ザ・ミュージアムを訪れる前に、Bunkamuraの横を抜けて渋谷区立松濤美術館に行った。目当ては、『生誕100年記念 けとばし山のおてんば画家 大道あや展』である。
松濤美術館、以前に足を運んだのはいつだったかと思い出そうとするが、10年くらい前に木喰の仏像を観て以来のことを思い出せない。久しぶりのようだ。しかし、大学に入って散歩のついでに入った際に、吉原治良らの「具体」のことを、田舎者の私に教えてくれたところで、馴染がある。入館料も大人300円に小中学生タダ(土曜日のみ)と安い。入館料なしという海外の美術館に比べてはならないが、異常に高くて家族連れで行くと大変な出費になる国立の美術館は見習ってほしい。
大道あやは画家・丸木スマの娘、そしてやはり画家の丸木位里の妹。家業の花火工場の事故で家族を失い、そのとき60歳に絵筆をとったという。知らなかったが、義理の姉である丸木俊とはそりが合わなかったようだ。「母や兄にできて自分にできんことはない」と公言していたように、強い個と個の共存の結果に過ぎない、のかもしれないなとおもった。
絵は素朴でありとにかく過剰だ。溢れんばかりのエネルギー、というより手の作業そのもの、に驚く。不気味だったり、よくわからないものだったりするが、過剰なものが歓びなのだとすれば、そう言っていいのだろう。たくさんのドクダミのなかから猪や猫が顔を少し出す『薬草』が、もっとも気に入る作品だった。
美術館の2階には、大道あやによる絵本の原画が展示してあり、絵本も手にとって楽しむことができるようになっている。美術館に幼児を連れて行くと、だいたいは大騒ぎするのを如何に回避するか(誤魔化すか)という仕事が大変なのだが、今回はやりやすかった(笑)。猫だよ、蛙だよ、と示せば歓ぶのだ。といえば不純だが、子どもの心にも訴えるということだろう。自宅用に、大道あやの絵本が欲しくなる。