先週に続いてインド映画だが、こちらは上映時間が短く、出演者がいきなり大勢で踊り始めたりしない。以前観た「めぐり逢わせのお弁当」(2013)を思い出させる、情感ある作品だった。
田舎町に住む9歳の少年が、家族で出かけた映画に心奪われ、いつかは自分で映画を作ってみたいと思い始める。学校をサボって映画館に潜り込んでつまみ出されたり、母親の心づくしの弁当を映写技師に差し出す代わりに映写室に入れて貰って小窓から鑑賞したり。しまいには、各地に配給中のフィルムを駅の荷物室からくすね、友達と苦労して作った手作りの映写機で再生し、自分たちで音を奏で「再生」してしまう。英語が話せず、没落して駅でしがないチャイ売りをする父親は息子の映画好きを頑なに否定していたが、あまりに夢中な様子に遂に折れ、離れた町に住む知り合いの所で勉強するよう、息子を送り出す…物語はここまで。ラストシーンに世界の映画人の名前が次々と現れ、日本人では勅使河原宏、小津(安二郎)そして黒澤明の名があった。製作者によるオマージュだろう。
フィルムと映写機による昔ながらの上映は、デジタルシステムによる上映にリプレースされ、映写技師は職を失う。不要になった映写機と膨大なフィルムがどう処分されるかも時間を掛けて描かれ、哀惜と共に(リサイクルされることで)再生への希望も見える。何しろ主人公の男の子が芸達者。彫りが深い顔は妙に大人っぽく見える瞬間もあるほか、大人への反発や上手く行かなかったときの無念そうな表情、諦めの感情などが伝わってくるのに驚かされた。
本作で良く登場するのが鉄道、行った人なら分かる赤茶色の薄汚い客車。窓に鉄格子がつけられ、やたら車体幅が広い。主人公たちが住むチャララ(CHALALA)を調べてみたらインドの北部西側、グジャラート州の町で、列車は1日3往復6本だった。
先週の「RRR」とは対照的に非常に生活感の強い作品であり、その光景を見ているだけで刺激的だった。本作は一生を映画に捧げた人の「立志編」と言うわけで、その気になれば続編が作れそうだが、どうだろうか。蛇足になっちゃうかな。
2023年2月5日 川崎・チネチッタにて
田舎町に住む9歳の少年が、家族で出かけた映画に心奪われ、いつかは自分で映画を作ってみたいと思い始める。学校をサボって映画館に潜り込んでつまみ出されたり、母親の心づくしの弁当を映写技師に差し出す代わりに映写室に入れて貰って小窓から鑑賞したり。しまいには、各地に配給中のフィルムを駅の荷物室からくすね、友達と苦労して作った手作りの映写機で再生し、自分たちで音を奏で「再生」してしまう。英語が話せず、没落して駅でしがないチャイ売りをする父親は息子の映画好きを頑なに否定していたが、あまりに夢中な様子に遂に折れ、離れた町に住む知り合いの所で勉強するよう、息子を送り出す…物語はここまで。ラストシーンに世界の映画人の名前が次々と現れ、日本人では勅使河原宏、小津(安二郎)そして黒澤明の名があった。製作者によるオマージュだろう。
フィルムと映写機による昔ながらの上映は、デジタルシステムによる上映にリプレースされ、映写技師は職を失う。不要になった映写機と膨大なフィルムがどう処分されるかも時間を掛けて描かれ、哀惜と共に(リサイクルされることで)再生への希望も見える。何しろ主人公の男の子が芸達者。彫りが深い顔は妙に大人っぽく見える瞬間もあるほか、大人への反発や上手く行かなかったときの無念そうな表情、諦めの感情などが伝わってくるのに驚かされた。
本作で良く登場するのが鉄道、行った人なら分かる赤茶色の薄汚い客車。窓に鉄格子がつけられ、やたら車体幅が広い。主人公たちが住むチャララ(CHALALA)を調べてみたらインドの北部西側、グジャラート州の町で、列車は1日3往復6本だった。
先週の「RRR」とは対照的に非常に生活感の強い作品であり、その光景を見ているだけで刺激的だった。本作は一生を映画に捧げた人の「立志編」と言うわけで、その気になれば続編が作れそうだが、どうだろうか。蛇足になっちゃうかな。
2023年2月5日 川崎・チネチッタにて