奄美や沖縄の島々を旅した人なら「唄者」という言葉を聞いたことがあろう。唄者はいわゆる歌手だけを指すのではない。シマウタの心を伝えられる人、それはプロの歌手かもしれないが市井の人々にも多くいる。唄だけでなく三線(三味線)ほかの楽器の奏者もいる。
そういう唄者たち一人ひとりに真正面から向かい合って撮った写真は、撮影の大半がスタジオではなく町中で行われたものとは言え「スナップ」なんて言葉では失礼な作品群。ちょっと見、向こうではそこらに居そうなおじさん、おばさん、オジー、オバーのどこからあの素晴らしい唄声が出てくるのか(会場では実際の演奏ビデオも流している)。
レンズに対し威圧的に迫ってくる表情などなく、どの顔も穏やか。そうした表情をさせられるのも勿論、カメラマンの腕。会場にはご本人がいらっしゃったが、何をお話して良い物か分からず会釈だけして出た。やっぱりポートレートって見ると緊張するし疲れる。
2011年4月27日 キヤノンギャラリーSにて