015年)
アンドリュー・ラム『The Hues of Destiny』(2008年)
アンドリュー・ラム『Portrait in the Mist』(1994年)


アキム・ツェペツァウアー+フローリアン・ヴァルター『Hell // Bruit』

2018-05-19 07:11:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

アキム・ツェペツァウアー+フローリアン・ヴァルター『Hell // Bruit』(Umland Records、2015年)を聴く。

Achim Zepezauer (electronics system)
Florian Walter (as)

ツェペツァウアー、ヴァルターそれぞれのソロ2曲ずつのカップリング盤である。ひとつひとつはとても短い。

ヴァルターのアルトは独特なものであり、色々な音をパッケージ化する。その内なる実験と試行が、そのまま外部へとショーケースのように持ちだされる。単に内省的ということではないのであり、自分の肉体の活動を公開で切り刻むような感覚がある。ただし露悪的ではない。

今年のメールス2日目ヨーロッパ・ツアー中のクリス・ピッツィオコスとのデュオを行うそうであり(つまり今日の深夜以降)、それというのも、「JazzTokyo」誌でのヴァルターに関する記事にピッツィオコスが関心を持ってアプローチしたのだという。NYならではの相手に苛烈にぶつけていくノイズ・アヴァン界のキメラが、この静かなる変態とどう対峙するか。(わたしは就寝中ですが)

ツェペツァウアーのエレクトロニクスも、また、より直接的なコミュニケーション寄りのアメリカのそれとは異なるセンスのように感じられた。もっともこれはソロなのだが。

●フローリアン・ヴァルター
フローリアン・ヴァルター+照内央晴+方波見智子+加藤綾子+田中奈美@なってるハウス(2017年)
フローリアン・ヴァルター『Bruit / Botanik』(2016年)